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ダブり集

言霊男

作者: 神村 律子
掲載日:2009/07/12

 私はある理由から無口でおとなしい小学生だった。


 学校にいじめっ子がいた。


 理由はわからないが、そいつは私を執拗に苛めた。


 やり方は陰湿。かばんの中を水浸しにしたり、上履きに泥を入れたり。


 椅子が隠された事もあった。


 先生に言ったが、取り合ってくれない。


 私は耐えるしかなかった。


 

 

 でもそれにも限界が訪れた。


 私はそいつが通る道の途中で待ち伏せし、


「お前なんか交通事故に遭ってしまえ!」


とだけ叫ぶと逃げた。


 そいつはせせら笑っていた。




 翌日、そいつが交通事故で怪我をしたことを学校で知った。


 そいつの取り巻き達が一斉に私を見た。


 しかし何も言わない。


 もし私が「死ね!」と言えば、本当にそうなってしまうと思ったからだ。


 そいつらは急に私に媚びるようになった。


 私は全然嬉しくなかったが、苛められなくなったのでホッとしていた。


 

 

 翌日、私の噂がクラス中に広まっていた。


 皆の私を見る目が違う。


 誰かが喋ったのだ。


 私はいじめっ子連中を疑い、睨んだ。しかしそいつらは必死に否定した。


 俺達は喋っていないと。


 私はそいつらに私の正体をばらすメリットはないと思い、信じてあげた。




 その日の下校時、「真犯人」が現れた。


 同じクラスの無口の奴だった。今まで一度も話したことがない。


「お前、言霊使いだな?」


「ことだまつかい?」


 私は初めて聞く言葉に驚き、そいつを見た。そいつは私を見てニヤッとし、


「俺もそうなんだよ。言葉に念を込めて放つと、それが現実になる。お前も俺と同類、仲間だ」


「・・・」


 私はそいつを相手にするつもりがなかったので、無視して歩き始めた。


「おい、俺と組まないか? この力をうまく使えば、思い通りだぜ。欲しいものも、好きな女も全部自分のものだ」


「何言ってるの、わけわからないよ」


 私はそれでも無視して歩き続けた。


「待てよ! 俺を誰だと思ってるんだ。成りはガキだが、言霊使いの中では最上級の力を持っているんだぞ」


「関係ないよ」


「貴様!」


 そいつは激怒して私を追いかけて来た。そして、


「俺の奴隷になれ!」


と叫んだ。私は振り向かずに、


「全部お前に還る」


とだけ言った。


「え?」


 奴の放った言霊は奴に帰り、奴は私の奴隷になった。




 私はそれ以降その力を封印し、二度と使うまいと心に誓った。


 しかし、その誓いが揺らいでいる。


 今目の前にいる男のせいで。


「またお前か!? 何度同じミスを仕出かすんだよ! どうしてお前みたいな間抜けが、わが社に入社できたのか、不思議で仕方がないな!」


 私はこの怒鳴る事しかできない「クズ」をどう「処理」するか考えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公って男なんですか? 「私」って一人称だと、どうしても女の子を想像してしまいます。 ある程度の年齢がいけば男性でも「私」って使うmんでしょうが… とにかく面白いお話でした。 連載にも耐…
2010/12/21 23:25 退会済み
管理
[一言] どのような話が展開するのか、戦々恐々としながら、楽しんで読んでいます。 ラストの上司が、私の周りにいる人間とかぶって、力を使っちゃえと主人公に悪のささやきをしてしまいました。 いつもの読みや…
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