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砂漠

王都からセン・ベイへ200㎞ほど街道を南下すると、岩山が散在する砂漠地帯に入る


前回の行程では冬だったため、さほど過酷ではなかった


しかし、今回は真夏の行程 日中の気温は50℃を超える


夜間に、一気に越えてしまおうかと思ったが、小さな集団はかなり高確率で盗賊に襲撃を受けるらしい


面倒事を避けるため、日中移動することにした


編成は中央にキャンピングカー その前後にミーア、シオの4輪バギー 屋根の上の見張り台にぼくとホムラが乗り、周囲を警戒する体制にした


子供たちは車内で小夜先生と言葉の勉強中 


「マサキさん、冷たいお茶どうぞ」


ぼくの後ろに座っているホムラが、マグカップに麦茶を注いで渡してくれる


「ホムラさん、ありがとう キミも飲みなよ」


「ハイ ありがとうございます」


日よけにシートを上に張ったが、風そのものが熱いのであまり関係がない 空気が乾燥しているのが救い


出発して2時間ほどたつ


ぼく達はまだいいが、直射日光が当たるミーアとシオはそろそろ休ませないと危ないかもしれない


「アルフェリオ 一度車を停めて」


「はあい」


徐々にスピードを落とし路肩に停まる


「ご主人様、何かありましたか?」


前を走っていたミーアが慌てて走ってくる


シオも来たので


「随伴はやめよう バギーは直射日光が当たるから熱中症が危ない キミ等は車内で休んでくれ」


「それなら、私達が・・・」


シオが何か言おうとするが、ホムラの方を見てビクッとなっていうのをやめた・・・


横を見るとオニがいた


「そ、それではご主人様 休憩させていただきます」


「うん、一時間ほどしたら交代して」


「はい」


車に入って行く二人の会話が聞こえる


「ミーアさん、ホムラ様どうして怒ってるんですか?」


「ホムラ様は、ご主人様と久しぶりに二人きりになれたのに邪魔をするなとお怒りなの・・・」


え?そうなの?そういえば確かにうれしそうだ・・・


このくそ暑いのに、ぼくみたいなむさ苦しいヤツと一緒にいたいなんて変わった娘だ・・・


「アルフェリオ 出発していいよ」


「ご主人様は休憩しないの?」


「一時間ほどしたら、ミーアたちと替わるから」


「あまり、無理しないでね」




「タケシくん、そろそろお昼だから上のミーアたちを呼んでくれるかい」


「へーい」


彼はドアを開けると上を見て呼ぶ


「ミーアさん、シオさんご飯だよ」


二人が汗でべたべたになって、車に入ってきた


「ミーア、シオ 準備にもう少しかかるから 先にお風呂に入っておいで」


「でも、午後からの見張りがありますから・・・」


「あと30㎞ほどだから、見張りはもういいよ 昼からはのんびり休んで」


「はい 判りました それでは入浴してきます」


「おつかれさま」


ふと、外気温計を見ると58℃もある・・・


おいおい、あいつ等よく生きてたな・・・


「アルフェリオ 車をその辺の岩山の陰に停めよう 日が傾くまで休憩だ」


手ごろな洞窟を発見したので、車をバックで入れる


中は28℃ほどで外に比べれば随分涼しい


かなり奥までつながっているようだ・・・


後で少し調べてみよう




異界居住区の食堂で昼食の冷やし中華をすすりながら


「タケシくん、休憩の後でドローンを飛ばしてこの洞窟のオクを調べてみよう」


「面白そうすね すぐ準備しますよ」


彼は、急いで冷やし中華をすすると食堂を飛び出して行った




「うーん、上手いもんだ」


車のテレビに映し出されるドローンから送られてくる映像を見ながら、思わず感嘆の声を上げてしまった


「タケシくん 昔からこういうのだけは得意なんです」


向かいの席に座るヒトミくんが、外でドローンを操作するタケシくんを見ながらうれしそうに言う


しばらく見ていると、奥の方が明るくなってきた


「なにもなかったね 無駄足踏ませちゃったか」


画面がホワイトアウトし、ドローンが外に出たことを知らせてくる


露出が合うと、高度を取り出口近辺の映像を送ってきた


直径200mほどの空間に緑が広がり、中央にそれなりの大きさのきれいな水をたたえる泉がある


「この岩山、空洞になってて中がオアシスになってるのか・・・ ん?人が住んでるな」


泉のほとりにかなりの数のテントが見える


外のタケシくんに


「あの集落に近づいてみて」


と伝える


ドローンは、高度を下げ茂みに入ると木々の間を縫うように接近していく・・・


送ってきた映像は、むさ苦しい男たちが子供を殴っているものだった


「マサキさん、バッテリーがやばいんで一回戻します」


タケシくんに了解のサインを出すと


「どうおもう?」


「この辺を荒らしてる盗賊のアジトですね 潰しますか?」


ホムラが無表情で言う


「とりあえず、あの子供は救出したいな 情報がほしい タケシくんにもう一回飛んでもらうか・・・」


「ご主人様、私が偵察してきます」


リビングで同じものを見ていたはずのミーアがフル装備で出てきた


その後ろに、同じく戦闘装備のシオが続く


「シオ、貴女は待機してなさい 偵察だけなら私一人の方が安全です」


「ですが・・・」


シオが何か言おうとする


「シオ、お前は待機だ ミーア、とりあえず敵の数と子供の位置を調べてきてくれ」


「わかりました」


「ミーア 一応言っとくけど絶対に命令以外のことはするなよ たとえば一人で子供を助け出すとか・・・」


「・・・了解しました」


ミーアは一瞬ビックリした表情を浮かべたが、すぐに無表情になり了承した


逆にシオがほっとした顔をする


ミーアが車から駆け出していき、すぐにみえなくなってしまった


脳裏に盗賊どもが子供をリンチにする映像が思い出される


「ふざけやがって・・・ あいつ等、生きてることを後悔させてやる」


自分の口から出た、驚くほど冷酷な言葉に唖然とした



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