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プロローグ
目からは血が流れていた。その血が流れるごとに自分の命が少しずつすり減っていくのは、なんとなく分かっていた。
「栞!」
声が聞こえた。聞き覚えのある声だったが思い出せない。この声は誰だ?血を出しすぎて意識が朦朧としてきた。声も聞き取りづらくなってきた。思考が回らない。
「栞…ごめん。次は…死なせないから」
涙を含んだ声が続いている。やはり誰の声だか思い出せない。そもそも栞とは誰だ?私の事だろうか。それすらも分からない。
ただ、この男の声を聞いていると、名前の分からないグチャグチャとした感情が湧き出てくる。せめて。この感情の名前くらいは知って終わりたかった。
そう考えたのを最後に栞と呼ばれた女、針須川栞は息を引き取った。