36話 青い髪飾り
パーティが盛大に行われている中、ライトは王宮からも街からもずいぶん離れた海の見えるぽつんと立っている静かな丘に足を踏み入れた。
見晴らしのいい丘の頂上につくと、そこには一つの木製の十字架の墓があり、墓標がスカイブルーに塗られていた。
そよそよと爽やかな風が吹く中、ライトは手に持っているラム酒の栓を抜き、もう一つの手に持っていた二つのグラスに注いで墓の前に置いた。
「師範、昨日とうとうメイズを倒しましたよ。50年前の恨みをこれで晴らせました。残念ながら倒したのは俺ではなくコバルトですが、これであなたも浮かばれるでしょう」
ライトはそこに座ると涙を目に浮かべながら手に持っているグラスのラム酒を一気に飲み干した。そしてグラスを置くと涙がポロリと目からこぼれた。
「あなたはラム酒が好きでしたね。俺はあまり飲めませんでしたのでいつもあなたに勧められても断っていました。けど、けれど今は最高に旨いです。俺はあなたとこうして飲めて幸せです」
「やっぱりここにいたか、ライト」
ライトが声のする方を振り向くと、そこにはラピスラズリが立っていた。そして手にはグラスと三枚重ねの白い皿とフォーク、そしてその上には三つの青いケーキが乗っていた。
「ラピスラズリ・・・」
ライトが鼻をすすり、手で涙目をぐしっと拭うと二匹はしばらく言葉なしに見つめあった。そしてラピスラズリが墓の前に来て一枚皿を置き、その上に三つあるケーキの一つをフォークでその皿の上に乗せ、供えると、両手を合わせ目を瞑り、拝んだ。
(スカイ、あなたの愛弟子は立派に成長されています。昔よりもずっと強くなりましたよ。いつの日か、あなたを超える日もくるでしょう)
二匹はしばらく手を合わせ拝んだのち、ラピスラズリが立ち上がり、丘の先にある展望台に二つのケーキとグラスを持って移動した。ラピスラズリは海が見える見晴らしのいい展望台にあるテーブルとの上に皿を置き、ケーキをそこに盛った」
「ライト、バタフライピーのケーキだ。上には金粉が振ってある。私の石、ラピスラズリをイメージしたんだ。ホワイトラムなら合うだろう。酒だけだと、寂しいと思ってな」
ラピスラズリがそういってケーキを勧めてきた。ライトはラム酒を飲みながらケーキを頬張る。旨い。ラム酒だけでも旨いのに、そこに甘いケーキが折り重なるハーモニーは絶品だった。
「ライト、お前と私は同期だったな。そして誰よりも陛下のお近くでお守りをしていた。ピュアが来てからは陛下はライトを護衛につけるようになり、私と二人で結界を張るようになったが、こうして思うと、私とお前が出会ったのが、ついこの間のようだ」
「そうだな、俺たちが生まれてから、師範がいる時も、いなくなってからもお前とはずっと一緒いた。お前が一番長い付き合いだ。ラピスラズリ。師範もきっと喜んでいてくれるだろう」
ライトはそういうと再び涙がポロリと溢れた。ああ、こうやって二人で一緒に話せるのももしかしたらこれで最後かもしれないと思っていた。
「ライト、これからやはりお前は旅に出るのだろう?私も一緒に行きたいが、私はこの国を守るためにこれからは一人で結界を張らなくてはならない。そしてもう盾も失ってしまったからな」
ラピスラズリはそういうと上着のポケットからなにやらゴソゴソ取り出した。そしてそれを手に握り開くと、手のひらに何やら光る石があった。ん?それはひし形をした髪飾りだった。
「ライト、これを持っていけ。私の盾の破片から作った髪飾りだ。私はもう戦うことはできないが、きっとこれがお前を守ってくれるだろう」
「ラピスラズリ・・・・」
ライトはそれを受け取ると、早速その髪飾りを帽子につけた。白い帽子にラピスラズリの髪飾りがついた。そして何やら魔力を発しているようで、それに守られているような気がした。
そしてライトとラピスラズリはそこで強く抱擁をした。二匹とも背丈は同じくらいだろうか?兎と猫の抱擁だった。
「ラピスラズリ・・・。ありがとう」
「ライト、必ず生きて帰って来いよ、私は待っているぞ」
こうして二匹だけでスカイの墓参りを終えたのち、みんながいる広場へと戻っていった。ライトは師範であるスカイの参拝を盟友であるラピスラズリと共にできたことをとても嬉しく思っていた。




