40話 青い鳥、どこかにいないかな?
朝、起きる。
ピュアは随分と早く目が覚めてしまったのでとりあえずゲストルームに行って台所にたった。ああ、朝食の準備をするのも早すぎるし、コバルトもライトもまだ寝ているし、何もやることがない。
「この家も、今日で最後か・・・」
ピュアは部屋を見回すと、しみじみとそう思った。そういえばこの家に来てからそんなに時間は経っていないが、どことなく寂しい気持ちになってしまっていた。まだ、やり残したことがあったのだ。
ライトは早起きだったが、まだ起きてくるのにも時間があった。ピュアは思い切ってコバルトの部屋の前に行き、ドアノブを握った。そして何度か躊躇ったが思い切ってドアを開け、そっと部屋に入った。
コバルトはとても穏やかな表情でまだ眠っていた。ピュアはその寝顔を眺めて初めて会ったときのことを思い出していた。
(コバルト、よく眠っているわ。初めて会ったときも深い眠りに落ちて、目覚めなかったよね。それにしても寝顔かわいい♡)
ピュアは部屋を見回すと、特に散らかった様子もなく、小綺麗に片付いている。ああ、ちゃんと整理整頓して使ってくれているのね。コバルト。
(あーあ、それにしても今日でこの家ともお別れか、この部屋でコバルトと一緒に寝るって夢、叶わなかったな。ライトがいなければ、ううん、ライトがいなくてもきっと私言い出せなかっただろうな、そんな勇気ないし)
ピュアはそう思っているとコバルトが寝返りをうってベッドから少しだけ手が見えた。そしてつい咄嗟にピュアはその手を握ってこう言った。
「コバルト・・・この世界でたった一人の・・・私の青い鳥」
ピュアが手を握っているとコバルトは再び寝返りをうって、寝言を言った。
「ううん、ピュア・・・」
その寝言にピュアは思わずドキッとしてしまった。え?コバルトが寝言で私のことを呟いている?うれしい!うれしい!
ピュアは思わずその場で手を握ったまま、コバルトのいるベッドの上に顔を埋めた。そしてなんだか急に眠気が襲ってきて、そのまま眠ってしまった。
その頃コバルトは夢を見ていた。ああ、またあの夢だ。こちらの世界に初めてきたときに見たあの夢。潮の香りがして、海に浮かんでいる。そしてまたあの白いウミネコが降りてきて、助けようとしてくれている。
「無理だよそれは。でもありがとう」
コバルトがそういうとその白い鳥はどこかへ飛んでいってしまった。まただ、また同じ夢を見た。
そしてコバルトが目を覚ますと、そこにはベッドで顔を埋めて手を握っているピュアの姿があった。ああ、ピュアおはよう。でもなんでここに?と聞こうとしたそのとき、ピュアがなにやら寝言を呟いた。
「うーん、むにゃむにゃ、コバルト・・・」
ピュアのその寝言を聞いて、コバルトは少し微笑ましい気持ちになった。ああ、ピュア、君はいつだって、どんなときも俺のそばにいてくれるんだな。俺も、きっと君を守ってみせる。いつだって一緒だと。
その後、ピュアが目覚めるとベッドにもたれかかったまま眠ってしまっていた。そこにコバルトの姿はなかった。ああ、いけないと起きようとすると、背中に布団がかぶせてあった。
(あれ?布団がかけてある。ああ、コバルト、あたしが眠っちゃってたのをみてかけてくれたんだ。ありがとう)
ピュアは最初にそう思ったが、瞬時に顔が赤くなった。あ、コバルトに勝手に部屋入って一緒に眠っちゃってたとこ、ばれたんだ。あーどうしよう、どんな顔して合わせればいいの?
ピュアが恥ずかしがりながらも慌ててゲストルームにいくと、席にライトがちょこんと座っていて、キッチンでコバルトが朝食を作っていた。
「おや、ピュア、おはようございます。本日は珍しくお寝坊さんですね。今、コバルトに朝食を作ってもらっているのです」
「ああ、ピュア、おはよう。今朝ごはん作ってるからちょっと待ってね」
「え?コバルト、そんなの悪いわ!私、作るから」
ピュアが慌ててキッチンまで行くとコバルトはピュアの顔を見つめてにっこりと笑った。
「いいっていいって。いつもピュアにやってもらってるんだからさ、今回くらいは俺が作るよ。今日はここにいられる最後の日だし、今日くらいは俺に作らせてよ。まあピュアほど上手にできないけどさ」
コバルトが優しくそういうと、ピュアは席に戻って、座ると、落ち着いた様子でこう返した。
「そっか、わかった、ありがとコバルト。じゃあ遠慮無く今日はコバルトにお願いするね」
(お前ら新婚かよ)
プッという笑いと共にライトの心の声が漏れそうになった。全く進展のない二人だなほんと。ま、それがいいのかもね。そういうところがこの二人らしいし、うまくやっていけるんだろうなと。
その後、朝食を食べ終え、部屋の片付けや、物の整理など全て終えると、二人と一匹は王宮へ出向いた。そして王宮には全ての兵士がが敬礼をし、二人と一匹にひざまづいた。
そしてラピスラズリが出てきて二人と一匹に深くお辞儀をするとこう言った。
「コバルト様、ピュア、ライト、わざわざお越しいただきましてすみません。これであなた方がこの国におられるのは最後となりましたね」
「ああ、ラピスラズリ、ありがとう」
「ではこれより、あなた方を緑の国にお送りさせていただきます。送り方は転送魔法を使います。これは我が国と緑の国との契約で成り立っている特別な魔法です。最初の転送ポイントは海岸沿いの村になっております。そこに緑魔族の頭首がいるかはわかりませんが、どうぞお気をつけていってらっしゃいませ。ピュア、あなたは転送魔法はお使いになられますね?」
「あ、はい、ラピス。私、転送魔法は使えます」
「かしこまりました。ではもうこの国に戻ってくることはないでしょうが、もし何かあればピュアの転送魔法を使い、こちらまで戻ってくることは可能です。ピュアは前国王ロイヤルの下にこの国にある魔法陣との契約がお済みです。ではコバルト様、ピュア、ライト、こちらへどうぞ」
そういうとラピスラズリは初めてコバルトがロイヤルと出会った王座の裏にある部屋まで二人と一匹を招いた。そしてその部屋に入ると、床には青く光る線で大きな魔法陣が描かれていた。コバルトはなにかその部屋がとても懐かしい感じがした。
「この部屋、俺、覚えてる、なんだろう?なんか懐かしい感じ」
「それはね、コバルト、ここがあなたが最初にこの世界に来た場所だからよ」
ピュアがそういうとコバルトは部屋を見回した。ああ、そういえば俺、ここからこの世界に来たのか?なんかそんな感じ。
「うん、少しだけ覚えてる。ほんの少しだけ」
コバルトがそういって部屋を見回すとピュアはにっこり笑いコバルトの手を握った。そしてライトもそばに寄ってきた。
「なにも心配しなくていいのよ、私とライトがあなたを守るから。ねっ?コバルト」
「コバルト、これからもよろしくな」
そう言われるとコバルトは目をピュアとライトと目を合わせると得意げな顔をしてこう言った。
「ああ、そうだな。ピュア、ライト、頼りにしてるぜ。これからもよろしくな」
「では、これより転送魔法をかけ、緑の国へお送りします。三人とも、御武運をお祈りしています。ライト、あとは頼んだぞ」
ラピスラズリがそう言って、二人と一匹を魔法陣の上に引き寄せ、詠唱を唱えると、二人と一匹の体はそこからワープして消えてしまった。転送魔法の成功だ。
「無事、緑の国の頭首に会えるといいのだが・・・」
ラピスラズリはそう言って転送した三人の安否を気遣った。こうして、コバルトの「青い国」の物語はこれにて終焉した。さてさて、次にコバルト達が向かうのは青魔族の同盟国であり、保護国である緑魔族のいる「緑の国」だ。行き先に待つものは幸か不幸か。それは誰も知らない。
青い国の章 完




