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「結城先輩?あのボッーとしてなんかあったんすか?」
「え?佐藤くんどうして?」
「いや、今部活中ですけど…」
俺は結城先輩に声をかけた。案の定結城先輩はボッーとしていたらしく部活中だということが頭から抜けていたらしい。まぁ、初めて部長の仕事をしたからだと思うけど
「愛奈?大丈夫?無理しちゃダメだよ?」
「双葉ちゃん。大丈夫、ごめんね?今からちゃんとするから」
結城先輩はそう言うと自分の頬を叩いて楽器を構えた。俺はなんだか不安になりながら演奏に集中した。
「それじゃあ、今日はここまでにします!明日は三者面談ないので最初からいるけど…何か言いたいことあったらちゃんと言うように」
部長がそう言うとみんな片付けを初めた。俺はすぐに片付けを終えると結城先輩の元に向かった。なんだかボッーとしてたしもし何かあったらいつでも手伝えるように
「結城先輩?大丈夫ですか?持ちますよ」
「え?佐藤くんは片付け終わったの?」
「はい!結城先輩が心配だったので急いで終わらせましたよ」
「え?そ、そうなんだ。ありがとね?」
「いえいえ、任せてください!それと、明日は朝練止めときましょう。しっかり休んでください」
俺はそう言うと結城先輩のトランペット等の重いものを持って片付けを始めた。
(結城先輩ならこっそり練習するだろうし先回りしてみるか)
~次の日~
俺は7時に学校に来て教室に荷物を置いた。そして窓から昇降口を見ると結城先輩がキョロキョロしながら入ってきた。どうやら俺が居ないか確認しているらしい。さすがにちょっと怒ったので音楽室に先回りした…するとやはり
「結城先輩?今日は休んでくださいって言いましたよね?」
俺がそう言うと結城先輩はビックリしたように肩を震わせて
「えっと…佐藤くん?えへへ、早いね?どうしたの?」
「結城先輩が練習しに早く来るんじゃないかって思ったんで早めに来てたんですよ」
「う…気づいてたの?」
「そりゃあ結城先輩のこといつも見てますからね!ちょっとした変化ならすぐにわかりますよ!はっはっはっ」
俺はこの時気づいてなかった…朝になるまで気づかなかったがこれってかなりヤバイやつの発言である。すると結城先輩は顔を赤くして一言だけ
「さ、佐藤くんのエッチ!」
と言うと結城先輩は準備室に荷物を置いて走っていってしまった。俺はなんでかそのときわからずにずっと首を傾げていた…そしてショックを受けながら教室に戻ると
「耀太!おはよう!ってなにその顔?お前昨日から変わりすぎだぞ」
「なんだ山西先輩っすか…はぁぁぁ」
「お前それ喧嘩売ってるのか?そうなのか?おい!」
「ちょっとショックを受けてるので黙ってください」
俺はそう言って自分の席に座って頭を机にくっつけていた。もう嫌われたと思った。
「耀太?なんかあったの?大丈夫か?おーい」ベシベシ
「叩かないでください。落ち込んでるって察してくださいよ」
「察してるけどさ、なにあったの?」
俺は渋々山西先輩に話した。二人で練習していることは黙ってただ無理してると思って様子を見に行ったと言い自分と結城先輩の会話を伝えると
「それさ、遠回しに僕はストーカーです!って言ってるようなもんだからな?」
「なんでそうなるんすか?」
「仮に俺がお前に[耀太のこといつも見てますからね!ちょっとした変化ならすぐにわかりますよ!]と言ったらどう思う?」
「うぇ、ストーカーかよって思いますね。あとそんなに俺のこと好きなのホモじゃん気色悪いだから変な人たちに好かれるんですよって思いますね」
「お前喧嘩売ってんな?買ってやるよ!表出ろこのくそ変態野郎!」
山西先輩が怒りはじめたので一応謝っておいた。
「すんません。半分くらい冗談です。」
「ならいいけどよ、、ちなみに今のはお前が結城に言ったのと同じ台詞だからな?」
「え?」
俺は自分の朝の言動を振り返ってみて青ざめていた…確かに言った。これはもう告白したと言ってもいいぐらいの言葉だと思うと泣きそうになりながら
「じゃあ俺はフラれたのか…ははは、はははは」
「まだそう決まった訳じゃないけどいきなり言われたら引くよ」
「終わった…俺もう退部する」
「え?マジで?そんな程度でやめんなよ!今日は部活休みだし弁解しに行ってこい!」
「…弁解してもダメだったら辞めるんで報告します」
俺はこのあと授業を受けたが一切記憶がなく気がついたら放課後になっていた。
~放課後~
俺は居るか分からないが結城先輩の居るであろう音楽室に足を運んだ。それはもう重い足取りで
「結城先輩?居ますか?」
「…え?佐藤くん?」
そこには椅子に座っている結城先輩が居た。だがその手には愛用のトランペットは無く
「あれ?練習しないんですか?」
「あ、うん。今日は佐藤くんに大切な話があって…」
俺はその場で言いたいことを察しすぐに土下座を決行した。不甲斐なくても幻滅されてもいいから誤解を解きたくて必死だった。
「ごめんなさいごめんなさい…朝のは違うんです!決して下心とかではなく、心配していただけなんです!」
俺は必死だった。許してもらえるならなんだってすると固く誓って…謝り続けた。
「えっと…佐藤くん?朝のことは大丈夫だから、ね?頭を上げて椅子に座ろ?」
「え?…許していただけるのですか?結城先輩?」
「うん。ごめんね?私もいきなり逃げ出しちゃって」
「いえ、元々は俺が原因なので大丈夫です。それでその、話っていったい?」
俺は恐る恐る聞くと結城先輩はにっこりと笑った。その姿は夕日が差していつもの何倍も可愛く綺麗で、そして儚い感じがした。俺はこの光景を一生忘れないだろうと思った。
「あのね…私は」