新たな旅
初夏のさわやかな風が吹き抜ける草原の道を車は進んでいく
王都に向けて一週間ほどの行程
キャンピングカーの上に造った見張り台からは、女の子のはしゃぐ声が聞こえる
「アリア様 落ちないように気を付けて」
彼女は、アリアーナ・ムラヤ15歳 ニクマン領主ムラヤ伯爵が溺愛する彼の末娘だ
「はぁーい」
「ほら、アリア様 叱られたじゃないですか」
小夜のあきれる声が聞こえる
「ごめーん」
なかなか元気なお嬢さんのようだ・・・
あれは一週間前・・・
ギルドに顔を出すと、いきなり受付嬢に呼ばれマスター室に案内された
指名依頼だそうだ
ぼく達は、ミーアたちの頑張りによってBランクに昇格して ノルマはなくなったが指名依頼を受ける義務が発生していた
もちろん断ることはできるが、指名してくるのは信頼関係のある相手であることが多いので断るのは難しい
誰だろうと思ってマスター室に入ると、そこにいたのは伯爵様と見覚えのない女の子だった
伯爵が女の子を紹介してくれる
彼女は彼の娘で、つい先日まで他国に留学していたそうだ
アリアの容姿は身長はアルフェリオ位 顔は整ってはいるが美人というよりはかわいい感じ
髪型はかるくウェーブのかかった金髪をポニーテールにしている
体型はなかなかのグラマーさん 胸はホムラより気持ち小さいくらい
アリアの紹介が終わると 依頼の内容が説明される
伯爵家には15歳になると、見聞を広めるために身分を隠して国内を一周する決まりがある
まあ要するに諸国漫遊の旅に出なくてはいけないらしい 水戸○門か・・・
伯爵は護衛に信頼できる家臣を付けようとしたのだが、彼女が断固拒否
家臣では特別扱いを受けて民の暮らしを見ることができないというのだ
それは一理あるなと思いつつ聞いていたが、それとぼくらに何の関係があるんだと思い
「それとぼくらの指名に何の関係が?」
「そこでだ、この子の護衛をキミたちに頼みたい」
「は?いや、ぼくたちじゃなくても他にもっと腕の立つ連中がいるでしょう?」
なんでも、信頼出来る冒険者を考えたとき、最初に思いついたのがぼくたちだったらしい・・・
「ぼく達がアリアーナ様をさらって逃げたらとか思わないんですか?」
すると伯爵はあきれた顔をして
「君たちにそんなことが出来る訳ないだろう(笑)」
「いやいや、わかりませんよ」
「私は人を見る目には自信があってね マサキ君、君がどうしようもないお人好しで小心者だと分かっている そんな君が悪事を働くわけがないだろう」
伯爵・・・ぼく怒っていいですか・・・?
「受けてくれないかね?この子も君たちのことを話したら気に入ったようでね」
「女の子がいっぱいで楽しい旅行が出来そうです たのしみw」
もうぼくたちが受けることが彼女の中で決まっているらしい
「何とか頼むよ」
伯爵とギルドマスターが頭を下げてくる
ずるいよ・・・ もう断れないじゃないか・・・
条件を出して受け入れてもらう
1)旅行中は一切特別扱いしない
2)自分の身の回りのことは自分でやる
3)こちらの指示には絶対従ってもらう
彼女は快諾した
本当に判ってるのかな?
「それではお願いします」
彼女が頭を下げた後
伯爵父娘は去って行った
その後、ギルドマスターに彼女の評判を聞いてみたが快活で人懐っこい良い子らしい
まあ、お得意様の悪口を言うやつはいないよな 話半分に聞いておこう
約束の出立の日 つまり今朝なのだが伯爵邸に迎えに行くと、門のところに沢山の荷物に囲まれた彼女がいた
「おはようございます あれ?アリアーナ様おひっこしですか?」
「おはようございます マサキさん、旅行の荷物ですよ」
「そんなに積めませんよ 着替えとどうしてもないと困るものに減らしてください」
「ええーっこれでも随分減らしたんですよ」
「寝所とか食器、食料品はこちらで準備してますから・・・ 着替えも下着と普段着数枚で十分です」
1時間ほどのすったもんだの結果
でっかいぬいぐるみと枕を抱えた平均的な町娘の格好をしたアリアと、旅行カバンひとつにまとめた
車に乗せる前にアリアに、車の中で何を見ても違和感を感じない暗示と、見たことを他言しない制約をホムラにかけてもらう
「さ、アリアーナ様 こちらに・・・」
異界居住区の二階奥の空室に案内する
「旅行中はこの部屋をお使いください」
荷物を運びこみ 家電やトイレ、風呂の使い方を一通り教え
一度車外に出て盛大なお見送りを受けたのち出発となった
出発後の車内で軽く自己紹介
アリアが自分のことはアリアと呼べと言うのでそれで通させてもらう
「アリアちゃん、小夜ちゃん ごはんだよー」
アルフェリオが上の二人を呼ぶ
するとまず小夜が飛び降りてくる・・・
まさかと思ってみていたらアリアまでとび降りてきた
ワンピースを胸元までまくり上げて
二人ともミーアにつかまってみっちりオコられていた
アリアはおひるごはんのそうめんを悪戦苦闘して食べ、デザートのプリンを堪能するとまた上に上がっていった
何が楽しいのかわからないが、本人がとても楽しそうだから良いのか・・・
上に行く前にホムラにつかまって 小夜とも共、全身に日焼け止めクリームを塗りこまれてたけど・・・