表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/98

旅の方針変更とトラブル

春先のすこし冷たい朝の空気と朝日に照らされながら朝食をとる


きょうのメニューは白飯と豆腐の味噌汁,鮭の切り身・・・


向かいの席に座るメイド服の銀髪の少女が味噌汁を飲みながら


 「少し味が薄いかしら?どうですか?」


と、ぼくに聞いてくる


 「イヤ、ちょうどいいと思うよ おいしい」


 「そうですか よかった」


少女がうれしそうに微笑む


ごく普通の日本の朝の情景が繰り広げられるココは


異世界の大草原、魔獣が闊歩する危険地帯である



食事がすみ、身支度を終えるともう一度テーブルを挟んで向かい合って座る


 「さて、ホムラさんや」


 「残ったご飯はおにぎりにしておきますね」


 「ありがとう・・・ とそれは置いておいて、今日からの計画を立てよう」


 「え?セン・ベイの町に行くんじゃないんですか?」


 「もちろん、当面の目標はそうだけど・・・」


 「けど?」


 「衣食住の安定が確保された今、急ぐ必要はないんじゃないかと思うんだ」


 「まあ、そうですね」


 「はっきり言うと、異世界を見て回りたい 観光がしたい」


 「いいんじゃないですか?」


 「イイの?」


 「良いですよ 貴方の人生です 好きにしていいですよ で、どうしますか?」


 「街道沿いに進もうと思うんだ 歩いてる人たちの生活も見れるし


 小さな集落もあるんだろ?」


 「じゃあ、東に50㎞ほど行った所に、街道があるのでそこを目指しましょう」


 「うん!じゃあ、しゅっぱーつ」


走り出した車は、緑の大地に二本の轍を残して進んでいく


 「すごいな、この車 地面が柔らかいのにスタックする気配がないよ」


助手席のホムラは楽しそうに流れる景色を見ている


 「歩くより全然早いです もっと早く運転できるって言ってください」


かわいく頬を膨らませてホムラが抗議してくる


 「・・・ホムラさんが車があるって言わなかったんだけど」


というと、ホムラは顔をそらし


 「そうでした・・・」


と言い、また流れる風景を楽しそうに見始める


 「・・・まあ、いいか」



二時間ほど走ると街道に合流した


思ったより、往来が激しい


危ないので、他の馬車と同じくらいの速度で走る


当然だがすれ違う人達が必ず、車を凝視する


というか、すれ違う馬車に乗る商人や貴族と思われる人物の目が怖い


明らかに、羨望というか妬みの感情がうかがえる


 「やっぱり目立つな・・・」


 「マサキさん、気づいてます?」


ホムラが怪訝な顔をしてドアミラーを見つめてる


 「後ろの馬車、明らかについてこようとしてますよ」


 「イヤだなあ、トラブルの匂いしかしないよ・・・」


 「さて、そろそろお昼です 後ろで準備しますね」


と言ってホムラは立ち上がると後ろに歩いていく


 「・・・まあ、不確かなことで気を重くしても仕方ないか」


 「お昼は焼きそばです 


 出来たら言うので近場の野営地でお昼にしましょう」


野営地というのは街道沿いに20㎞ごとに空き地と井戸が用意されている


普通は夜使うもので昼間はすいている


ホムラから出来上がりを告げられたので近場の野営地の隅に止める


 「どうしてこんな隅に止めたんですか?」


 「真ん中に止めて四方を囲まれると逃げられなくなるだろ・・・」


 「なるほど・・・ あっ、横と後ろをふさがれましたね」


窓から、二台の馬車が幅寄せして横と後ろをふさぐのが見える


 「ホムラさん、無視だよ 無視!」


 「はい」


気にせず、食事を進めているとドアをノックする音がする・・・


ホムラさんが箸をおき、口周りを拭いてドアに向かうといきなり開ける


 「食事時に訪問とは失礼な方ですね どちらさまですか?」


明らかに不機嫌な態度で仁王立ちして応対するホムラさん・・・


 「ハ、ハイエルフ・・・」


眼を見開いてフリーズする訪問者 だが、すぐに再起動して


 「失礼しました ご主人様はおられますか?」


 「マサキさんに何か御用ですか?」


 「ご相談があるのですが」


 「・・・代わります」


ホムラさんが下がると車の中を覗き込む訪問者


見た目は商人のようだけど、目つきがおかしい


 「室内をじろじろ見るのはやめてください ご相談とはなんですか?」


商人は姿勢を正すと


 「単刀直入に言うと、この車を譲っていただきたい 


 もちろん、それなりの対価を支払います」


 「・・・無理ですね 譲れるわけないでしょう」


 「それと、先ほどのハイエルフの娘を頂けませんか?」


 「・・・本気で、言ってんの?」


 「もちろん あの器量なら素晴らしい値段で貴族様に売れます」


 「・・・ケンカ売ってるのか?とっとと帰れ クズが!」


しまった つい逆上してしまった


しかし、商人の男は


 「あなたこそ、わたしの商談を断ったことをきっと後悔しますよ」


と不気味に笑う 背筋がぞっとしたが


 「・・・そうかよ その時を楽しみにしてるよ じゃあな」


と言って、思い切りドアを閉める 


外でまだ騒いでいるようだが知らん


 「・・・なんだありゃ」


 「マサキさん・・・ あの男の職業鑑定してみました?」


 「えーっと、商人・詐欺師・奴隷商・マフィアのボス・大量殺人者・・・


 ヒドイなこれは・・・ まずかったかな・・・」


ちょっと血の気が引く


 「拙くはないですが・・・マサキさんがあんなに怒るところはじめてみました


 ちょっと、怖かったですよ」


 「車はともかく、ホムラさんを売れたとかありえないだろ」


 「マサキさん・・・」


ホムラが頬を赤くしてうつむく


 「大事な仲間だ 当然だろ」


 「・・・そうですね」


なんで、ぼくを睨んでるのホムラさん・・・

 

 「あっそうだ そういえば高いところで女の子が仁王立ちしちゃだめだよ」


 「・・・どうしてですか?」


不思議そうに首を傾げるホムラさん


 「下のあのおっさんから、ぱんつ丸見えだよ・・・」


 「・・・ぎゃあああ」


真っ赤い顔をして座り込むホムラ


だから、どうしてぼくを涙目で睨むの?


 「さて、残りを食べて出発しよう」


 「ううう・・・」


だから、睨むの止めなさいって・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ