予想外の休暇
今、ぼく達の船は波の穏やかな入り江に避難している
外洋に出てすぐに海が荒れた…
50M足らずのクルーザーなど、荒れた海では木の葉以下だと分かった
神の加護があるので沈みこそしないが、まるでシェイカーでかき混ぜられている気分だった
すぐに具合の悪くなったホムラとマリアを、子供たちと異界居住区に避難させた
しばらくは無理して航行していたが、船ではなく乗っている人間に限界が来て
近場の入り江で嵐をやり過ごすことにした・・・
「まあ、急ぐ旅でもないし海上生活でも楽しもうか」
この船はゴーレム船で乗組員を必要としない
この世界には、まだ正確な地図がないので進路など細かな指示が必要だが、
何時かは学習して目的地を指定するだけで行けるようになるらしい
要らなくなった乗組員のスペースは居住施設に充てた
内装は豪華さより居住性を重視した
豪華にしたところで、子供たちに破壊されるのが見えている・・・
唯一豪華にしたのはリビング 小さなカウンターバーを設置した
小さなうさぎさんがたまに来てグラスを傾けている
日本人として絶対にはずせない家族用の和室二部屋はつなげると、屋形船の気分を味わえる優れものだ
クランのメンバーを呼んで、宴会をしながら川下りとかもいいかもしれない
そして最大の目玉は、最上層の露天のジャグジー
いつか風呂につかりながら流氷がみたいなぁ・・・
「マサキさん 何か釣れましたか?」
船の最後尾で釣り糸を垂れるぼくに、ホムラが熱いコーヒーを差し出してくる
「釣れないね… コーヒーありがとう」
「ほどほどにしてくださいね 風邪引いちゃだめですよ」
朝から釣りを始めて 何もつれない・・・
最初、付き合ってくれていた子供たちも今は和室でこたつに入り、アイスを食べているそうだ
こたつでアイスはうまいよなぁ・・・
「…しかし、五日もここで足止めを食うとはな」
「たまにはいいじゃないですか 秋山でキノコ狩りとかもっと長かったですよ」
「セレア様とマリアさんは?」
「セレアさんはリビングでアルと談笑中、マリアさんは小夜さんと王都に買い物に行きました」
火鉢を抱えながら海を眺めているのは意外と落ち着く
でも、何時までもこうしていてもなぁ・・・
明日は周りの陸地に上陸してみようかな
なんて考えていたら、魚が釣れた
サケみたいなヤツ
ホムラに見せたら、捌いて刺身にしてくれた
綺麗な白身だった
味は・・・まんま、サケ
そういえばサケは白身で、食べる餌の色素のおかげで赤いんだった
この世界のサケのエサは赤くないのだろうか?
次はサンマの刺身が食べたいな・・・




