15話 青いな、その夜這い
戦闘が終わり、ライトはラピスラズリに礼をいうと、ラピスラズリは再び元いたところに戻って行った。ネイビーは気を失っていたので、治療室に運び込まれた。そしてその日はシアンと別れ、二人と一匹はとりあえず家に戻ることにした。
「あ、そういえばちょっと、寄りたいところがあるんだけどいい?」
ピュアがライトにそういうと、セレストのいる植物屋に向かった。そしてなにやら買い物を済ますと、家に戻った。
時刻はもう夕方だった。朝からシアンと稽古をつけ、夕方に決闘をしたコバルトはもうクタクタ。すぐに風呂に入り、夕食を食べた。
「コバルト、すっごく強くなったね。あたし、少し心配してたけど、驚いちゃった。まさかネイビーがあんなに手も足も出なくなっちゃうなんて」
「ネイビーってそんなに強い魔族なのか?」
「うん、青魔族の中では4番目かな?一応、鳥族の長だからさ」
「ふーん、4番目ねえ。ライトが一番で次がシアンなのはわかるけど、3番目って誰なんだ?」
「ラピスラズリ」
ライトがピュアに代わって答える。ああ、やはりあのラピスラズリも実力者であったか。
「まあ戦士としての素質はないんだけどな。あいつはこの国にはなくてはならない存在だよ。仮に俺が本気で戦ってもそう簡単には倒せないな」
戦士としての素質がないのに3番目なのか?たしかに魔力は高く、戦闘能力は低そうだったが。どうなのだろう?
「あとネイビーはあの性格じゃあ、下手をしたらもっと低いかもな。とにかくコバルト本当に強くなったな。俺は嬉しいよ。もうこの国で一番強いのは俺じゃなくてお前かもな」
そういうと、ライトはどこか悲しげな様子だった。コバルトがこんな短期間で強くなったのにあまり嬉しくないのだろうか?
その日はそんな団欒をした後に、夜になったのでみんな寝ることにした。コバルトはライトから借りた魔力に関する書物を部屋で読んでいた。どうやら自分が強くなっているので、もっと魔力について勉強しようと思っていたのだ。勉強熱心な奴だ。
ピュアはその日、ライトが寝静まったのを確認して、起き、鏡の前でパンと自分の顔を叩き、決意した。
(準備良し、下着よし、すべてよし、いくわよピュア!)
そして部屋から出ると、コバルトのいる部屋の前で止まった。パジャマ姿で、腕には大きな抱き枕を抱えていた。
ドキドキドキドキドキ
(うーん、なんて言ったらいいだろう?怖いから一緒に寝ていい?んー違う、今日は疲れてるでしょ?だからもし何か危険があったときに、あたしが守ってあげる。んーちがう。やっぱり)
「一緒に寝ていい?」
ピュアが小さい声で、ボソッとつぶやくと顔を真っ赤にして、そこに蹲み込んで口を押さえてしまった。
(そ、そんなこと、言えるわけないじゃない!け、けど今日が絶対チャンスよね。どうしよう)
ピュアがそんなふうに考え込んでいると、遠くからふにゃーごろごろごろ、という声が聞こえた。
声のした方を見ると、そこにはライトが廊下で寝そべっていた。どうやら夜中に起きてマタタビを食べてしまったようで、そこに蹲っていた。
ガチャリとドアが空いて、中からコバルトが顔を出した。そして目の前にはピュアがいた。
「ああ、ピュア、どうした?こんな夜中に?」
「ああ、コ、コバルト、あのその、えーっと、あのね、ライトが突然起きて、声を上げて、あたし追いかけてきちゃって、えと、こっちの方に来たもんだから」
ピュアが取り乱したようにあたふたとコバルトに説明する。ん?なんだ?何か動揺している?
そうすると、ライトが四つ足で歩いて近寄ってきて、ふにゃーごろごろごろと喉を鳴らしてコバルトにすり寄った。
「ははは、おいライト、お前またマタタビでも食って酔ってるな。ああ、なるほどね、猫と一緒に寝るとそりゃ寝れないよな。まあ勝手に風呂も入ってくるような奴だし、おいライト、お前ピュアは女の子なんだからもう少し考えろよ。あ、ピュア、じゃあ今夜は俺の部屋でライト寝かすから安心しなよ」
「え?でもコバルト。」
「ははは、大丈夫、大丈夫、俺実は猫好きだからさ。ライトも酔っ払って寝ぼけてるみたいだし、ライト、俺と寝るか?」
「ふにゃーゴロゴロゴロ、うーんむにゃむにゃ、ピュア〜」
ライトは寝ぼけてコバルトをピュアと勘違いしている。そしてコバルトがライトを抱きかけるとこう言った。
「じゃあピュア、もう遅いからおやすみ。またな。」
そういうとコバルトはガチャリとドアを閉めた。部屋の前で取り残されたピュアはその場に茫然と立ちつくしていた。
(あたしも猫になりたい・・。しくしく)
ピュアの心の声が漏れた。ということでその日ピュアは一人で部屋に戻って行った。ライトは酔っ払ってその日はコバルトの部屋で一夜を過ごしたのだった。