家族旅行に行こう
子供が生まれて五年たった
「「とーたん」」
犬耳の長男ユウキと銀髪赤眼の次女ヒナタがこちらに駆けてくる
ぼくは屈んで二人を抱き上げると
「二人で遊んでたのか?」
「ねーたんとツキヨもいるよ」
ユウキが公園の中を指さす
ヒナタはぼくにしがみ付くので忙しいのか話を聞いていない…
ツキヨと言うのは、三年前に生まれた二男 小夜の子供
後、去年生まれたリーアと言う、うさ耳の三女がいる
「とーちゃーん」
向こうのベンチでツキヨをひざの上に乗せたエウリアが手を振っている
「エウ 子守させて悪いな」
「ん? お母さんたちは忙しいから仕方ないよ
それにユウキやヒナタは手がかからないから大丈夫」
「そういえば、リーアはどうした?」
「ホムラ母さんが背負って家事してるよ」
「ふーん…」
ユウキとヒナタをおろし、エウリアの横に腰を下ろす
チビ二人はツキヨを連れて、砂場で何か作り始めた
公園のベンチから、異界居住区を見回す
現在、居住区はもとからあったぼくの屋敷を中心に十数軒の家が立ち並び 小さな村の様になっている
見た目は現代日本の地方新興住宅地…
商業施設・娯楽施設、生活インフラも充実させたので、外界に出なくても生活できるようになった
実際、うちの子達は外に出たことが一度もない
「…エウ そろそろまた旅に出ようと思うんだけどどう思う?」
「どうしたの急に?」
「クランの運営も安定したし、新しい拠点を増やしたいんだ
なにより、チビどもにこの世界を見せてやりたい」
「…要するに、いつもの放浪癖の発作が出たんだね」
「うん…」
「まあ 良いんじゃないの?…というかよく、五年も我慢したよねw」
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「ご主人様、エウリア様 行ってらっしゃいませ」
サーシャがにこやかに送り出してくれる
王都の事務所を出て通りに出る
「とーちゃん とりあえず、最初の目的地は?」
小さなリュックを背負って、並んで歩くエウリアが聞いてくる
「まず東に進んで、帝国に行こうと思う」
「え?帝国って戦争中でしょ?危なくない?」
「先日、終戦したそうだよ 帝国の負けだって…
だから、現在どんな状況か、確認に行くんだ」
あのバカ勇者がどうなったか気になるしな…
東門への通りは、なぜか閑散としていた…
「門を出て、しばらく歩いたら車を出して、ホムラさんとチビどもを呼ぶからな」
「うん わかった 久しぶりの旅、たのしみだね」
…なんだろう 違和感を感じる
識別をかけながら周りを見回す…
人狩りのチンピラ数人に囲まれてるな…目当てはエウリアか…
「エウ 門まで走るぞ 来い」
エウリアの手をつかんで全力で走る
「え?とうちゃん、いきなりどうしたの?」
街中で、人狩りが襲ってくるのか…
相変わらず、この世界は危険なままだな
…この世界の神として悪人は少し減らしとくか
「エウ こっちだ」
路地に駆け込む
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「…エウ 街中で火蜥蜴の召喚は危ないぞ?」
「父ちゃんだって、街中でサブマシンガン乱射しちゃだめだよ」
二人が立ち去った後には、性別のわからない焼死体が五体転がっていた…
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