43話 緑の会
「ま、とりあえずお茶でも飲んでゆっくりしてよ。あ、あとお茶菓子もあるよ」
ハンタはそういうと6人分のティーカップを用意してお茶を注いだ。予想どおりお茶の色は黄緑色に近い緑色だった。
コバルトとピュアはそれを飲んでほっと一息。ハンタとミントとエバーもほっと一息。ライトはずっとふーふーしていた。
「ああ、やっぱり緑茶は落ち着くねえ。これが一番いいよ」
ハンタは目の前にある煎餅をバリバリ食べるとそう言った。なんだか年寄りくさい女の子だなとコバルトはすこしおかしくなった。
「とりあえず、お茶も飲んで落ち着いたし、ちゃんと自己紹介しなくっちゃね、はじめまして。あたしはハンター・グリーン・アルラウネ。この国の頭首で、こっちはミント。あたしの側近。それであっちにいるのがエバー」
「ああ、よろしく。俺はコバルト・ブルー・ピジョン。青魔族の頭首。それでこっちがライトでこっちがピュア。ライトのことは知ってるよね。ピュアはさっきも言ったけど白魔族でさ、青魔族の世界で守られていて一緒に戦ってくれる仲間なんだ」
「うん、知ってるよ。白魔族のこと。あ、あとピュア、さっきはごめんね。トラップ仕掛けちゃって。とりあえずだれかが侵入してきたことは魔力感知で把握してたからあたしがとっさに仕掛けたんだけど、まさか青魔族だったなんてね」
「ああ、いいのよハンタ。私もついうっかり」
ピュアは少し照れくさそうに話す。かわいい村をみて我を忘れたなんて言えなかった。
「ところであなたは人間のような見た目をしているけど、悪魔族なの?けど、アルラウネって」
「んーん、違うよ。ピュア、あなたは悪魔族でコバルトは鳥族でしょ?あたしは樹人族だよ」
樹人族?セレストと同じあの植物のような魔族のことか?人型もいるのか?初めてみたしピュアは本当に驚いた。
「樹人族なの?人型がいたんだ。けど、それにしてはほとんど人間と変わらない見た目をしているけど」
「そりゃそうだよ。ピュア」
ライトがそう言ってくちを挟む。そしてコバルトに何かを告げるとコバルトは携えている剣をテーブルの上に出した。
そしてそれに合わせてハンタも武器をテーブルに置いた。どうやら弓のようだ。弓を使う魔族なのか?そして二つの武器は共鳴していた。
「転生者はみな人型なのさ。国の頭首としてなぜかこの世界に招かれるんだけど、半分人間の血が入っているのか、魔族と人間のハーフみたいな感じなんだよ。鳥族でコバルトみたいな見た目をした魔族はいないだろう?ロイヤル前国王はたまたま悪魔族だったから気がつかなかっただろうけど」
転生者はみな人間の血が入っている!?なるほど、だからコバルトも背中から羽が生えているだけな感じだったのか。それには気づかなかった。
「ま、とりあえずここにわざわざ来てもらってありがとう。そろそろ青魔族がくると思ってここを拠点にしておいたんだけど、ちょうどよかった。早い話言いたいことは二つあって、とりあえずメイズを倒してくれてありがとう」
ハンタとミントとエバーが立ち上がってペコリとお辞儀をする。なにやら青魔族に恩があるようだ。
「ここまで来たってことは色々分かってるとおもうけどさ、もう戦いは始まってるんだよね。この緑の国は青い国と違って他の三カ国と陸続きだから、結界を張っても徒歩で侵入しされることもあってさ、今までは国境を越えれば魔力感知で敵の位置が把握できててその度に撃退できてたんだけど、メイズが侵入してきたときは本当に驚いてさ、これは戦っても勝ち目がないと思って拠点をいくつも変えて逃げ回ってたんだよ。」
ハンタが俯くように説明する。どうやら後ろめたさがあるようだ。
「この、ヴィフレアの街がさ、あたしがこの世界で呼ばれた街でさ、守ってきたんだけど、メイズが来たときはほんと生きた心地がしなくてさ、住んでいたみんなと一緒にこの街を捨てて転送魔法で違う街に逃げたんだよ。転送魔法に入れなかった魔族は何人かやられたものもいたよ。とにかくメイズから逃げ回って隠れながら下っ端を倒しつつ防戦一方でしかなかった。だからメイズがこの国からいなくなるまでメイズ以外の黄魔族を隠れる戦術で倒しながらじっと耐えたよ」
ハンタは俯きながらそう話す。その目には涙がじんわりと浮かんでいた。
「もう気にしないで!ハンタ!あれはあたしとエバーで考えたことなのよ?いまメイズと正面から戦っても勝てる可能性は低いから逃げましょうって。だからハンタに責任はないわ」
「けど、それで他の緑魔族を失ってしまったわ。あたしのせい」
「メイズと正面からやり合ってたら被害はもっと甚大だったのかもしれないのよ?青魔族の人が倒してくれたんだからそれでいいじゃない!ね!」
「うん、ミント、ありがとう」
ミントがハンタをなぐさめる。なるほど、そういう経緯があったのか。たしかにあのメイズがこの国に侵入してくれば打つ手はなく逃げ回るしかなかっただろう。それを無理に正面から戦わず逃げ回るのも立派な戦術だ。
「と、いうわけですじゃ。皆さま、本当にありがとうございました。そしてもう一つ、やはりこれは色彩戦争のシキタリなので仕方ないことです。おわかりですね、ライト」
「ああ」
エバーの問いかけにライトは真顔で返す。真剣な表情をしている。どうやらなにかあるようだ。
「メイズを倒してくれたのはコバルト、あなたね。それはわかる。けど申し訳ないんだけどさ、あたし、あなたと戦わなくちゃいけないのよ。それも模擬戦じゃなくて本気で」
ハンタがそういうとコバルトは驚いた。いきなりなにをいうのかと思えば戦う?え?味方同士でか?それに本気でって。
「戦うって?なんでそんなことを?味方じゃないのか?」
「うん、もちろん味方だよ。メイズのことも感謝してる。けど緑魔族は青魔族の保護国。つまりは部下なんだよね。自分より弱いものに従うことはできない。だから頭首同士で戦う必要があるんだよね。それにさ」
「それに?」
「あたし、自分より弱い人に従う気も協力する気もないし」
ハンタのその言い方にコバルトの表情の雲行きが怪しくなった。なんとなく扱いづらそうだなこの子は。力でねじ伏せないとダメなタイプかとおもった。
そしてネイビーの時と同じように、他の皆の監視の中、青い国と緑の国の頭首同士で一対一の戦いが行われることになったのであった。




