88話 青い鳥vs赤い蛇〜コバルト・ブルー・ピジョンvsシグナル・レッド・バジリスク〜
「フレイムバーン!」
シグナルの首から強力な火炎が放たれる。コバルトは剣を振りかざし、真っ二つに切り裂き回避する。しかし止むことのないシグナルの攻撃に劣勢に追い込まれていくのだった。
(クソ、だめだ!かわす事ができない!避ければハンタを狙ってくるだろう!とてもこいつ相手では守り抜きながら戦うのは厳しい!)
「バブルストーム!」
コバルトの剣から巨大なシャボン玉のような一つの泡がシグナルに向かって飛ぶ。レモンの時は大量の数だったが今回は一つだ。
コバルトが放った巨大な泡はシグナルをその中に閉じ込められた。コバルトはどうにかシグナルを無力化することに成功した。
(こいつはレモンより強い上級魔族だ。こんな技で封じ込めるほど甘くない!さらに追い討ちをかける!)
「絶対零度!」
コバルトが叫ぶとシグナルを閉じ込めていた泡が凍りついた。水属性と氷属性の技の併用。バブルストームで泡に閉じ込めその泡を凍らせるという二重攻撃だ。
「よし!これならそう簡単にでれはしないだろう!今のうちにハンタを抱えて逃げなくては!」
コバルトは咄嗟に後ろに倒れているハンタのもとに向かい、抱えようとした。しかし次の瞬間、後ろからバリーンと大きな音が聞こえ、慌てて振り替えるとなんとそこには一瞬にして氷の泡を打ち破ったシグナルの姿があった。
「フフフ、こんな子供騙しが私に通用するとでも?甘い、甘いですねえ青魔族頭首!くらいなさいフレイムバーン!」
再びシグナルの火炎がコバルトに襲いかかる。コバルトは慌てて剣を振りかざし火炎を切り裂き、どうにか難を逃れた。
(な、馬鹿な!?二つの技を併用したとしてもあんな一瞬で打ち破るとは!な、なんて奴だ!)
コバルトはここで悟った。ダメだ。小細工は通用しないしちょっとやそっとで倒せる相手ではない。だがここで無理に戦えばハンタに攻撃が及ぶ危険性もある。いったいどうすれば。
しかしこの時コバルトはここはやはり戦うことよりも逃げることを最優先にしなくてはならないという考えを変える気はなかった。自分は負傷してもどうにかなるかもしれないがハンタは危険な状態だ。ハンタを一刻も早く連れて帰るには戦っている場合ではない。だが逃げるにもシグナルが相手では逃げられなかった。
(いや、まて、大丈夫だ。相手はバジリスク。竜族だが飛行能力はない。ハンタを背負って高くまで飛んでしまえば追い付いてはこれないだろう。どうにかして一瞬でもいいから隙を作れば空に逃げられる!)
コバルトは深く深呼吸をすると再び剣を構えた。シグナルはコバルトの呼吸が荒くなっているのに気づき、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「フフフ。どうやら観念したようですね。だがご安心ください。あなたは私より実力は確実に上です。なんせあのメイズを倒した猛者ですからね。もしこれが一対一の真剣勝負なら私に勝ち目はなかったでしょう」
勝ち誇ったように告げるシグナルにコバルトは歯を食いしばりながら聞いた。クソ!誰かハンタを守るものがいればこんな奴には負けないのに!と。
しかしコバルトはここで相手のペースに乗ってはダメだ。冷静になって考えろと自分を諭した。今は逃げること、ハンタを早く連れて帰ることを最優先にしなくては。大丈夫!きっとうまくいくからと。
「シルキーミスト!」
コバルトが剣を高らかに掲げると突然あたり一面にものすごい量の霧が発生した。そしてコバルトとシグナルはその霧に包み込まれ、全く場所が把握できなかった。
「な、なんですか?この霧は!目眩しのつもりですか!」
シグナルが困惑しているとコバルトは後ろに倒れているハンタと咄嗟に抱え、空を飛んだ。
(うまくいった!霧でまだ視界は見えないだろう!空には霧はないが、高くまで逃げれば追いついてこれない!これで逃げられる!)
コバルトが霧の晴れた宙と飛んでいく様子を地面からシグナルが発見した。ああ、どうやらこのまま敵前逃亡に成功したと思っているようだ。
「甘い、甘いですねぇ。青魔族頭首!この私からこんなことで逃れらるとでも?」
シグナルはそういうと首を下ろしグッと力を込めるとまるでバネのように空に向かって勢い良く伸び、コバルトを目掛けて飛びついた。そして宙にいるとコバルトの左の羽に巨大な口でかじりつき、そのまま羽を食いちぎった。
「うわああああぁぁぁ!」
後ろを向いていたコバルトはシグナルに気づかず片方の羽を食いちぎられそのまま落下した。ま、まずいこのままでは自分は良くてもハンタが地面に激突してしまう!
「バブルストーム!」
コバルトは咄嗟に剣を振るいバブルストームを出す。泡がクッションになりどうにか二人は地面に激突せずにすんだ。コバルトは再びどうにか跳ぼうとしたが片方の羽を食いちぎられもう羽は使い物にならなかった。
(クソ!羽はもう使えない!こ、このままでは逃げられない!)
目眩しの隙に空に逃げるという最後の手段を失ったコバルト。ハンタは相変わらず気を失っていて危険な状態だった。このままではハンタどころか自分の身も危ない。初めて出会う赤魔族の幹部である上級魔族にコバルトは追い詰められていくのだった。




