【第2話:子猫のじゃれあい】
おっとりした性格でメガネをかけているお嬢様が志鶴ちゃん。ひとりっ子で兄弟に憧れています。
少し肌が焼けている明るくヤンチャな小夏ちゃんです。彼女には上にお兄ちゃんが2人います。
通り慣れた通学路。胡桃と桃花はいつもここを通って学校に行く。
「車の通りが多いこの道は車のエンジンで少しうるさいけれど、綺麗な草花が咲いているから好きなんだよね。」
と、胡桃が言う。
「…私は嫌いよ。排気ガスが辛いもの。田舎に憧れるわ。」
桃花は田舎の風景を想像し思わずうっとりとする。
「でも、桃花は虫が苦手じゃなかった?」
「苦手じゃなくて大嫌いよ。」
それを聞いた胡桃は思わず笑ってしまった。
「わ、笑わないでよ!」
「ごめん、ごめんって」
胡桃は笑いを我慢しながら話をかえた。
「あの公園懐かしいね。」
胡桃は公園を指差した。
「…そう?私は別に。」
と、返事がかえってきた。
「一緒にかくれんぼしたの覚えてる?」
「わかんない。覚えてないわ。」
桃花のつれない態度に胡桃は少し苦笑する。
「近所のお姉さんがたまに遊んでくれてたんだよ。ああ、懐かしいなぁ。」
「…そう。」
5分ぐらい沈黙があった。それから最初に話を始めたのは桃花だった。
「あ、あのさ…」
「どうしたの?」
桃花の少し苦手なふわっと甘い香りがした。
「やっぱり、なんでもない。」
桃花はそう言った。
「おはようございます。胡桃ちゃん。桃花ちゃん。」
声の方に振り返ると、胡桃にニッコリと微笑む少女がいた。
「おはよう。志鶴ちゃん。」
彼女の名前は西本 志鶴。胡桃の同級生で仲の良いクラスメイトの1人だ。
「…おはようございます。西本先輩。」
桃花が志鶴にお辞儀をすると、「いい子いい子」と志鶴は桃花の頭を撫でた。
桃花は少し照れたように頬を赤く染めたが、志鶴のその手を払った。
「き、気安く私に触らないでください!」
桃色の頬を膨らませてそっぽを向いた。
「ごめんなさい。不愉快にさせてしまって。」
と、志鶴は謝った。
「べ、別にいいですよ。少しびっくりしただけです。私の許可がおりたら、撫でても良いですよ。」
「うふふ。ありがとうございます。桃花ちゃん。」
「おはよー!胡桃。志鶴。」
明るく元気な声が聞こえた。
すると、背中をポンっと叩かれた。
声の主は幼馴染の山村小夏だった。
彼女は明るく元気な性格だ。
「おはよう。小夏ちゃん。」
「おはようございます。小夏ちゃん。」
と、胡桃と志鶴が言った。
「ねぇ!ちょっと!私も一緒にいるんですけど?」
と、桃花が怒った。
「わりぃな。ちび桃花。小さすぎでまじで見えなかった。」
小夏と桃花は犬猿の仲だ。
歩きながらケンカをするのをやめてほしいと胡桃と志鶴が言うものの、2人は言うことを聞かない。
「本当に目が悪いよね!小夏のその目ってただの飾り物なんじゃない?」
と、また桃花は頬を膨らませた。
「ちび桃花、先輩をつけろ。あと、この目は飾り物なんかじゃないからな!」
「先輩?アンタが?あはは。アンタが先輩なんて似合わない!」
睨み合う小夏と桃花。
「は?ちび桃花、そんな性格だからちびなんだよ!」
「ちょっと!性格と身長は関係ないに決まってるでしょ!」
と、桃花は言い返す。
「否定しないってことは、性悪を認めるんだな?」
小夏は腕を組む。
「は?何でそうなるのよ!本当馬鹿ね!大馬鹿小夏」
「あたしは大馬鹿じゃないからな!あと、先輩をつけろ!」
「はいはい。小夏先輩!」
言い合いをするのと2人は周りが見えなくなる。だから、胡桃と志鶴が嫌な顔をしていても気づかない。
「いちいちイラッてくるような言い方をやめろ!」
「あら?ごめんなさーい。そもそも低能なレベルでコアラよりも劣っている小夏先輩に行ったところで、明日には絶対忘れてますよねー!!」
どこからか仕入れた桃花の情報に3人は驚いた。
(コアラって馬鹿なんだ。)
胡桃は人を疑わない。だから、いつも桃花達に心配される。
「は?そんな分けねぇーからな!!」
「そのへんで2人ともやめなよ!」
と、胡桃が間に入る。
「小夏ちゃん。みっともないですよ!私達は高校生なのですから。先輩らしく振る舞わなくてはいけません。それに言葉遣いに品が無いですよ!」
「はいはい。分かりましたよ。志鶴せんせー。」
「小夏ちゃん。ちゃんと話を聞いてください!」
「やーだね。」
「…ごめんなさい。西本先輩。」
桃花の上目遣いによって志鶴の怒りは鎮まった。
「ところで、ちび桃花はお姉ちゃんと登校するなんて、まだシスコンを卒業してないの?」
「べ、別にお姉ちゃんなんて好きじゃないし!」
と、頬を赤らめて怒る。
そして「あと、ちびとか言わないで」と言い返した。
「え?お姉ちゃんのこと好きじゃないのですか?」
と、志鶴が聞き返すと胡桃も「そうなの?」と言った。
「お、お姉ちゃんなんて嫌い」
「じゃあ、桃花はちゃんと目と目をあわせて言えますなぁ?」
小夏がいたずらにそう聞く。
「…わ、私。今日、日直だった!だから、先行ってるね!」
そう言って桃花は走り去った。
「…逃げたな」
と小夏が言う。
「桃花ちゃん。転けたりしないか心配です。」
心配する志鶴に胡桃は「大丈夫よ。私よりも落ち着いてるから。」と言う。
桃花に先ほど言われた「嫌い」に少し落ちこむ胡桃。
「ほほぉ。仲むつまじいですなぁ。しかし、桃花のあの慌てようは、まだ何か隠してるだろうよ。後で追及してやらねえとな」
それにたいして志鶴が怒る。
「小夏ちゃん!後でちゃんと桃花ちゃんに謝って下さいね!」
「へいへい。」
次回もお楽しみに!!
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