ほらキャン★
キャンプ地にまつわる話。
高校の課外授業(補習授業ともいう)で高原でキャンプをすることになった。
なんやかんやで参加したのは引率の先生2名を含んだ24人。
昼はオリエンテーリングで野山を駆け巡り、食事はバーベキューをして盛り上がるといったよくあるイベントだな。
夜は花火(手持ち)や星を眺めたりと参加者の交遊を深めた。
んでまあ翌日は登山の予定ってのもあって、それ以上のバカ騒ぎをすることもなく班分けされたテントにそれぞれが潜り込んで眠りについたんだ。
どのくらいたったかはよく覚えていない。
外の騒がしさで目が覚めたんだ。
眠りが浅かったんだろうね。
騒がしいといってもおれらがやるようなドンチャン騒ぎじゃなくて子供がはしゃいでいるようだった。
「ん~5人!」
「残念、4人よ」
「ここは6人ね!」
「正解。次は……」
どうやら何処かの家族連れの子供たちがテントの中に何人入っているか当てる遊びをしているようだ。
なんてくそ迷惑なことしてんだろ、親は注意しないのかなあ? なんて寝ぼけた頭で思っていたのさ。
そうこうしているとだんだんと声は自分のテントに近づいて来ているようだ。
だいぶハッキリとしてきた意識が子供たちの声に違和感を感じていた。
……なんというか、子供の特有の高い声ではしゃいでいるというのではなかった。
どちらかというと感情の籠ってない、抑揚のない棒読みだったんだ。
違和感が恐怖に変わったのは隣のテントに子供たちがついたときだった。
「きっと4人ね」
「ふふふ、5人よ。はずれね」
子供たちの応答が早すぎるのだ。
季節は夏も終わろうとする秋口。
テントの入り口はきっちりと閉じているので、正解を確認するためには入り口を開けて覗かなければわからない。
なのに答えに対する返答に遅延がないのだ。
即答しているんだ!
いったいどうやって? なんで!? と訳のわからない恐怖が押し寄せているとき気づいてしまった。
……次は自分のテントの番だって。
隣のテントからザクッザクッと足音が近づいてくる。
息を殺して沸き上がってくる恐怖に耐えていると、とうとうテントの入り口前で足音が止まった。
しっかりと閉じられた入り口からもう目が離せなくなっていた。
「ここは何人かしら?」
「ん~とねえ。こんどこそ4人よ!」
そう答えた瞬間、閉じられたテントの入り口の布に少女の顔が「にゅぅ」っと入ってきた。
「正解、4人だったわ。ひとり起きてて目が合っちゃった」
「へ~」
そういうと少女は「にゅるり」とテントの布から顔を抜いていった。
俺はもう怖くて怖くてガクガクと震えながら、それから寝直すなんてこともできなく朝日が昇るまで起きていたんだ。
ってのがまあ俺の体験談ですね。
「へえ。○○高原だろ?」
え、先輩知っているんですか?
「ああ、俺も同じように遭遇してなあ。高校じゃなくて大学んときだが」
マヂっすか!?
「まあお前とほぼ同じ流れなんだが、最後がちょいと違うな……」
最後どうしたんすか、先輩。もしかして捕まえたとかですか?
「いやいや、俺もおっかなくてガクブルしてたよ。あ、これ内緒な」
じゃあなにが違うんですか? 教えて下さいよ。
「壁抜けした子がな、『ここは5人ね、ふたり起きてて目が合ったわ』ってさ。そう言ったんだよ」
え? 人数が違うだけで同じじゃないですか先輩。
「うん、そうなんだ。ただなぁ……」
ただ?
「その時、俺たちのテントには4人しか居なかったんだよ」
へ?
「あとひとり……。あのときテントの中に何が居たんだろうなあ……」
なお一番怖いのはどちらの話も『参加者が全員男』という点である。
先輩のオチを壁抜けした少女を怖がらずに口説き落として「それが彼女とのなれそめさっ☆」にしたらダメだよね……。