64話 緑の精霊使い
ミントがライト達から離脱し、ヴィフレアに向かうことになった少し前。
街には結界をすり抜けて徒歩で侵入してきた黄魔族の大軍が押し寄せていた。そしてコバルト達のいるキュルマの街に緑魔族の戦士は集結していたのでこちらは戦士がおらず街にいる魔族は王宮の中に篭り、外ではスプルース一匹で応戦していた。
「スプルースサイクロン!」
緑色のミミズクの姿をしたスプルースが両翼を広げ羽ばたかせると強烈な竜巻が巻き起こる。黄魔族の兵士達はその竜巻に巻き込まれまぜっ返しを食らった。
「うわわわわ!な、なんだこれは!」
緑魔族の王宮に次々と侵入してくる黄魔族相手にたった一匹で防戦をしている。スプルースは緑魔族でミントに次ぐナンバー2の実力者だった。
「クソ!次から次へと蛆虫のように湧いてきやがって!雑魚どもが!」
正面から右から左から、木々の中から黄魔族の兵が雪崩のように侵入してくる。幸いなことに幹部クラスはいなかったのでスプルース一人で足止めできていたが、この数をたった一匹で防戦するのは流石に骨が折れた。
(クソ!せめて、せめてエメラルドがいれば!しかし今はそんなことを言ってる場合ではない!私一人でどうにかここを守らねば)
そして次から次へと侵入してくる黄魔族にスプルースももはや限界が近づいていた。このままでは王宮は陥落してしまう。
(クソ!やむを得まい!この術だけは使いたくはなかったが、精霊よ!どうか力を貸してくれ!)
スプルースは王宮の屋根の上に立つと羽の中にある魔力ポケットからゴソゴソと何やら取り出した。オカリナだ。
「暴れろトレント!どうかここを死守せよ!」
スプルースが屋根の頂上でオカリナを吹くと王宮の周りにあった木々が突然動き出し、根を地中から引き上げまるで生き物のように動き出した。そしてそのまま黄魔族の大群の中に入り大暴れをしだした。
「ひ、ひぃぃぃ!な、なんだこれは!?樹人族か!?トレントを召喚したのか?」
「召喚獣ではない!これは傀儡だ!精霊の力を借りて樹木を操っているのだ!さあ緑の国のトレント達よ!どうかこの国を守ってくれ!」
スプルースが激しくオカリナを吹くとそれに操られるかのように樹木達は暴れ出した。そしてそのあまりの凄まじさに黄魔族達はどんどん撤退していった。
「ひいぃぃ!あんな恐ろしい魔術を使う魔族に我々が敵うはずがない!こ、ここは逃げるぞー!」
一人の犬のような見た目をした獣族がそこから撤退をしようとした途端、その後ろに3メートルはあるであろうか?シアンより一回り大きく、邪悪な顔をした斧を持った大柄のリザードマンが立っていた。
「どこへ行く?」
「こ、これはジョンブリアン様!よくぞおいでくださいました!あのフクロウによる強力なトレントの大軍が襲ってきたのです!どうか応戦お願いします!」
「ハハハ、あのトレントの群れに貴様らても足も出ないか、貧弱どもが!そして貴様、今逃げようとしたな?」
「め、滅相もございません!わ、私は今」
その獣族が何かを言おうとしたとき、ジョンブリアンは手に持っている斧を振り下ろし、その獣族を真っ二つに斬り裂いた。
ギャー!!という悲鳴と共に血がドバッと吹き出しその場に倒れた。頭から斧で斬り下され真っ二つになった。即死だった。
「他に?逃げたい奴はいるか?」
ジョンブリアンが悪魔のような薄笑いを浮かべそういうとそこにいた黄魔族達は大いに怯え、死に物狂いでトレントに向かって行った。そしてあっという間にトレント達に倒されてしまった。
その様子を見ていたスプルースはオカリナを吹くのをやめ、下に降りてキッとジョンブリアンを睨んだ。そして斬られて血を流している獣族を見てこう言った。
「貴様・・・!自分の部下を・・」
「フン、部下は部下でもこんな軟弱な部下は俺にはいらん。ましてやこんなでくの坊どもに歯も立たないような役立たずはな!」
ジョンブリアンがそう叫んで斧を振り回すとそこにいたトレント達ははあっという間に真っ二つにされ、バタバタと倒れた。スプルースはその様子を見て激しいショックを受けた。
「ト、トレント達!す、すまない!可哀想なことをした!私が力を借りたばかりに!貴様!」
「ハハハ、貴様こんなたかだか植物にも同情するのか、心優しい奴だな。まあそんな心構えではこの戦いは勝ちぬけまい!そら!」
再びジョンブリアンが斧を振り回すと何体もいたトレント達は真っ二つにされ、一蹴されてしまった。
スプルースは今まで傀儡の力で動かしてきたトレントを再び増援しようかと思ったが、オカリナを魔力ポケットにしまった。これ以上、自分の国の樹木達を殺させるわけにはいかないと思ったからだ。そしてジョンブリアンの前に行き、こう言った。
「お初にお目にかかる。私はスプルース・グリーン・アウル。この緑魔族の守護をしている。以後、お見知り」
スプルースが名前を名乗ろうとするとジョンブリアンは突然スプルース目掛けて斧を振り下ろした。スプルースは間一髪でその斧をかわした。
「んー?なにか言ったか?ここは戦場だぞ?そして緑魔族は貴様一匹ではないか。代闘士をたてようとも無駄だぞ」
(な、なんてやつだ!)
スプルースはどうにかこのジョンブリアンと一対一で戦おうと提案を持ちかけたが、それを拒否されてしまった。そしてトレント達もやられ、体力も魔力も限界に近づいている今、どうにかしてこの場をしのごうか必死に考えるのだった。




