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愚兄

兄様に、王都に来ているのがばれてしまった


王都にいるのは、二番目の兄様・・・


お父様のコネで王城の事務方をしているそうです


はっきり言うと凡人、お父様の権威をかさにきて威張り散らす嫌な人


お父様やお母様、上の兄様姉様は、私に自由に生きていいと仰ってくれているのに、あの人は私を出世のコマとしか考えておらず、顔を合わせるたびに自分の利益になる人間との見合いを進めてきます


先ほど、私に用があるので顔を出すように使者を送ってきました


私が宿ではなく馬車で暮らしているのを知った使者の、マサキさんを罵倒する言葉はひどかった


ミーアさんや、タケシくんが剣に手をかけると、這う這うの体で逃げ帰っていったけど


「マサキさん、ごめんなさい」


「ん?どうしてアリア様が謝るの?君が悪いわけじゃないでしょ?」


「で、ですが・・・」


「君を狭い車で生活させているのは事実だしね これからは、我慢して宿屋に泊まった方が良いのかもな?」


「そんな意地悪を言わないでください・・・」


一度でもこの馬車で暮らしたら、もう前の生活には戻れません


この旅が終わったらと考えるだけでもゾッとします


・・・マサキさんに嫁げば、ずーーーーっとこの馬車で暮らせるかも なんてことすら考えてしまうほどです


「アリア様?」


「は、はい」


「意地悪とかじゃなくてですね 伯爵様の体裁とかを考えないと拙いんじゃないかと・・・」


「確かにそれはあるかも・・・しれません」


「宿まで車で行きますから、トイレとか使用に耐えられなければ車のを使ってください」


「わかりました・・・」


「宿に泊まった時は、食事も向こうで取ろう 食べ物は普通においしいから、タケシくんヒトミくんも楽しみにしていいよ」




けれど、宿を取る際に問題が発生してしまいました


アルフェリオさんとミーアさんが獣人と言う理由で宿泊を断られたのです


私も抗議しましたが駄目でした


結局、二人は馬車で暮らすことに・・・うらやましい・・・


アルフェリオさんが「プリン、プリン♪」とスキップを踏みながら戻っていくのを見たとき なんか、すごく・・・負けた気がしました




翌日、気は重いですが兄の所に出向くことになりました


同行してくれるのは、マサキさん・ホムラさん・小夜・タケシくん


行先は、実家の王都邸宅です


彼はココで彼の実母である第二夫人とともに暮らしています


彼女は、私の実母第一夫人と非常に折り合いが悪く、今まで数えるほどしか顔を合わせたことがないと母は悲しそうに言っていました


邸宅に着くと、応接室に通されました


しかしなかなか兄が現れません


先触れをタケシくんにお願いしたので急に訪れたというわけではないのですが・・・


「マサキさん、もう帰ろう」


短気な小夜が怒り始めます


「・・・だから付いてくるなと言っただろう?少しは我慢しろ」


そういうマサキさんも、言葉の端々に苛立ちがうかがえます


一時間ほど待っていると、兄が第二夫人を伴ってやっとあらわれました


「兄様、お義母様 お久しぶりです」


私は挨拶をしたけれど、後ろに並ぶ三人は兄を睨みつけて会釈すらしません


タケシくんは、ホムラさんと小夜の方を見て怯えています


当然、プライドだけは高い兄が怒り始めました


「キサマ、挨拶ぐらいしろ 不敬罪で処罰するぞ」


「先にお前が謝罪しろ ぼくは失礼なヤツに下げる頭はない それに偉いのはお前じゃなくて伯爵様だ 勘違いするな」


マサキさんの反論に兄はさらにヒートアップ 罵倒を始めます


横にいる小夜から膨大な魔力が漏れ始めているのすら気づかずに・・・


ああ、この人はこれすら感じ取れないのかと幻滅していると、兄の後ろにいた執事が気付き兄を止めました


私への用と言うのは 案の定、自分の上司との見合いの話でした


50代の貴族の男の妾になれと言うのです


もちろん、丁重にお断りしました


今回の兄の行いは父を激怒させるでしょう


もうこんなことはないと思います


しかし、帰ろうとすると、愚兄がまたやらかしました


身の程知らずにも、ホムラさんを自分の妻にするから置いていけと言うのです


「お前ら、死にたいのか?」


タケシくんが恐怖に震えながら兄の喉元に短剣を突き付けていました


「おい、セバスチャンコイツを殺せ」


執事は首を横に振りながらも、剣を抜きます


その時、それまで黙ってみていた義母が急に立ち上がり、兄を平手打ちしました


「我が子ながら、ここまで愚かだとは・・・ 少年、ご厚意に感謝します」


彼女はホムラさんや小夜の方を見て


「本当に申し訳ありません 後ほどしっかりと謝罪させていただきます 本日はお引き取りください」


そして私の方を見ると


「アリアさん、あなた恐ろしい方たちとお知り合いなのね・・・今日はバカに付き合せて悪かったわ ご苦労様でした」


と言い、マサキさんに頭を下げると兄を引き連れ退出していきました


「・・・それじゃあ、帰ろうか」



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