一話怪しい光
ある一軒家の前で、仁王立ちし、その三階建ての家を見上げる、若者の姿があった。
今日、この日、夢のマイホームを手に入れた俺。
宝くじのありがたみを始めて知った時だった。
ビッグバン宝くじの、三百億の一等賞を当てた張本人であった。
そんな彼が最初に買ったものは、家だった。
三階建ての、一人で住むには大きい、木製の家だった。
青年は、感慨深げにつぶやいた。
「これで俺も持ち家か」
一社会人の青年が持てる家の域を超えていたが、一括払いである。
「しっかし、余ったお金、どうしよう。まあ、貯金しておくか」
余ったお金のことを考えながら玄関に向かう途中で、背後から、ものすごい光が発せられているのに気が付いた。
「うわっ、まぶしい!なんだ!?」
その光は、次第に大きくなり、やがて、青年を覆う大きさにまでなった。
光が落ち着いたころには、青年の姿だけがなくなっていた。
「初めまして、かな?」
誰かの声が聞こえた。
周りは白一色。
「いきなり呼び出してごめんね」
呼び出した?どこから?
「君のいた地球から」
何で?
「君には、試験的に僕の世界で暮らしてほしいんだ」
え?それだけ?
「うん、それだけ」
俺、家持になったのに、そんな理由で呼び出されたの?
「まあ、そういうことになるかな」
なんだよそれ!もとに戻してくれよ。
「それはできない、もう呼んでしまったのだから」
そんな…
「代わりに、君の好きな物を上げるよ。魔法でもいいし、経済力でもいい、彼女が欲しいでもいいよ?」
俺は、家が欲しい。
「それはちょっと無理かな、なんていったって、君は異世界からくるんだ。そんな人に、家だけがあるなんて、おかしいだろ?」
じゃあ、お金が欲しい。
「なるほど、家がもらえないなら、買うという事か。いいだろう」
「他には、それだけかい?」
ああ、それだけでいい。
「そうかい、じゃあ、僕の方からいくつか、得点をつけておくよ」
ありがとう。
「うんうん、それじゃあ、新しい世界、異世界へようこそ。楽しんできてね」
こうして、青年、星居 晴斗の異世界生活が始まろうとしていたのだった。