6ページ目
「ほら、お前らなにやってんだ。部活に集中しろよ」
山西がそう言うと川田と双葉を筆頭に部員全員が
「山西先輩待ってくださいよ!この話は俺たちにも関係あるじゃないっすか。まずタバコの件だって楽器に臭いついたりしなくてよかったっすけど佐藤だって俺たちの部員っすよ?」
「そうですよ!それに愛奈ちゃんのことも気になりますし…耀太のことは一応心配してますけどどうせ家で練習してるだろうから」
二人がそう言うと山西は少し悲しい顔をした。耀太は周りからそんなやつだと思われてると思うとちょっとショックだった。
(あいつは結構引きずるからなぁ…)
「あいつなら練習してないと思うぞ?朝あいつの家に行ったら親御さんが話したくないし楽器も見たくないって言ってたみたいだからな」
「それ本当ですか?山西先輩!?」
山西はいきなり結城に大声で聞かれたので驚いて変な声が出てしまった。あの結城がそこまで心配するとは思ってなかったし部員全員も同じことを思ったのか結城をガン見していた。
「ふぇ?…いや、本当だけどさ。どうした?急に」
「部長、すいませんが今日休んでもいいですか?明日必ず参加しますから」
「え?大丈夫だけど…」
「ありがとうございます。失礼します」
結城はそう言って音楽室を足早に出ていった。山西達部員全員が唖然としてる中で川田だけが喋る余裕があるのかみんなの疑問を代弁するように
「結城と佐藤ってどういう関係だ?」
「…いや、知らねーな…でも結城があんなに焦ってるの久しぶりに見た気がする」
山西はそう言って頭を切り替えた。
「ってそんなことより練習しねーと駄目だろ!ほら、みんな自分の練習場所にいって各自始めてろ」
山西がそう言うとみんなが我に帰ったように自分の荷物を持って移動を始めた。山西はそれを見てから移動しようとすると一本のメールが届いた。結城からだった。その内容は
[ようくんの家はどこにありますか?教えてもらってもいいですか?]
「あいつ、なんも知らないで飛び出してったのかよ………ん?ようくんって耀太のことだよね?」
山西は結城の呼び方に疑問を覚えながら家の住所と目印を細かく伝えてからケータイを閉じた。それから荷物を持って移動を始めたときに考え事をしながら歩いていた。
(後で耀太にでも聞いてみるか、、みんなの予想通り付き合い始めたかもだしな…羨ましい限りだぜ)
~その頃~
結城は山西先輩からのメールを確認して耀太の家に向かっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
普通の人にとっては近いかもしれないが、結城にとって長く感じられた。早く行きたいと思えば思うほど、少しの距離が長く感じられた。それから何分か走って何とか耀太の家に着いた。
「ここだよね?ようくんの家って」
結城はそう言ってからインターホンを鳴らした。すると扉が開くと
「どちら様ですか?」
耀太の家から顔を出したのは一人の女の子だった。
「えっと、ようくんと同じ部活の結城愛奈っていいます。ようくんは居ますか?」
「えっと、、居るんですけど…ちょっと待ってください。」
そう言うと女の子は走って家のなかに入っていった。すると
「…まな?なんでここにいるの?」
耀太が出てきた。少し寂しそうな顔をしていて元気が無さそうだった。結城はそんな耀太を見て
「今大丈夫かな?少し話がしたいんだけど…」
「あ、大丈夫ですよ?その前にちょっと親に言うんで」
耀太はそう言うと中に入っていった。そして少し経った後にまた出てきて。
「大丈夫だそうです。上がっていいですよ?」
「ありがとね?お邪魔します」
結城が家にはいるといきなり耀太の親から質問攻めにされたが耀太はそんな親を奥に押しやってから自分の部屋に案内した。
「えっと…今日はなんで来たんです?それよりどうやってここに?」
「ようくんと話がしたかったの。山西先輩にようくんの家教えてもらって急いできたんだ」
「そうだったんですか…それで話って?」
俺は少し怯えたように聞いた。どうみてもまなは怒っているとわかった。少し言葉にトゲがありちょっと怖かった。
「山西先輩から聞いたけどなんで自主練習してないの?あんなにやる気だったじゃん…なんで?」
「……」
「教えてよ!私にも言えないことなの?」
「違う!…そうじゃないんだ。」
「じゃあなに?教えて?」
俺は少し言葉を濁したが、まなに言われたら言うしかないと思った。
「俺はさ、昔は音楽に興味なかったんだ…小学校の頃からボクシングしててさ、喧嘩ばっかりしてた時期だってあった。でもそんなんじゃダメだって思ってるときに叔父さんからトランペットをプレゼントされたんだ。喧嘩しない様にって言われたから、でも俺は人を殴った。悪いやつだってわかるけど殴っていいわけないのに」
「…確かに殴ったのは悪いと思うけど、許せなかったんだよね?ならしょうがないよ。私は少し嬉しかったよ?見て見ぬふりしないでちゃんと注意したんだから」
俺はそれを聞いて泣きそうになった。ずっと嫌われたと思っていた。俺はあまり怒らなくて喧嘩なんてしない人だと思われてると、幻滅されたと思っていたから。優しい言葉をかけられて嬉しかったから
「だから大丈夫だよ?ね?私はようくんのことを嫌いになんてならないからね?」
「ありがとう。まな」
俺たちはそのあと、ずっと話していた。昔のことや色んなことを相手に知ってほしくて。そのあとは夕御飯を食べていってもらった。そのときずっと親が根掘り葉掘り聞くのでうんざりしていたが楽しく食べれて幸せだった。




