66話 緑のアニマル剣士の決意
ジョンブリアンがやられるとスプルースのトレント達にやられていた兵は散り散りに逃げ出した。どうやらただジョンブリアンが怖かっただけのようで本当は戦いたくなかったようだ。逃げ出せば真っ二つにされた獣族のように殺されてしまうので逃亡できなかったのだ。
「ミント!助かった!ありがとう!」
スプルースがミントにお礼をいうと、ミントはどうも腑に落ちないような表情を浮かべていた。何かがあると。
「スプルース、一人でここをよく守ってくれた。けどあなたがいるって知っていてここにあんな雑魚だけで攻め込んでくるのもおかしい。結界をすり抜けて遠征にくるとしても、このやり方はどうも不自然だ」
「いや、おそらく人海戦術でこちらを落とそうとしたのだろう。いくら雑魚とはいえ数にものを言わせれば落とせると思ったのではないか?」
「けど、それにしてもとてもこの数を取り仕切ってたのがあのリザードマンだとは思わない。キュルマの街で幹部レベルの魔族がいたけど、あいつらであっちを引き付けている間に落とすとしても、これじゃあお粗末すぎる」
ミントが不思議がっていると、突然寒気のするような強大な魔力を森から感じ取った。ミントの不安は的中した。やはり誰か他にここを落とそうとしている猛者がいるのだ。
「スプルース!やっぱり誰か来ている!あたし、行ってくる!」
「ま、待てミント!一人で行くつもりか?わ、私も一緒に行くぞ!」
「いや、スプルースはここで待機して!他に黄魔族の残党が攻めてきたらあなたがいないと守りきれない。だからどうか今は少しでも体力を温存しておいて!」
ミントがそういうと一目散に森の中へかけて行った。そして不安と恐怖にまみれる中、森を探索した。
(やはり、黄魔族の兵士達はみんな退散したようだ。魔力を感じない。けど、けど、あの一瞬感じた強大な魔力は何?)
ミントは不安と恐怖に駆られながらもどうにか突き止めなくてはと森を探索した。そして次の瞬間、木の上から先ほど感じた強大な魔力が放たれているのを感知し、その主を発見した。
「久しぶりだな、ミント。50年ぶりか。こうして二人で会って話すのは初めてだな」
「ア、アプリコット・・・!!」
ミントの全身を恐怖が貫いた。体がガタガタと震え表情が強張った。ま、まさか先程から感じていた強大な魔力の正体は、このアプリコットだったとは!
全長50センチくらいあるであろうか?黒装束を着ていて、腰には二刀の小太刀を構えている杏色のリスが木の上からミントを見下ろした。杏色からとって名はアプリコットというようだ。
ミントはアプリコットを見るなり苦渋の決断を強いられた。ダメだ、魔力感知でわかる。アプリコットはメイズに次ぐ実力の持ち主だ。メイズがいない今、事実上黄魔族最強である、そして王の側近の剣士。いくらミントが強いと言ってもこのアプリコットとやりあって勝てる確率はものすごく低かった。
「ミント、俺はお前とは戦う気はない。俺は昔からお前やライトの事を知っている。ここは見逃してやるから手を引け。そして緑の国が陥落してもお前だけは俺が守ってやろう」
「けど、ここであたしが手を引いたとしても、ヴィフレアの街を落とすんでしょう?」
「当然だ。俺はそのためにここに来ているのだからな」
「な、ならあたしも引くわけにはいかないね!」
ミントはここで必死に考えていた。今ここで王宮に戻って転送魔法でキュルマの街に逃げるか。そしてライト達を呼んできてどうにか応戦するか、いや、そんな事をしているうちにきっと王宮は落とされてしまう。それに魔法陣で転送するのは1日に何度も使うことが出来ないからきっと王宮に避難している国民はあっという間にこのアプリコットにやられてしまうだろう。
(ハンタ、ごめん、メイズの時みたいに逃げ出すことは今回はできない。あたし、もしかしたら死ぬかもしれない)
ミントは意思を固めると、木の上にいるアプリコットをギロリと睨んだ。そして刀を抜き、構えると、こう叫んだ。
「あたしはミント・グリーン・ヘッジホッグ!この緑の国の王の側近であり、緑魔族最強の戦士よ!そして剣士たるもの、同じ剣士であるあなたを前にここで引くわけにはいかない!アプリコット!あなたに正々堂々戦いを挑みます!」
「わかった。不本意ではあるがそれほどまで決意が固まっているのなら受けてたとう。俺はアプリコット・イエロー・スクワール。ミント、いざ尋常に勝負!」
アプリコットが木の上で二刀の小太刀を抜くとそれを構えた。
「『名刀風林火山』二刀流、それが俺の剣の名前だ。ミント、お前の刀は『名刀木枯し』か。その刀を持つ相手にとって不足なし!行くぞ!」
こうして黄魔族と緑魔族の王の側近の獣族の剣士二匹による、国と国の命運をかけた戦いの幕は切って落とされた。自分より格上の剣士を相手に、ミントは一体どう戦っていくのだろうか?




