97話 緑色と青色〜ハンターグリーンとコバルトブルー〜
ハンタはコバルトの胸に顔を埋めてシャツを掴んだままじーっとしていた。そして小刻みに手が震えているのがコバルトには伝わってきた。
「ハ、ハンタ、あの」
「ねえ、好き?ピュアはコバルトにとって一番大事な子?」
ハンタが消え入るような弱々しい声で再びコバルトに問いかける。コバルトはその問いかけに何も答えることができずに戸惑っていた。
「いや、あの好きとかって、そういうのは」
「じゃあさ、あたしのこと、好き?」
ハンタはコバルトの胸のシャツをギュッと強く握りながらそう問いただした。それは何かにすがりつくような、そんなかんじだった。
「き、嫌いじゃないよ?」
「あたしは好き!コバルトがこの世界で一番好き!大好き!」
今までとは打って変わってすごい大きな声でハンタはそう言った。そして埋めていた顔を上げ、コバルトを見つめた。その両眼には涙が滲んでいた。
「ハ、ハンタ・・・!」
「コバルト、あたしね、最初あなたに負けた時、あなたに対する憧れしかなかった。けど今は違う!あなたはあたしを命懸けで助けてくれた。今のあたしがあるのはあなたのおかげ。だから最後まであたしのこと守って!あたしを誰よりも一番大事にして!あたし、あなたとずっと一緒にいたい!あなたのためなら何でもする!あなたがこの世界で一番大好き!」
ハンタは涙を流しながらコバルトに告白をする。コバルトはハンタのその様子にたじろいでしまい、どう返していいかわからなかった。
「コバルト!あたしのこと、助けてくれたでしょ?なら最後まで責任を持ってあたしを守ってよ!これから先も他の誰よりも、あたしを一番大事に守って!あたしの、あたしをコバルトの一番大事な人にして!」
ハンタは再びコバルトの胸に顔を埋めてシャツをギューっと掴みそう言った。コバルトは手を上げ、ハンタの肩に手を当てようと思ったが、瞬時にピュアのことが頭に浮かんできてそれ以上手をあげることが出来ず、両手をだらんと落としてしまった。
(コバルト、お願い。あたしのこと、受け入れて。ピュアは、ピュアにはこんなことできないでしょう?)
ハンタは心の中でも必死にコバルトに訴えかけた。どうか自分を見てほしい。自分を想って欲しい他の誰よりも、そして自分だけの特別な人になってほしい、お願い!と。
「ハンタ、ごめん、俺、こっちの世界に来てから、ううん、前の世界でもそうだったかもしれないけど、誰かを好きになるってよくわからないんだ。ピュアもハンタも嫌いじゃないよ?俺にとって大切な存在だ。けど、どっちか好きとか、そういう答えはだせなんだ。だから、ごめん」
コバルトはハンタの肩にそっと手を当てて、胸に蹲っているハンタの顔を離すと目を見ながら優しく優しくそう言った。誰かに告白されるのなんか初めてでどうしたらいいかわからなかったのだ。
そうするとハンタは涙を拭いてにっこりと笑うと、コバルトの目をじーっと見つめた後にこう言った。
「わかった。言えてよかった。あのね、もし彼女欲しくなったらいつでも言ってね。あたしいつまでもコバルトのこと待ってるから。コバルトが辛かったり悲しくなったらあたしがいつでもそばにいるからね。あ、あとひとつだけお願い聞いてもらっていい?」
「ん?何?」
「あたし、ファーストキスはコバルトがいい。んーん、コバルトじゃないとやだ。コバルトはピュアともうキスした?」
「そ、そんな、したわけないだろ!キ、キスなんて!」
「ふーん、そっか」
そういうとハンタはコバルトの唇にそっとキスをした。コバルトは突然の事に全く反応ができず、ハンタの唇を受け入れてしまった。
「へっへー、コバルトのファーストキスいただき!今回はバードキスだったけど次回はディープキスでもいいよ!」
ハンタはコバルトから少し離れ、両手を後ろで組み、顔を赤らめ、舌を出しながらそう言った。ああ、ハンタは可愛い、コバルトは急にキスされたことよりも純粋な彼女に見惚れていた。
「ピュアには内緒・・・」
ハンタは上目遣いで、自分の唇に人差し指を当てながら恥ずかしそうにそう言った。コバルトはその様子にどう反応していいかわからず、ぼーっとハンタを見ていた。
「さ、もうそろそろ夕方だね。ヴィフレアの街に帰ろっか。きっとみんな待ってるだろうし」
「え?ハンタ?あの、行事は?」
「んー、もう終わったよ。この教会で頭首二人で神様の絵を拝むこと。それがシキタリでねー」
ハンタはそう言ってコバルトの腕を掴んで街へ戻り、二人とも元の服に着替えると、そのまま転送魔法でヴィフレアの街に戻った。デート用に着替えた服だと遊びに行っただけなことが勘付かれてしまうからだった。ハンタは最初の時と全く変わらない元気いっぱいな様子で戻ったが、内心はものすごく不安でいっぱいだった。




