天使らしきもの
最近眠いですね。
体育館には6人の人間がいた。否、6人ではない。5人と”1体”だ。1人と数えられないのには理由がある。そいつの背中には巨大で赤い羽、頭上には赤い光を放つ輪があった。見た目からすればそれは天使そのものだった。
「全員集まったようだね。それじゃ話を始めようか。」
そいつはいきなり喋り始めた。
俺や夢道を含める全員が混乱しているなか、「おい!」という大きな怒鳴り声が体育館に響き渡った。見ればガタイのいい男が前のめりになって天使らしきものに睨みを効かせている。
「てめぇ!なんの真似だ!?いきなりそこらじゅうに死体が転がってると思ったら体育館が光り出しやがった!それもこれもお前の仕業か?そもそも、お前はなんなんだよ!天使みたいな格好しやがってよ!コスプレか?あ?なんなんだよ!答えやが」
「うるさいなぁ」
すると、天使らしきものは手のひらを男に向けた。次の瞬間、男の胴体が一瞬にして無くなった。胴体という支えを無くした頭は俺たちの方に転がってきた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
転がってきた頭を目の前にした見るからに遊んでそうな女が叫んだ。
「な…何をしたの?あんた!こんないきなり…頭おかしいんじゃな」
「だから、うるさいって」
天使らしきものがまた、女の方に手のひらを向けると今度は女の頭が吹っ飛んだ。胴体は崩れ落ち、首元からは血が流れ放題だ。
「うわぁ!」
その光景に叫びかけた夢道は自分で自分の口を塞いだ。叫べば殺される。夢道の本能がそれを感じ取ったのだ。
「偉いね。君。ええと、確か名前は………そうそう!夢道零くんだよね?静かにするのはいい事だ。君も僕も、円滑に話が勧められるからね。」
満面の笑みで、頷きながら天使らしきものは呟いている。その姿は、ついさっき2人の人間の命を奪ったもののする姿ではない。
「ちょっといいかしら?」
すると、長髪の女生徒が手を挙げ天使らしきものに向かって言った。
「質問かい?ええと…針須川?あっ!針須川栞か!いいよ。何でも聞きなよ。君みたいに静かに話の出来る人間は僕の好きなタイプだ。」
「そう?ありがとう。素直に受け取っておくわね。それで質問なんだけど、貴方は一体何者なの?」
それを聞くと、天使らしきものは「あっ!」と呟いて「そういえば自己紹介がまだだったね。ごめんごめん。」と申し訳なさそうに言ってくる。
そう言うとそいつは大袈裟な咳払いをしてこう言った。
「僕の名前はファノエル。この世界の神のようなものだよ。よろしくね?」
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