38話 青き猫の苦悩
その日の夜。みんなが寝静まった頃、コバルトは家の裏から何やら物音が聞こえてきて目が覚めた。
「ん?なんだこんな夜中に、なんの音だ?」
コバルトが部屋から出て家の裏の奥にある林の中に入ると、そこには一匹で何度も何度も剣で木を切り刻んでいるライトの姿があった。
(ライト、何をしているんだ?こんな夜中に)
コバルトが声をかけようとした瞬間、横からピュアがやってきて、ライトの手を抑えた。
「ライト!もうやめて!手から血が出てるじゃない!こんなに根詰めて修行することないわ!」
「ピュア・・・」
ライトが手に持っている杖をカランと落とし、うなだれていた。どうやらなにか深く思い詰めているような感じだった。そしてライトの目には涙が浮かんでいて、その目からポロリと一粒の涙がこぼれ落ちた。
「ピュア、俺は今回、何も出来なかった。師範の仇も討てなかった。討ったのはコバルトだ。俺はお前もコバルトも守るって決めていたのに、結局何も守れなかった。逆に俺がコバルトに助けてもらう形になった」
「何言ってるのよ、ライト!あなたは今回、必死に戦ったじゃない!あなたがいなきゃ、きっと今頃みんなやられていたわ!あなたはあなたのできることを全てした。それでいいじゃない!」
ピュアがそう言ってライトの両手に手をそっと当てて回復魔法をかけると両手から血が止まった。ライトは涙を流してピュアを見つめた。
「コバルトだって、ライトがいなかったらあそこまで戦えなかったわ。それにもしあそこであなたがコバルトを頼らず死ぬまで戦って本当に死んでしまったら今後は誰がこの国を守るの?この国にはあなたが必要なのよ?」
「ピュア、俺はこれから始まる戦いで今以上に強くならなくちゃいけない。今のままじゃ、俺は誰も守れないし救えない。今後、メイズよりも強い魔族が現れるかもしれない。だから、だからもっと強くならなくちゃ。コバルトに頼ってばかりもいられない」
「ライト・・・」
ピュアはそういうと、しゃがんでライトを正面から抱き抱えると、優しく優しく頭を撫でながらこう言った。
「ライト、今まで辛かったね。師匠を殺されて、その仇をとれなくて、陛下がいなくなって、自分をついつい責めちゃうよね。でもいいの、あなたはあなたで必死にやってるわ。あなたはあなたのできることがあるもの。あなたに救われたり助けられた魔族、たくんさんいるよ。私もその一人。ライト、いつも私を守ってくれてありがとう。私、ライトに本当に救われてるし、たくさん感謝してるよ」
「ピュア・・・」
ピュアに抱き抱えられライトの目から大粒の涙がボロボロと溢れた。ピュア、なんて優しいんだこの子は、ああ、暖かい。俺が守っていく、守らなきゃいけないはずなのに、逆に守られているのは俺のようだ。
(ライト・・・)
コバルトはその様子を見て驚いた。ライト、普段はあんなひょうひょうと能天気にしているようだがそこまで責任を感じていたとは。
「さ、ライトもう寝ましょう。こんな根詰める事ないわ。ゆっくり休んで」
「ああ、わかった。すまん、ピュア。そうだな。もうこの辺にしておくよ。という事で今日は一緒に寝ていい?」
ライトがそういうとピュアははあーっとため息をついた。全くもう、少しおだてりゃすぐこうなって。
「ダメって言ったってあんたすぐ私の布団入ってくるじゃない。朝起きたら人の顔ペロペロ舐めたりして。あんたと寝ると寝れないのよ」
(ライト、いつもそんな感じでピュアと寝てるのか、なんてやつだ)
コバルトは思うと、一人と一匹に見つからないよう部屋に戻った。ピュアとライトもその後一緒に部屋に戻った。そしてコバルトはライトの気持ちを知り、今以上に強くなることに励むことを決意するのだった。
(ライト、俺もお前と同じだ。ピュアもお前も、この国も俺は守りたい。不安だけど頑張るよ。これからもよろしく頼むよ)
ピュアは部屋に戻ると扉を閉めた。まあでもたまには一緒に寝てやってもいいかな?とも思ったが、毛が舞うし喉を鳴らしたりふみふみしたり顔を舐めてくるので本当は嫌だった。ひどい時はおねしょをされることもあった。
(それにしても、ライトが羨ましい。私もあんな風に素直に言えたらなあ)
ピュアは窓の外から夜空を眺めて月を見ながらそう思った。ああ、綺麗な青い月だ。いつか、ライトじゃなくてコバルトと一緒に寝・・・。きゃー!
とか一人で思ってピュアは顔が真っ赤になって布団に包まって悶えた。ダメだこりゃ。これじゃあいつまでたっても進展しないね、ピュアちゃん。




