ある冬の日
粉雪の舞う草原をロバが曳く馬車が進んでいく
「ミルファちゃん おちゃどうぞ」
プ○キュアの絵柄の水筒のコップに注いだ熱いお茶が差し出される
「おう ありがとう…って エウリア、お前車内に入れ 風邪ひくぞ」
このハーフエルフの幼女は、学校が冬期休暇に入ったとかで毎日遊びに来る
俺の横に座り足をパタパタさせながらお菓子を食べている
「んー 大丈夫 服一杯着てるから寒くない」
確かに幼女はモコモコになっている
シートヒーターや風を防ぐ魔法障壁もあるし大丈夫か…
「ミルファ様 御者替わりましょうか?」
室内から、事務娘のサーシャから声をかけられた
彼女たちも今日は休みらしい
「いいよ お前も今日は休みなんだろ のんびりしろ あとな…」
「なんでしょう?」
「俺のことを様付で呼ぶな 俺はお前の雇い主や主人じゃねえ 呼び捨てでいい」
「はい ミルファ」
しばらく三人で世間話をしながら進んでいく
サーシャは農民の出で不作で生活が立ち行かなくなり、家族のために身売りしたという
奴隷になったときは絶望しかなかったが、おっちゃんに買われ以前より遥に良い生活が出来ているらしい
賃金ももらえ、少ないながらも実家に仕送りも出来ているそうだ
「ぷちん」
「うわ エウリア、くしゃみしやがった!」
「エウリア様 こっちに来なさい ミルファ、この子お風呂に入れてきます」
「ああ、頼む 風邪なんかひかせたら、アリアがうるせえからな」
はなみずを垂らしたエウリアは連行されていった
陽が傾いてきたので、宿営地に入り夜営の準備を始める
馬車の横のサイドウォーニングを展開し、風よけに四面をシートで被い仮設の厩舎をつくる
デュランダルを入れ、彼の毛をブラッシングして食事と水を準備して一休み
「今日もお疲れ様」
デュランダルの頭を抱え今日の労働をねぎらった
「ただいま 晩御飯貰ってきたよ 生姜焼き丼だってw」
異界居住区に雑用仕事に行っていたカグラが帰ってきた
「今日の晩の担当はおっちゃんか?」
「あと、タケシ君 お味噌汁はお豆腐w」
「異世界の大草原の真ん中で和食か…」
「あんた、ずっと食べたいって言ってたじゃない」
「違和感がすげぇんだよ…」
「あのさ… 金髪、金眼の美少女がどんぶり飯かきこむ方が違和感凄いよ?」
「テメエがこんな身体にしたんだろうが…」
カグラを睨みつける
「じゃあ、あたしお風呂行ってくる」
逃げやがった…
食後の緑茶を飲みながら、外を見ると雪が強くなっている
「厩舎にストーブを焚いた方が良いな」
灯油ストーブを設置していると
《主、ありがとう》
頭の中に声が聞こえた気がした
「おう、きにすんな」
気が付くとデュランダルに返事していた
「じゃあ、俺も風呂行ってくる」
「先に寝てるよ」
「おう、お休み」
いまだに俺は女湯に入れない
他の女の裸が直視できないんだよ 俺、女なのに…
「だれもいませんか~ お邪魔しますぅ」
「なんだ?ミルファ、お前まだ女湯に入れないのか?」
げっ おっちゃんまだ入ってんの?
「仕方ないだろ 中身は男なんだから」
「お前も大変だな…」
二人でゆっくり湯船につかる
「じゃあ、おっちゃん先に上がるな」
「おう、お休み」
ミルファが風呂から出た後
「ヤバ… あと少しで襲う所だった… あいつ用の風呂作ってもらおう…」
ぼくは心に誓うのだった




