温泉に行こう
事務仕事や雑用をエリスたちに押し付けたので、ぼくは少し生活に余裕ができた
「ホムラさん また、旅に出よう 温泉に行こう」
小夜やミーアの目が冷たい… おっさんがまたわけのわからないことを言い出したよ という目だ
「マサキさん 温泉なんてどこにあるか知ってるの?」
「…知らない 小夜は知らないか?」
「知らないから聞いてるんでしょ…」
使えないヤツだ
「温泉ですか?剣聖の里からさらに北上した所にありますよ」
「ホントに?」
「ええ 御師様がたまに出かけられていたので間違いありません」
シオ、でかした 誉めてやろう
「場所はわかる?」
「途中で里によって、御師様に聞けばいいと思います」
「…なるほど そうだ、剣聖様も誘って案内してもらおう」
「冬場は、雪が深くて行くのが大変だと仰っていたので喜ばれますよ」
シオが嬉しそうにほほ笑む なんだかんだ言ってこの子は剣聖様のことが好きだよな
「ご主人様 私達は通常業務があるのでご同行できません ホムラ様とお二人でごゆっくりしてきてください」
久しぶりにホムラと二人旅もいいかもしれない ミーアが気を使ってくれているのだろう
「そうね ホムラ様は少し休んだ方が良いと思う ゆっくり、身体を休めてきてください」
小夜もミーアに同意してくれる
「行ってらっしゃい 美味しいお土産よろしくね」
アルフェリオはブレないな…
4大危険生物たちと話し合った結果
冬の間はそんなに忙しくないので、ぼく達が居なくても大丈夫という事になった
まあ、何時でも連絡できるしキャンピングカーは持っていくから、「異界居住区」ですぐに戻ってこられるし大丈夫だろ
次はホムラと旅の計画を立てる
色々考えたが時間があるので「ローカル線で行く乗合馬車の旅」にした
ノンビリ観光しながら、乗合馬車を乗り継いで剣聖の里まで行き、そこから先はキャンピングカーで行くことにする
出発は、準備も考えて明後日朝の便に決めた
出発の日、二人で馬車の停留所?に徒歩で向かう
ホムラはいつものメイド服でなく、ごく一般的な街娘の旅装束
小さなリュックを背負い、ぼくの袖をつかんでトコトコついてくる
ヤバい… 殺人的にカワイイ
誰がこのカワイイ生き物が何時でもこの世界を滅ぼせる危険生物だと思うだろうか…
抱きしめて、その辺の宿屋に駆け込みたくなる… この旅は意外と苦行かもしれない
ズンダの馬車停は早朝の客で意外と混んでいた
通勤の足として使われているのだろうか… サラリーマン時代を思い出す
「マサキさん?どうしたんですか?」
「ホムラさん なんでもないよ 旅行楽しみだね」
彼女は満面の笑みで
「はいっ♪」
ぼくの腕に抱きついてきた
周りの男どもの目が怖い
後に並んでいたご婦人に声をかけられる
「可愛らしいお嬢さんね 貴方の奥さまかしら?」
「いえ そうだっ「ハイっ 新婚旅行なんですっ」」
ホ、ホムラさん 何言ってんの?
さらにホムラがぎゅっと身体を押し付けてきた
「あらあら おアツいわねw」
これはヤバい 男どもの目から羨望が消えて殺意になった
やっとやってきた馬車に慌てて逃げ込んだ
4頭立て20人は乗れる隣村行の路線馬車に乗りこみ、ぼくたち二人の旅が始まる