五話精製
トラックの運転席で、空腹感により、目が覚めた。
「ここ、どこだ?」
俺は、周りを見回す。
そこは、森の中だった。
「ああ、そうか、異世界に来たのか」
どうやら昨日のことは夢ではなかったようだ。できれば、悪夢のままであってほしかった。
一度落ち着き、整理する。
そこで、思いつく。
「魔法を作るって、どうやるの?」
とりあえず風魔法は、体から何かが出て行くと同時に風が起こったように感じる。
軽く緩い渦を作ると、結構な風量になって表れた。
風魔法はあまり使わない用にしよう。
次に土魔法は、まず形をイメージし、土を操る感じでやってみる。
指先から何かか出て行く感覚とともに、何もない場所に、黒い台座が現れた。
次に空間魔法を試してみる。
何もない空間に、ポケットのようなものをイメージし、そこに手を入れる感じで触る。
すると、何もないところに、黒紫色のゆがんだ空間が現れた。
試しに、落ちている石を入れて出してみる。
すると見事に入った。
では、空間を移動、つまり転移も可能なのでは?
早々にイメージをする。
家のある小さな町、そこには畑があって、人がいて。
今がちょうど昼なので、明るく、太陽が真上に上っている状態、そしてそこに現れる自分をイメージする。
体が、いきなり重くなったのと同時に、瞼の光がまぶしいので、少しづつ開けてみる。
そこには、田んぼのようなものが二つと、花畑が広がっており、のどかな空気が漂っていた。
近くの畑には、様々な色の花が咲き乱れており、非常に幻想的な光景を作り出していた。
よく見ると、奥の方には先程のような森林があった。
後ろには、自分で作った屋敷。
どうやら、転移したのではなく、作り出してしまったようだ。
「まあ、必要だろうし、後で野生獣対策の罠も仕掛けないとな」
外の世界に行くのはまた今度にしよう。
そう思って、まず、人手が足りないことに目を向ける。
「精製魔術ができるなら、ロボットも作れるはずだ」
創造うするは人間の女性。
胸は大きく、おしりはやや小さめ、装甲は皮膚のように柔軟で収縮するもの、攻撃力は最大。
知能を持ち自我を持つ、されど自身の命令に従順なロボット。
一通りのイメージが終わり、目をつむって魔力を出す。
一気に体が重くなる感覚と同時に、まだ減っていくのを感じる。
ややあって、減る感覚がなくなり、目を開ける。
そこには、人間の女性がいた。
正確にはそう見えるものだった。
「初めましてマスター、私は、マスターのオートマタです」
それは、非常に人間に近い、いや人間と言っていいほどの者だった。
「えっと、僕は晴斗、星井晴斗、よろしく」
すると、彼女はにっこりと微笑んで答えた。
「よろしくお願いします晴斗様」
「うんよろしく。それじゃあ、まず名前を付けようか」
おかしそうに首をかしげる。
「名前、ですか?」
「そう、名前だよ、君にも名前が必要でしょ?呼びにくいし」
「わかりました」
「うん」
そして、名前を考える。
ふと空を見上げると、そこには真っ青な空が見えた。
晴れ渡る空は非常に幻想的で、心が現れる感覚に陥る。
「空」
ふと、晴斗がつぶやく。
「空っていうのはどうかな?」
「空ですか?」
不思議そうに首をかしげる。
「そう、空、いいでしょ、きれいな空が見えたときに生まれたから空」
「わかりました、では、私のことは空とお呼びください」
「うん、よろしく、空」
こうして、新たな仲間、空が加わった。
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場所は、晴斗がつくりだした屋敷の中。
「そう言えばさあ、空って、戦えるの?」
「可能です、格闘術や剣術と言ったものは一通り使えます」
それは博人がイメージした通りの者だった。
「じゃあさ、料理もできる?」
「可能です」
またもや、晴斗の想像通りだった。
「じゃあさ、毎日の三食って、頼んでもいい?」
「はい、命令とあれば」
晴斗は思った。
なんていい子なんだと。
しかし、同時に不安もあった。
それは
「空ってさ、内臓あるでしょ」
「…はい、ありますが…」
少し、間を開けて返事が返ってきた。
「じゃあ、食事するよね?」
「捕食機能はついております」
補食って、まあいいか。
「じゃあさ、一緒に食べようよ」
「しかし、マスターと同じ机にとは・・・」
「いいの、僕がしてほしいんだから」
ごり押しで行く。
「…わかりました」
しばらくしたのちの了承を貰った。
今日から、食事が楽しみだなと思う晴斗であった。