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「あれ?先輩なにしてるんすか?ここ1年の教室ですけど…」
「ん?知ってるけど?」
教室に入ると何故か山西先輩が居た。なんで居るのかはめんどくさいので軽くスルーしてもう一つの疑問を言った。…いや、聞かなきゃ絶対いけないことだ。
「なんで俺の席で俺宛の手紙を読んでそれを握り潰してんすか?納得のいく説明をどうぞ」
「理由か?そんなの一つだ!何故お前にはラブレターが来るのかっということを知りたくてな…俺は変なのばっかなのに」
山西先輩は鬼の形相で俺を見て話した。ちなみに山西先輩は他校からもラブレターをもらうほど吹奏楽界では有名人である。貰うものがほとんどストーカーのような重いものだけど。
「昨日は原稿用紙50枚分の思いが綴られた手紙。その前は嫌な予感しかしない手作りクッキー…もうこりごりだ。」
「あ、、まぁ、それは災難でしたね…でも俺のラブレター見る必要はなくないっすか?」
「いや、何故お前だけ普通の貰えるのか気になって研究しようかと」
「とりあえず!もうすぐ時間なので帰ってください!目立って居心地悪いので」
俺はそう言って山西先輩を教室から追い出した。すると周りの女子がキャーキャー言うのですごくめんどくさくなった。だかそんな気持ちもすぐに消えた…
「奥に大好きな大好きな結城先輩がこっちを見て」
俺は先輩の頭を思いっきり殴った。
「このやろう!変なアフレコ付けんなよ。」
「先輩を殴るとはどういうことだ!?」
そうして朝は最悪な気分で向かえた。その後の授業のことはぼんやりとしか覚えていない。それはいつものことだからどうでもいいが
~放課後~
俺は音楽準備室に部活の道具を取りに来た。自前のトランペットだ。中学からずっと使い続けて手に馴染んでいる。それを取りにSHR終了後に急いで来たのだ。
「あれ?鍵が空いてる?俺より先に誰か来てるのか?」
そう思いながら空けるとそこに居たのは一人でトランペットを吹いている結城先輩が立っていた。髪が風に揺られながら静かに目を閉じて吹いていた。俺はその音を聞き入っていた。その場所だけ時が止まったように
「…あれ?佐藤くん居たの?早いね。」
「え?あ、はい!早く練習がしたくて」
「ふふふ、その気持ちちょっとわかるかも。早く演奏したいって思うんだよねー。」
「結城先輩もそうなんですか?」
俺はちょっと嬉しくなった。好きな人と同じ気持ちであることがこんなに幸せなんて思わなかった。早く来たかいがあったと思う。
「うん。でもやっぱり一人じゃ寂しくて…もっと皆で演奏する方が楽しいのかなって思うんだ。」
「一人じゃ寂しいですよね…ならこれからは俺と一緒に練習しませんか?部活前とか自主練とかに。それなら寂しくないと思いますよ?」
「佐藤くんは優しいね。ならお願いしちゃうね?」
「は、はい!」
俺はとても嬉しかった。憧れの結城先輩と二人で練習するって約束もできたし本当に嬉しい。朝は最悪だったけど一気に吹っ飛んだ気分だった。
~少し前の話~
「ちょっと相談に乗ってもらってもいいかな?双葉ちゃん」
「え?急にどうしたの?愛奈?なんかあったの?」
彼女は米川 双葉ちゃん。私と同じ高校2年生で幼なじみ。吹奏楽部に所属していて指揮者をしている。楽器はそれなりに出来るみたいだけど指揮者の方が好きらしい。
「あのさ、双葉ちゃんって佐藤くんと仲がいいんだよね?」
「佐藤?あー、1年の耀太のこと?…仲がいいと言うか中学同じでパートリーダーだったからね」
「そうなんだ。…あのね、佐藤くんって私のこと嫌いなのかなって思ってさ。なんか避けられてるって気がして」
「え?避けられてる?あいつから?」
双葉は心底驚いたような顔になり急に笑いだした。
「ないないない。アイツに限って避けるとかねー…てかなんでそんなに不安そうなの?」
「え?そ、それは、その、、」
「もしかして佐藤のこと好きなの!?嘘でしょ?」
双葉がそう言うと愛奈は顔を真っ赤にしてモジモジし始めた。
(これ私が男だったら完全に落ちてるなぁ。流石は学校のアイドル…恐るべし)
「双葉ちゃん聞いてる?」
「え?なに?なんか言った?」
「だから、このことは内密にしてほしいなって…ダメかな?」
「私は別に構わないけどそれでいいの?告白とかしないの?」
そう言うと愛奈は真っ赤になって普段じゃ考えられないくらい大きな声で
「そんなの無理だよ!佐藤くんにフラれたら私泣いちゃうし部活に顔出せなくなるもん」
「愛奈は可愛いんだからフラれるわけないっしょ」
「そんなことないよー、、双葉ちゃんの方がスタイルいいし絶対佐藤くん好きそうじゃん」
ちなみに愛奈の身長は155㎝で双葉は170㎝で佐藤耀太は168㎝である。耀太が小さいわけではなく双葉が大きいのだ。
「アイツ前に自分より背が小さい方が好きって言ってたし私は範囲に入ってないから大丈夫だって」
「うう、そうかなぁ?でも告白は出来ないよぉ」
愛奈はその場で泣いてしまった。
(こんなに可愛ければ大丈夫だと思うけどなぁ…後で耀太にも聞いてみるか。多分両思いだろうけど…はぁぁ)
双葉ため息をついて愛奈を泣き止ませようと席を立った。
早くも第一話の続きを出させていただきました。今回はちょこっと結城先輩の可愛らしい一面と山西先輩のことが分かる話です。毎週土日に投稿出来たらと思います。正直こんなの普通じゃありえねぇって思う人も多いかと思いますがみなさんが楽しめたら幸いです。それでは、また来週お会いできることを楽しみにしています。