94話 緑の中央都市
次の日
朝、目を覚ますとコバルトはエバーの家に行く。そこには来た時と同じようにミントが朝食を作っていて、ハンタとライトとピュアとエバーとみな揃っていた。
「あ、コバルト、おはよう。今朝ご飯作ってるからちょっと待っててね」
コバルトはミントに言われて席につく。ああ、この国に来た時とおなじ。いつも通り変わらない日常の朝だ。よかった、なんだかホッとする。
ミントが朝食を用意してそれをみんなで食べる。
最初この家にきた時と同じような朝食だ。ウッドプレートの上にサラダとスクランブルエッグにウインナーとパンの上にジャガイモが乗っていて他にもクロワッサンとかベーカリーもあり、コーヒーとグリーンティー、木苺のジュースもあった。
そして窓からは爽やかな森林の朝の風が家に吹き込んでくる。この国特有の緑の空気だ。昨日まであんな死闘を繰り広げたのがまるで嘘だったかのような幸せな雰囲気だった。
「あ、そうだコバルト、そういえばさ、まだ行ってない街があったんだけど、今日そこに行かなくちゃいけないから一緒に来てよ」
ハンタが突然コバルトに問いかける。コバルトは今更?という思いがありながら聞き返す。
「ん?まだ行ってない街?ヴィフレアの街とキュルマの街の他にもあるのか?そこにいって何かあるのか?」
「ああうん、あの、緑の国の一番大きな街で商業都市なんだ。それで二つの街と違って国境付近にじゃなくて中心部にある街でさ、そこは戦士が少なくてほぼ民間人だけの都市なんだけど、その、コバルトをそこの街へ案内しようと思って」
「案内?ああ、そうだな。せっかく緑の国に来たんだしみんなで見て回ろうか。ライトもピュアもせっかく来たんだし、今日一日は羽を伸ばそう」
「あ、あのね、コバルト、今日の用件はかなり重要なことで、頭首二人でしかまわっちゃダメな用件なんだ。その、これさ、50年前もロイヤル陛下がこの緑の国に来たときに、行った用件なんだよね。だから頭首二人だけで行くことが義務付けられているからあたしたち部外者は参加できなんだよね」
ミントがどことなくぎこちなさそうにそういう。ライトもその話を聞いながらどこか暗そうというより後ろめたそうな表情だ。ん?何か隠している様子だがなんだろう?
「あー、あれでしょう?国のトップ同士が国民に挨拶して回るって奴でしょ?そういうのどこの国もあるもんね。やっぱり二人とも王様なんだし大変だよね。けどそれはやっぱり義務なんだから二人で行ってこなくちゃダメだよね。コバルト、ハンタ、あんな戦いが終わった後で大変だけど頑張って挨拶してきてね」
ピュアがにっこりと笑いながら二人にそう言った。コバルトはやれやれ、何やらまためんどくさそうな行事だなと思ったが、ハンタはどこか後ろめたそうだ。そして珍しくミントも暗い表情をしていてライトもどことなく浮かなそうだ。
「ああ、うん、ピュア、なんかごめんね」
「ん?ハンタ、なんで謝るのさ?」
「いやあのその、本当はピュアとかライトも連れてみんなで行きたかったんだけどシキタリでさ、連れて行けなくてごめんねって」
「ああーいいのいいの、私はそういうの苦手だし、ただ遊びにくだけなら一緒に行きたかったけど、恒例行事じゃしょうがないよね。今日はここの街で1日ゆっくり休むよ」
(ズキッ)
ピュアの返事にハンタの表情が少し強張った。さっきよりさらに後ろめたそうだ。何かあったのだろうか?コバルトは少し心配になった。
「じゃ、じゃあさ、朝ごはんも食べたし、あたし達、行かなくちゃいけないからこれで。あの、夕方くらいには戻ってくると思うからまたみんなで夕飯は一緒に食べよう。ミント、後のことよろしくね」
「ああうん、ハンタ、コバルト、いってらっしゃい。気をつけてね」
ミントはそういうと二人を王宮まで送って行き転送魔法を使って見送った。そして二人を送り届けると、ライトの部屋に向かった。
「ライト、ごめんね。あのハンタのわがままに口裏あわせてもらって」
「ああ、仕方ないな。ここは緑の国だしハンタは頭首だし、それにミントはハンタの部下だしな。お願いくらい聞いてあげるのは当然だよ」
「うん、いつもだったらこんなわがまま許さないんだけど、今回はちょっとね。どうしてもハンタがかわいそうで。あの、ピュアにも悪かったなってちょっと思うけど」
「ミント、大丈夫だ。これは俺たちが口出すことじゃなくてあの二人の問題だし、それに最後に決めるのはきっとコバルトだから。コバルトにとってもきっと重要なことなんだと思う。だから俺は受け入れた。あとはどうなるか様子を見るだけだな」
ライトはそう言ってミントに肩を叩き慰めた。何やら二人でハンタのわがままに口裏を合わせてピュアには内緒で行った事のようだ。そしてコバルトはハンタ連れられ、緑の国の最大の都市、ケークスの街に到着したのだった。




