79話 緑の国の礼拝堂
4人は再び転送魔法でキュルマの街へと戻る。ライトはヴィフレアの街に残り、エバーのいるログハウスでミントの面倒を見ていた。もはや黄魔族は撤退したので王宮に避難する必要もなかった。
「ハンタ、大丈夫かな?あたし、すごく心配」
「ミント、気持ちは分かる。けどお前は自分の国の頭首が信じられないのか?それにいずれ頭首同士で戦わなくてはならない日はくるのだ。黄魔族の頭首がどれ程の実力かは知らないが今のハンタなら大丈夫だ。きっと負けはしない」
「うん、ライト、ありがとう。そうだよね。コバルトもいるし、きっと大丈夫だよね」
ミントはハンタのことが気がかりでならなかったが今はそれよりも早く体を休めることが先決だと思った。スプルースは動けないことはなかったので王宮で再び結界を張っていた。
4人はキュルマの街へと着くと、ハンタが礼拝堂の位置をピュアとコバルトに伝えた。先ほどレモン達と戦った草原とは違い、街から離れていて、北西の森を抜けた先の国境付近にあると。
「とりあえずさ、礼拝堂の位置をコバルトに伝えるからあたしをおぶって飛んでもらえる?空からなら大体の位置は把握できるからさ」
「ああ、ハンタ。わかった」
コバルトはそう言われるとハンタを背負って空を飛んだ。ハンタは嬉しそうにコバルトの肩に手を回すと後ろからギューっと強く抱きついて肩に顔を埋めた。
「えへへ。コバルトの背中あったかいしおっきいねー」
「お、おい、ハンタ!お前何のために俺をおぶわせて空に飛ばせたんだよ?礼拝堂の場所を教えるためだろ?そ、それにあんまりむ、胸押し付けるな!」
コバルトが照れながらハンタにそういう。ハンタは嬉しそうにコバルトの首元に顔をすりすりしながらこう言った。
「なによー、コバルト照れちゃって!いいじゃん、これくらい恥ずかしくないでしょ?あんたもうあたしのおっぱい触ったことあるんだし」
ハンタがそういうとコバルトは一緒に寝た時の記憶が脳内で再生され、顔が真っ赤になった。ああ、もうこいつまたあの時のこと思い出させやがって、あれは不可抗力だっつーの!
その様子を地上でピュアとエメラルドが見ていて二人ともものすごい激怒していた。なんだなんだ、空で二人でいるのをいいことにいちゃつきやがって。まあハンタの一方的なスキンシップだったが。
「ほら、コバルト、あそこが礼拝堂だよ!」
ハンタが指を指した方に森の中にすっぽりと木が生えていなような場所があった。街からかなり離れた場所だったが大体の目ぼしい位置の確認はとれた。ああ。あそこが礼拝堂か。
「わかった。あそこだな。森の中で迷ったら、空を飛んで場所を確認する。まあ魔力感知のスキルがあるからどこだかは大体わかるがな」
コバルトはそういうとハンタを地上に下ろしてピュアとエメラルドの方に向かったが、あれ?どうした?なぜかピュアは腕を組んで目線を逸らして膨れっ面をしていてエメラルドはものすごい殺意を向けてくる。
「ああ、あの、場所の特定はできたんだけど、どうした?なんかあったか二人とも」
「なんでもないわよー」
ピュアが機嫌悪そうにそう言った。流石にコバルトに八つ当たりするわけにもいかないし、ハンタはこれから出向くというのに文句を言うわけにもいかない。
「それじゃあさ、そろそろ約束の時間だからあたし行ってくるね。アイビーは必ず救出してきます。コバルト、ピュア、エメラルドあとのことは頼むね」
「ああ、ハンタ、気をつけて。大丈夫、何かあったら俺がすぐ駆けつけるから」
「ハンタ様、どうかご無事で。アイビーをよろしくお願いします」
三人に見送られ、ハンタは颯爽と森の中を走っていった。緑の国の住人ということもあり、遺跡や街などの場所はほとんど把握していた。どうやら迷うことはなさそうだ。
ハンタが走り去る様子を見てエメラルドは胸が痛んだ。ああ、ハンタ様、もし代われるものなら代わって差し上げたい。心配で心配で仕方ない。と思っていた。そしてハンタが見えなくなると、エメラルドはまた胸に新たな感情が湧いてきた。そしてその感情はコバルトに強く矛先を向けることになるのであった。




