表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/98

盗賊の悲劇

評価、ブックマークありがとうございます

「隊長、あいつ等遅いですね」


おかしい 


商隊を襲撃しに行った連中が、もう明け方だというのに帰ってこない


まさか、返り討ちに会って全滅したのか?


だが、奴等は粗野だが帝国でも選りすぐりの精鋭だ


商隊の護衛をするレベルの冒険者ごときに全滅させられるとは考えられない


・・・もしかして、護衛に高ランクの冒険者が混じっていたのか?


だとすると、生き残りからこのアジトの場所が特定される可能性が高い・・・


高レベルの精神支配の魔法に人は抗えない


「おい、すぐにここを引き払うぞ 撤収の準備を・・・」


ドサッ


目の前で、ついさっきまで普通に話していた部下が急に倒れた


なんだ・・・これ・・・は・・・




あつい


身体にあたる太陽の熱に、意識がはっきりしてくる


「よお、気が付いたか?気分はどうだ?」


私を覗き込む男が話しかけてくる


誰だ、コイツ? いくら考えても一度も会ったことがない


奴の後にはローブを纏いフードを目深にかぶった連中が五人・・・


小柄な体格から全員女か?


とりあえず距離を取らなくては・・・


なぜか、身体が全く言う事を聞かない 指先ひとつ動かない


「お・・まえ だれだ?」


「ぼく?名も無い正義の味方かな・・・ああ、あんたは言わなくていいよ 帝国特殊部隊隊長さん」


「どうして、それを・・・?」


「あんたの手下が全部話してくれたよ(笑)」


「部下たちはどうした?」


「どっちの事?商隊を襲ってた方なら、悪いけどうちの娘たちが加減できなくて 二、三人残して残念なことに・・・ あとで注意しとくから許してよ」


後にいた者たちがフードを下ろす 全員、年端もいかない少女達・・・


「バカな・・・」


「生き残りは、襲ってた商隊に預けてきたよ アジトにいた連中はアンタには見えないだろうけど、周りにアンタと同じ状態で転がってる」


「これまでか・・・ぐふっ」


「あっ このおっさん、舌噛みやがった・・・ アルフェリオ、治してやって」


「はあい」


後にいた、白いローブをまとった犬獣人の少女が私に手をかざす


「いたいのいたいのとんでけ~♪」


少女のかざした手が淡く光り、噛み切ったはずの舌が完治する


ばかな・・・ 体の欠損を治療する呪文はないはずだ・・・


「ホムラさん また自殺されると面倒くさいから、もう口も麻痺させていいよ」


「はい」


男のすぐ後ろにいた銀髪の少女が、赤い目で私を睨むと口も動かせなくなる


全身が恐怖に支配され、失禁してしまった


「隊長さん、自殺しようなんてムシがよすぎるよ あんた等には一週間身体がマヒする呪いをかけた 炎天下で一週間生き延びるか 誰かに見つけてもらえれば助かるよ」


この地で炎天下で一週間も生きていられるわけがない


通りかかった者に助けてもらうしか・・・


男は私に向かって冷たい笑いを浮かべる


「ここは街道から1キロは離れてる スゴイ恥ずかしがり屋さんがお花を摘みに来るといいな(笑)」


ふ、ふざけるな


「じゃあな 1週間頑張れよ」


男は、少女たちを引き連れ去って行った・・・


待て 頼む許してくれ こんなところで無様にノタレ死ぬなんて嫌だ・・・




偽盗賊を砂漠に捨ててオアシスに戻ったぼくは


「さて、お嬢さん 名前を聞かせてもらえるかな」


目の前にちょこんと座るハーフエルフの少女に問いかける


治療のあとが痛々しい


そういえば、生き残りの中にこの子を殴っていたやつがいたな


あとでボコボコにしてこよう


「・・・エウリア」


「お歳は?」


「・・・六さい」


ホムラに耳打ちする


「ホムラさん エルフって長寿じゃないの?」


「成人するまではほとんど他人種と変りませんよ この子はハーフですし・・・」


そんなものなのか・・・


「お家はどこだかわかる?」


「・・・わかんない」


詳しく聞くと物心ついたときには両親と行商の生活だったらしい


両親は多分・・・ あとであいつらもう一発づつ殴りに行ってこよう


「エウリアさん これどうぞ」


アリア様が少女の前にオレンジジュースと苺のショートケーキを置く


ぼくの方をじっと見ているので


「とっても甘くておいしいよ 食べてくれるとオジサンうれしいな」


エウリアが食べ始めるのを見て席を外す


彼女の隣にはアリア様が座り、甲斐甲斐しく面倒を見ている


「ホムラさん あの子どうしようか?次の街で施設に預ける?」


「私は反対です この国で亜人でしかもハーフとなるとどんな迫害を受けるか・・・」


「そうか・・・ ホムラさん エウリアに聞いてみないと分からないけど もう一人増えてもいいかな?」


「経済的には問題ありませんよ この件でもかなりの収入が得られると思いますから」


盗賊からの戦利品は出所のはっきりしているものは返還(有料)しないといけないが、貨幣など所有のはっきりしないものは討伐者か発見者の物になるそうだ


エウリアの所に戻り


「エウリア? エウリアのご両親か故郷が見つかるまで、おじちゃんと一緒に来ないか?」


彼女はしばらく考えた後


「・・・おじちゃんと一緒に行く」


「そうか よろしくな ぼくはマサキ この銀髪のお姉ちゃんはホムラ でお隣のお姉さんは・・・」


「アリアです よろしくねエウリアさん」


アリア様が愛おしそうにエウリアを抱きしめる


そういえば、前に妹がほしかったって言ってたな・・・




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ