39話 青から緑へ
次の日
二人と一匹はラピスラズリが重要な話があるというので朝から王宮へ向かった。メイズを倒し、コバルトの王としての就任式が終わり、ひと段落ついて束の間の休息を終えたのち、また新たな使命が降りかかろうとしていた。
「おはようございます。陛下、ライト、ピュア。お忙しい中、わざわざこちらまでお越しいただき申し訳ありません。本日は重要なお話があってお呼びいたしました」
「あ、あのラピスラズリ、陛下ってのはよしてくれよ。それはロイヤル前国王の呼び方だろ?俺はコバルトでいいからさ」
「かしこまりました、コバルト様。ライトはもうお分かりだと思うのですが、実はもう色彩戦争は始まっているのです。そして黄魔族が大きく動き出しています。メイズを倒されたため、警戒をし、しばらくの間はこの青魔族には手を出してくることはないでしょうが、まずはこちらも緑魔族と接触し、団結をし戦いに備えるほかありません」
「緑魔族か・・・」
ライトが俯いてそう呟く。やはりこの前のような戦いがあったことからこのまま青の国に座していてもどうにもならない。自分たちから行動を起こすしかないのだ。
「はい、なのでコバルト様、まずは緑の国に向かい、国の頭首に接触ください。きっと我々の力になってくださるでしょう」
緑の国の頭首か、自分と同じ転生者なのだろうか?一体どんな魔族なのか。コバルトがそう考えているとライトの首が深く項垂れていた。
「はぁ〜あいつに会うのも50年ぶりか、嬉しいような嬉しくないような」
ライトが何かあまり乗り気でないような表情を浮かべそう呟く。どうやら緑の国には味方で知り合いがいるようなのだが、なんとなく嫌そうだ。
「緑魔族は隠れるのが非常に上手な魔族です。なので黄魔族も仮に緑に国に侵入できたとしても本拠地を見つけることが難しいのでしょう。そこで弱っている陛下の結界を破り、メイズが先に我々青魔族を落とそうとしたのです」
ラピスラズリがそう言って説明する。なるほど、そういう経緯があったのか。
「しかし今のままでは緑魔族も黄魔族に防戦一方でしょう。きっと我々との接触を望んでいるに違いありません。いち早く緑魔族と合流をし、黄魔族との戦いに備えるしかありません」
「ああ、そうだな。まずはあそこの国に向かわないとな。ということだコバルト、もちろん俺もついて行くぜ。足手まといにならないよう最善を尽くすつもりだ。これからもよろしくな」
ライトがそういうと次にピュアがにっこりと笑ってこう言った。
「コバルト、初めての遠征だね。これから違う国に行って、新しい魔族と出会って、色んなこと、乗り越えて行かなきゃいけない。もちろん私も一緒に行くよ。だってあなたのこと、守るって決めたもの」
ピュアにそう言われ、コバルトは若干照れながら目線を逸らしてこう答えた。
「ああ、そうだな、ピュア、ライト、これからもよろしくな。俺一人だと、絶対乗り越えて行けないだろうけど、お前たちがいればきっとどんなことでもやっていけるよな。頼りにしてるぜ、二人とも」
コバルトがそういうと、二人と一匹が手を重ね合ってガッチリと握手をした。とうとうこの青の国を旅立つ時が来たのだ。行末に何があるかはわからないが、力を合わせればきっと大丈夫だろう。
「私もご一緒したいのですが、この通りメイズとの戦いで盾を失ってしまい、この国の結界を張るという使命が残っています。また、もし盾が残っていたとしても私ではもはや足手まといとなってしまうでしょう、コバルト様、どうか御無事をお祈りしています。ピュア、ライト、どうかよろしくお願いします」
「ああ、ラピスラズリ、ありがとう。そうだな。俺とピュアでコバルトを守るよ」
「はい、本日は朝からわざわざお越しいただきましてありがとうございました。旅立つ前に色々と準備があるでしょう。出発は明朝でよろしいですか?」
「ああ、そうだな、今日は色んな人に挨拶してくるよ。この国にいられる、最後の日だからな」
コバルトはそういうと、にっこりと笑って王宮を出て街へいった。そしてその日は二人と一匹で色んな魔族に挨拶をした。みな二人と一匹の門出を祝い、感謝の気持ちを述べた。中には二人と一匹ががいなくなってしまう事に不安がって泣き出すものもいた。
「ライト、ピュア、おにーちゃん、きっとまた帰ってきてね。あたし待ってるからね」
「ああ、アイス、初めて俺に羽の使い方を教えてくれたのは君だったね。おかげで俺もここまで成長できた。ありがとう」
「んーん、いいのいいの、だってアイスおにーちゃん大好きだから。あのね、将来はおにーちゃんとアイスは結婚するの!だからきっとアイスのところに戻ってきてね」
アイスはそういうとコバルトにギュッと抱きついた。流石にこの時はピュアも何も言わずま、しょうがないかという感じで見ていた。ライトも同様だった。そして次にシアンの元へ出向いた。
「俺も一緒に行きたいが、ライトがいなくなり、ラピスラズリが戦えなくなった今、俺とネイビーでこの国を守らなきゃ行けないからな。すまんな。まあ俺がお前たちについて行ってももはや足手まといになるだけだな。ははは」
シアンはそう言って餞別にまたリンゴをくれた。二人と一匹はシアンとガッチリ握手をし、その場を後にした。シアンにも本当に世話になったな。とコバルトは思っていた。
「ああ、とうとうこの国を旅立つんだね。短い間だったけど楽しかったよ、コバルト。この国を守ってくれてありがとう。そうだ、よかったら私の店にあるアイテムを好きなだけ持っていきな」
セレストはそういうとたくさんの道具をプレゼントしてくれた。回復アイテムのポーションや毒消しや聖水などをくれた。きっと旅に役に立つからと。
「いやいや、俺もあなたにはたくさん世話になったね。またここに帰ってきた時、お世話になります。よろしく」
セレストと握手をかわし、そろそろ街の人たちにも挨拶を終え、帰ろうとしたとき、一人の魔族が話しかけてきた。ネイビーだ。
「ああ、コバルト、ピュア、ライト、明日とうとう旅立つんだってな。気をつけてな。無事で帰ってくる事を祈っているよ」
「ああ、ありがとう、ネイビー。お前に教わった疾風乱舞、本当に戦いで役に立ってるよ」
「うん、ネイビー、あなたも達者でね」
二人がそういうとネイビーは視線を逸らし、顔を赤くしながら照れ臭そうにこう言った。
「あ、あのコバルト、ピュア、最初は二人に失礼なことをしてすまなかったな。あのとき、俺は少しばかりいい気になりすぎていたようだ。その、コバルト、もしまたここに戻ってくることがあったら、今度は俺に戦いを是非教えてほしい。俺は、お前を尊敬しているんだ。あのメイズを倒してこの国を救った英雄だからな」
「ああ、ネイビー、ありがとう。そうだな。是非また一緒に修行でもしよう。同じ鳥族として、俺はお前と戦えたことを誇りに思うよ」
コバルトがにっこり笑って握手をすると、今度はピュアにこう言った。
「ピュア、俺はお前にひどいことを言ったのにもかかわらず、戦闘中、命を救ってくれてありがとう。違う白魔族だったとしても、お前の力がこの国には必要なんだ。本当に感謝している。ありがとう」
ネイビーがそういうとピュアはにっこり笑ってネイビーの手を握った。
「何言ってるの、ネイビー、あなたはこの国のために必死で戦ってくれたじゃない、もうそれだけで私も感謝しているよ。あなたのおかげで大勢の命が救われたのよ。それを助けるのは当然よ。もう昔のことは忘れて仲良くやりましょ。ネイビー、ありがとう。私も感謝しています」
ピュアにそう言われドキッとしてしまうネイビー。あ、あれ?種族が違うはずなのになんだこの気持ち?
ライトがやれやれという表情でそのやりとりをみていた。そしてみなに挨拶を済ませると二人と一匹は家に戻って行った。ネイビーはその後ろ姿を眺めてぼーっとしていた。左からコバルト、ピュア、ライトの順に並んでいた。
(青、白、水色のトリオか。ふふふ、なんだかいい絵になるな。あの三人どこまでやってくれるだろう。いや、きっとこの国を救ってくれるに違いない)
(それにしてもピュアはどんなときもコバルトの隣にいようとしてるな、そしてライトはピュアのそばか。片時も離れようとしていない。そして三人とも全然気付いてないな)
ネイビーは後ろ姿をみてそう思った。最初の頃は随分と嫌な奴だったが、魔族でもこうも変わっていくこともあるのだな、とコバルトは思っていた。そして気分も晴れ晴れした中で新しい新天地に向けてこのトリオは歩み出すのであった。




