1.マドロミノナカニ
人類は高度に発達した人工知能と遺伝子工学により栄華を極めていた。
そして太陽系の全てを支配した人類は遺伝子工学により産み出された強靭な兵士を冷凍睡眠し、外宇宙へと送り込み新たな資源を求め始めた。
この兵士達はあらゆる環境に瞬時に適応し、高度に効率化された肉体は人類の4倍以上の運動能力を持ちながら、人類と同程度の消費カロリーですむのだ。
さらには肉体の一部を変化させ強力な武器をその場で作り出すことが可能である。
そしてその第一派遣隊が今まさに外宇宙へと旅立とうとしていた。
第一派遣隊は12人の兵士とそれを補佐する人工知能によって編成されている部隊である。
一同はカプセル型の冷凍睡眠装置に入り、任務の説明を受けていた。
「栄えある第一派遣隊の諸君。君たちは今まさに誰も見たことがない偉業を成し遂げようとしている。
外宇宙を探査し、生命体を発見すること。
一体どれくらいの月日がかかるか予想もつかない…そのような過酷な任務に堪え忍ぶ諸君達はまさしく英雄と呼べるだろう!
君たちはこれから人類が適応できる星が見つかるまでしばらく眠ってもらう。君たちが穏やかな安眠が得られること、そして夢から覚め新たなる発見をもたらすことを期待しているよ」
カプセル内に冷気が満ち、兵士達は長い眠りについた…
派遣隊の一人であるライカは夢を見ていた。
優しい両親に囲まれ穏やかに過ごす夢を。
ライカには両親はいない。そもそもライカは戦闘に耐えうる体になるまで培養液の中で育てられ兵士としての生き方以外知らない。
しかし暖かな幸せの前にライカは例え夢でもかまわない。
こんな日がずっと続けばいい。
しかし甘い夢は長くは続かなかった。