王都にて
アルフェリオ拉致事件から三日
ぼく達は教団の総本山、王都の大聖堂があった山が見える丘の上にいた
そう、ほんの5分前まで大聖堂はあったのだ
ぼく達の目の前で空から突然落ちてきた火球(隕石?)によって跡形もなく吹き飛んでしまった
「うわぁ たいへんだぁ♪」
「大参事ですね♪」
小夜さん、ホムラさん セリフが棒読みですよ
それにぼく聞いてました 火球が落ちてくる前に小夜が「メテオ」ってつぶやいたのを・・・
その後、砕け散る大聖堂の被害が広がらないように、周りを結界が覆うのも見ましたよ?
「ねえねえ、マサキさん 瓦礫の山なんか見ててもしょうがないから車に戻ろう」
「そうですね 帰ってお茶にしましょう」
「あ、ああ もどろうか・・・」
「ホムラ様 今日のお茶菓子何ですか?」
「今日はお祝いにケーキですよ」
「わー たのしみー」
・・・何のお祝い?
「さて、これで王都での目標は達成したわけだけど・・・」
アルフェリオ、ケーキをホールごと食べるの止めなさい 太るよ・・・
そういえば、三日前の夜に裸を見たけど コイツ無駄なお肉が胸以外 全くついてなかったな・・・
全部、栄養が胸に行ってるのか?
とか考えていると
「マサキさん ひとつ提案があるんですけど」
「はい ホムラさん どうぞ」
「奴隷を買いませんか?」
「どういうこと?」
「まず、この子達に冒険者としての心得や常識を教えられる人がほしいです 私も経験がなくて教えられませんから・・・」
「なるほど・・・」
「あと、情報収集や斥候が出来る人間が必要かと・・・」
「別に奴隷じゃなくても・・・良いんじゃないの?」
「うちは秘密が多いですからいろいろ制約をかけられる奴隷の方が良いと思います」
「おかねはあるの?」
ホムラが耳打ちしてくる
「・・・え?そんなにあるの?」
「食費以外ほとんど使いませんからね・・・」
「・・・わかった ホムラさん、明日買いに行こう」
奴隷として買っても、奴隷として扱わなければいいだけだよな・・・
今、ホムラさんと二人で奴隷商会の前にいる
子供たちには車で大人しく留守番しているように言っておいた
「さて、いくか」
玄関のドアをたたくと中からいかつい男が出てきた
「何か御用ですか?」
その外見からは想像できない紳士な対応をされる
「あの・・・奴隷を購入したいんですけど・・・」
僕たちの身なりを確認した後
「主を呼んでまいります しばしお待ちを・・・」
しばらく待っていると奥から、やせぎすの身なりの良い男が出てきた
簡単な挨拶をした後、予算を伝える
「それなら、大概の奴隷は購入できますね こちらにどうぞ」
一通り、奴隷を見せてもらうが ホムラは布のかけられた人が入るとは思えない小さな檻をずーっと見ている
「ご主人、あの檻は?」
主人がいぶかしそうな顔をした
「あの檻には廃棄処分が決定した者が入っています ご覧になりますか?」
「うん、みせてくれるかな」
主人が掛けられていた布をめくる
中には四肢のない兎人族の少女が入っていた
詳細鑑定をかける
ミーア 24歳 シーフ
元Bクラス冒険者
備考クエストの失敗で四肢と仲間を失った
現在、栄養失調・虚弱・瀕死状態
能力的には問題がないな
ホムラさんを見ると彼女は頷く
「顔がよいので仕入れたのですが・・・この状態ではやはり売れませんでしたよ」
店主が苦笑いを浮かべる
「この子、買うよ いくら?」
「え?購入されるんですか?」
「うん、いくら?」
「本当によろしいのですか?では金貨3枚で如何でしょう?」
人一人が30万円かよ・・・
「奴隷契約はこちらでするから 彼女に着せる服を準備してもらえる?」
お金を支払い 檻の中の彼女を抱き上げる
軽い 四肢が無いせいもあるだろうが骨と皮だけで脂肪とかが全くない 餓死させる気だったのか・・・
「ミーアさんだっけ?君にはうちに来てもらうことになった よろしくね」
「あの・・・私どうなるんですか?」
かすれる様な声で質問してくる
「しばらく、療養してもらって普通に働いてもらうつもりだよ」
「・・・わかりました よろしくお願いします」
彼女にあきらめの表情が浮かぶ ああ、これは勘違いしてるな・・・ まあしかたないか・・・
店を出て車の前に立つ
「これが君の家だ」
外で話していると三人が中から飛び出してきた
「「「おかえりなさい」」」
「この子が今日から仲間になるミーアだよ 仲良くしてやって」
「ミーアちゃん アルフェリオだよ よろしくね」
「小夜です よろしく」
「シオです マサキさん ミーアさんをこちらに」
シオにミーアを渡す
「とりあえず、風呂で綺麗に洗ってやって二階の空き部屋に連れてきてくれ」
「はい」
空き部屋で待っているとシオがタオルで包まれたミーアを抱いてきてベットにやさしく寝かせる
「・・・さっぱりしたかい?」
「はい・・・」
「じゃあ、ぼくは外に出てるからホムラさんあとはよろしくね」
ドアの外で待っていると「うそ・・・」という声の後、嗚咽の声が聞こえる
「ホムラさん 入っていい?」
「どうぞ」
部屋に入ると ベットの上のミーアには両手両足がある
「ホムラさん、おつかれさま」
「四肢は再生しましたが ミーアの体力が落ちていてこれ以上の術は無理です」
「だそうだ しばらく療養に専念してくれるかい?」
「はい ・・・私、ご主人様とホムラ様に永遠の忠誠を誓います 本当にありがとうございます」
「あはは いいよ そんなに気負わなくても お大事に」
ホムラと二人部屋の外に出て
「・・・ホムラさん どんな契約にするの?」
「シオに施した不死術込のモノにします 貴重な人材を些細なことで失うわけにはいきません」
「さて、車に戻ってアルフェリオ達に、ミーアにおかゆとか軽いものを食べさせるように頼むか」




