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路線馬車の旅

大都市発の乗合馬車だけあって、意外と快適だった


箱形の車内に4人掛けのイスが5列、一番前が進行方向を向き残り4列は対面と言う座席配置


窓は大きめに取られ室内は明るい 窓にはガラスとは違う透明の板状のものがはめられている


乗り心地はサスペンションに板バネが使われ、車輪にはゴムのようなものが巻かれていただけあって、細かな段差を拾うが突上げる感じはない


寒風が吹く草原を、暖かく快適に移動できるだけでも御の字である


料金は片道35㎞、4時間の行程で銀貨5枚(約5000円) 安全と快適さの対価としては安いらしい





「マサキさん 朝ごはんにしましょう」


ホムラが自分の背負っていた小さなリュックから、お弁当箱を取り出す


そういえば、メイドさん総出で何か昨日から作っていた


お弁当の中身は、おにぎりと唐揚げ、卵焼き、タケノコの煮物など


「ありがとう いただくね」


おにぎりを一つとらせてもらう


中身の具はアサリのしぐれ煮 大好物だ 握り加減も素晴らしい


「ホムラさん 美味しいよ」


ホムラが本当にうれしそうに微笑む


「あら、変った食べ物ね?なんて言うの?」


対座に座る停留所で話しかけてこられたご婦人が再び話しかけてきた


「おにぎりと言います お米を炊いて持ち運びしやすく握ったモノです おひとついかがですか?」


ホムラが答え、おにぎりを一つ勧める


お米は、こちらの世界でも簡単に手に入るが、長粒種でぱさぱさのためおにぎりと言う文化はないみたい


「いただくわ この黒い紙みたいなやつは剥がすのかしら?」


「それは、海苔と言う海藻をシート状に乾燥させたもので、そのまま食べられます 美味しいですよ」


「そうなの?」


恐る恐る口に運び、一口食べる


突然、目を見開き


「おいしいわ この海苔と言うものの磯の風味とかすかな塩味、口に入れるとほろほろ崩れる絶妙な握り加減 素晴らしいわ でもこの中に入ってるモノは何かしら?」


「おかかですね カツオと言う魚を発酵乾燥燻製を繰り返して木の様に固くした鰹節を 薄く削って醤油で和えたものです」


たぶん間違ってないと思うけど… うろ覚えなのでまったく自信がない


海苔はごくまれに見かけるが、鰹節はみたことがない この世界にあるのだろうか?


ご婦人はおにぎりを食べ終えると


「世の中、まだまだ知らない美味しい食べ物が沢山あるのね いい経験が出来たわ ありがとう 可愛いお嫁さん」


ホムラを軽くハグして、御礼を言ってくれた


ご婦人が 二年後、おにぎりの研究を続けファーストフードとして売りだし大ヒット ひと財産を築くのはまた別の話である


ホムラとご婦人はその後も世間話などに花を咲かせている


ぼくはお腹もいっぱいになったので、そのまま居眠りすることにした





「マサキさん 宿営地に着いたので30分ほどトイレ休憩だそうです」


ホムラに起こされる


トイレ休憩か…


そういえば、ぼくたち男はその辺ですればいいんだが、女性はどうするんだと思っていたら、御者と御者助手が四方を囲むように布を張り簡易トイレを造っていた


至れり尽くせりだな コレで5000円なら確かに安い


馬車に戻ると暖かい紅茶も出てきた これは御者助手の御嬢さんのサービスの様だけど… バスガイドさんみたいなものなのだろうか?


助手の御嬢さんに話を聞くと、いろいろしないと生き残れないそうだ 時間的にルーズなのでサービス次第で平気で一本遅らせる客が多いらしい


しばらくすると、簡易トイレの片づけが終わり 馬車が再出発した





最近、クラン始動などで慌ただしい毎日を送っていたが、こうやってゆっくり時が流れていくのを満喫するのが一番だな


折角、異世界に来たんだから 前世の様に無理して頑張る必要はないかもしれない


春のクラン慰安旅行は大型観光馬車でも借りて、花見にでも行こうかな




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