異世界で独立生活
「念願の一人暮らしが異世界とは…」
隼がボソッとつぶやく
「一人じゃないだろ?ぼくを省くな!」
颯太と隼のふたりは、これからの自分達の住処になるアパートの前にいた
間取りは2階建て3DK
「風呂付がよかったけど、家賃が3倍以上するんだよな…」
「風呂は寮で借りればいいだろ 徒歩5分くらいだし…」
ドアのカギを開け中に入ると、少しカビ臭い
「隼 とりあえず全部窓を開けて空気入れ替えよう」
「そうだな それから必要なものを書き出すか 掃除道具もないし」
二人で各部屋を見て回り、買い出しに街に出る
「とりあえず、雑貨屋に行って皿とか雑用品を買おう」
颯太が提案する
「…雑貨屋、何処にあるのかわかるか?」
「わからん とりあえず、商店街に行けばわかるだろ」
「商店街ってどっちだ?」
「…クランの事務所に行って聞くか?」
「だな…」
ニクマンのクラン事務所は、領主のムラヤ伯爵の邸宅敷地を間借りしている
高級住宅街だけあって、通りに人影は少ない
「「おはよう」エリスちゃん」
「おはようございます 今日はお二人とも、お休みでは?」
「いろいろ、日用品を買い揃えたいんだけど道が分らなくて…」
「なるほど すいませんが仕事中でご案内できないので地図を書きますね」
「「ありがとう」」
地図を受け取り、街に繰り出す
「なあ…」
隼がとっぜん耳打ちしてくる
「なんだよ?」
「あのエリスちゃん… 奴隷らしいぜ」
「みたいだな それがどうした?」
「俺らも、買わねえ?家事してくれる娘、欲しくないか?」
「あのなあ… ちなみに、あのエリスちゃん 白金貨一枚、一千万円だって」
「まじか?…誰に聞いたんだ?」
「本人… 値段を聞いたとき、彼女が一番びっくりしたって…」
「あはは… でもそれって彼女の器量と能力のせいだろ?普通の子ならもっと安くないか?」
「…やけに奴隷にこだわるな?」
「異世界に来たら奴隷は男のロマンだろ?」
隼が力説する
「そうかなあ… まあ、見に行くくらいイイか…」
「いらっしゃいませ はぐれ雲の方たちですね」
商館の入り口に立つ筋肉ダルマに恭しく告げられる
「はい?どうして…」
「左肩の刺繍を拝見して…」
羽織っているジャケットの左肩には、布地と同色の糸で紋章が刺繍されている
「今、主人を呼んでまいります しばしお待ちを」
しばらく待つと商会長が出てくる
彼はこのニクマンで唯一、奴隷売買を公式に許可されている人物
領主の伯爵は人身売買に否定的だが、どんなに治政・治安に注力しても犯罪者や破産者は出るものであり、その救済処理として奴隷制度は必要だった
「いらっしゃいませ マサキ様よりお話はお聞きしております 幸い、ご要望に該当するものが多数おりますのでご自由にお選びください」
「要望ですか?」
「はい 年齢は十代中盤から二十代前半の家事全般をこなせる者と…」
「あと、できれば女の子が…」
隼が付け加える
「あっはは 失礼 大丈夫、わかっておりますよ」
豪華な家具が並ぶ部屋に通され
颯太たちが入ってきた反対のドアから、全裸の少女が五人入ってくる
全員、真っ赤い顔をして目に涙を浮かべ震えている…
「他にもおりますが、とりあえず見た目の良い能力の高い者を入れました」
「…あの、何か着てもらえませんか?見れないんですけど…」
全員、貫頭衣のようなものを着せられる
一人ずつ簡単な質問をし、鑑定をした結果
四番目の一番小柄な少女を選んだ
髪量が異常に多い気がするが、見た目も可愛らしいし性格も明るく実直で良い
「では、このドワーフのリノでよろしいですね?」
「ご主人様、よろしくお願いします… って、どちらがご主人様ですか?」
じゃんけんで決める
「じゃあ勝ったので俺がご主人様という事で」
隼が嬉しそうに手をあげる
「では、改めましてご主人様、よろしくお願いします 颯太様も」
「彼女を連れ帰りたいので、服を着せていただけませんか?」
颯太が店主に言うと
「準備できております 御代はクランの方からお支払いいただきますので…」
入ってきたドアから連れ出されるリノ
「…ちなみにおいくらですか?」
「リノが白金貨1枚と大金貨2枚、衣装が大銀貨3枚ですね」
「一千二百三万円…」
「なんでも、「彼女はクランの職員として雇うからお金は気にするな」とマサキ様が…」
ゴシックなメイド服を着たリノが出てくる
「おっ、似合うじゃないか」
隼が嬉しそうに言う
「じゃ、帰ろうか…」
市場で食材を購入し、3人で静かな高級住宅地の通りを歩く
「昼ご飯食べたら、掃除とか手伝ってもらうから まだ引っ越したばっかりなんだ」
颯太が言うと
「はい お任せください」
と答えたリノに、隼が
「でも、ドワーフってもっと毛むくじゃらで樽みたいな人たちだと思ってたよw」
「男の人たちはそうですよ 女は髪の毛が多くて背が低いくらいで人種と変りません」
「「髪の毛?」」
そういえば…下はつるつるだったなと思いだし、鼻血が流れる颯太と隼…
「わあ、ご主人様たち鼻血が!いきなりどうしたんですか?」
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