18話 青き話し合い
次の日になると、ライトは一匹で王宮へ出向いた。ピュアの護衛もあったが、その日はどうしても陛下と話したいことがあり、一匹だけで訪れた。
王の間に着くと他のものには席を外させて、王と一対一で話を始めた。
「ライト、藪から棒に一体どうしたのだ?」
「はっ、陛下、失礼いたします。ご覧の通り、コバルトは毎日成長しており、今やこの私を凌ぐほどの力をつけています」
「ふむ、やはりあのお方に次期頭首となっていただかなくてはな。私ももはやそう長くあるまい。」
「はっ、陛下、そのことについてなのですが・・・」
ライトはそういうと何やら深刻そうな顔をして、話し始めた。
「私は、コバルトを死なせたくはありません。彼をこの国の頭首にはしたくはないのです」
「ライト、何を言い出すかと思えばお前がそう言ってどうする。もはや彼にこの国の命運を託すしかないのだ」
「はい・・。それは承知の上であります、陛下」
そういうとライトは顔を俯いたままあげることが出来なかった。ライトはどうしてもコバルトを戦いの場に駆り出したくはなかったのだ。
「ライト、やはりお前はまだスカイのことを気にしているな。しかしもうどうにもならないことなのだ。あれはお前の責任ではない。そんなに自分を責めるではない」
「はい、ありがとうございます陛下。私がきっと、師範を超えて、そしてこの国を守ってみせます。」
ライトには昔、一匹の師匠がいた。名は「スカイ・ブルー・タイガー」空色をした大柄の獣族で虎の魔族だった。
スカイとライトはいつも一緒に修行した。当然スカイの方が実力は高かったが、ライトもスカイの一番弟子ということでこの国ナンバー2の実力を誇っていた。しかし前回の聖戦の時に、スカイはとある強敵と戦い、命を落としていたのだ。
ライトは目の前で自分の師匠を失ったことについて大いなる責任と罪深さを感じていた。そしてもう誰も自分は大切な者を失いたくないと心に誓っていた。そしてコバルトに命運を託さなくてはならないと分かっていても、ライトは受け入れることができなかったのだ。
「まあよい、ライト、お前の気持ちはよく分かった。今日はもう下がれ。これからまもなく戦いはどちらにしても始まるだろう。その時に、彼がどこまでやれるのかを見届ける必要がある」
ライトとロイヤルがそう言って会話をしていると、突然ドアが開いた。誰かが大慌てで中に入ってきた。
「なんだ?下がれ!今はライトと二人だけで話しているのだ」
「へ、陛下!敵襲です!け、結界が破られました!今、黄魔族が侵入してきました!場所は北の海岸沿いです!」
「な、なんだと!?」
突然の報告にロイヤルは度肝を抜かれるように驚いた。
「敵襲だと!?そんなバカな!?この島国に貼られている結界は50年破られたことがないのだぞ!?や、やはり私の結界魔法はもうかなり落ちていたのか!そしてその結界を破るということはかなり強力な魔族が侵入してきたに違いない!」
「ライト、もう戦いは始まっています!今、前線でたくさんの兵が街の侵入を許すまじと闘っています!どうか、どうか応援願います!」
「分かった!北にある海岸沿いだな。魔力感知でわかる。俺もすぐにいく。おい!ラピスラズリ!いるか?」
ライトが大きな声で叫ぶと、王座の裏からラピスラズリが姿を現した。
「俺は今から戦場へ出向く。お前は陛下を守ってくれ!頼んだぞ」
「分かった。ライト、どうか気をつけて」
そういうとライトは一目散に戦場へと走っていった。魔力感知でわかる。二つの勢力が戦いを始めている。はやく、はやく行かなくては。そう思いライトは駆けて行った。