獣が哭く、双子の罠
島に到達した頃には日はすでに暮れかけていた。
ラトキア島、私の島。今では怪物が支配する島となった。
「なんだ?思ったより平和そうじゃん?」
拍子抜けと言わんばかりにアマラが声を挙げた。まったく、随分と呑気なものだ。
だが、彼女が不思議に思うのも無理はないか、一見にしてこの島は全くの平静。
しかし、これはあくまで外見だけの話。島の奥へと進めばその異常さに気づくだろう。
「ま、とりあえず。その怪物がいるってのは島の中央で間違いないのね?」
そうだ、討伐すべき怪物は島の中央、ラトキア城にいる。
ラトキア島、かつては漁業などで賑わいを見せていた。時代を経るにつれ風光明媚な島の姿が世界的に評価され、昨今では観光業を主な収入源としていた。
そして、それらを管理していたのがラトキア王並びにラトキア城の高官たちであった。
「前から一度は来てみたかったんだよね~ラトキア島。まさか、こんな状態で来るとは思わなかったけど」
ふんふん~♪と鼻歌を奏でながらアマラは船から飛び降り、ついにラトキア島に足をついた。
ここはラトキア唯一の港街だ。人の気配は一切ない。しかし、街に被害があるようには見えない。
そう、人だけがいなくなったような印象だ。
「さぁて、時期に夜になりそうだし今日はここで休んで明日の朝から出発かしらねぇ~」
周りの不穏な様子などお構いなしにアマラはさっさと近くの建物に不法侵入してしまった。