領主の横暴
小夜がうちのパーティーに入って三ヶ月になった
今、ぼく達はセン・ベイの町で暮らしている
住居は町のはずれの空き地を借りて、そこにキャンピングカーを停めた
「おはよう」
「おはようございます」
「ご主人様おはよお」
アルフェリオが抱き着いてくる
「アルフェリオは今日も元気だな」
「おはよう マサキさん」
小夜はあの森の中の湖以来、「おじさん」とは呼ばなくなった
「小夜は今日もウェイトレスのバイトか?」
「うん 結構お店が忙しいから・・・」
小夜の努力とアルフェリオの教え方がよかったのか、小夜は日常の会話・書き取りに困らないレベルになっている
彼女も冒険者ギルドに加入して、ギルドに紹介してもらったアルバイトを2週間前から始めた
「そうか あまり無理するなよ」
「毎日楽しいし、やりがいもあるから大丈夫」
小夜が笑いながら答える
彼女は感情の起伏も緩やかになり大分落ち着いたと思う
「ぼく達は三人で近くの森に薬草の採集クエストに行ってくる」
「少し、遅くなるかもしれませんがお留守番お願いしますね」
「はい ホムラ様」
小夜もホムラの素性を知って「ホムラ様」と呼び敬語で話すようになった
「小夜ちゃん 急いで帰ってくるからね」
「うん アルさんも無理しないで」
相変わらず、二人は仲がいい
「じゃあ、行ってくる」
「うん マサキさん気を付けて ホムラ様がいらっしゃるから大丈夫だと思うけどw」
「小夜さん、ヒドイ 私もか弱い乙女なのに・・・」
ホムラが泣くふりをする
「あはは・・・ ホムラ様も御気を付けて」
「はい いってきます」
小夜は宵闇の町を走っていた
仕事が少し長引いて遅くなった
それは別によかった
でも彼女は自分がつけられているのに気づいてしまった
「やだ、ストーカー?」
全力で走る
「あと、すこしで家に着く・・・」
しかし、あと数十メートルというところで捕まってしまう
「お嬢さん、貴女の本来の持ち主が会いたいと仰られている 大人しく同行していただきたい」
「いやあ、マサキさんたすけてぇ」
小夜は叫ぶ
「だまれ!」
男は小夜を殴ろうと手を振り上げる
そして、ゴキンと鈍い音が響いた
つぎの瞬間、叫び声をあげたのは男だった
「ぎゃああああああ」
小夜は眼を開ける
男の横には銀髪のメイドが立っていた
メイドのつかむ男の腕はあり得ない方向に曲がっている
「ホムラ様・・・」
「あら、ごめんなさい折れちゃいましたね」
「小夜 だいじょうぶか?」
聞きなれた声を聴いて安堵の気持ちが広がり、目に涙があふれる
「マサキさん こわかった」
恐怖から解放された小夜はぼくにしがみつき泣きじゃくる
「おまえ 小夜ちゃんに何をした?」
アルフェリオが男に歩み寄る
「ま、まて 私はこの町の領主ソウカ男爵の使いの者だ 私に手を出せばただでは済m」
「あっ」
ホムラの声が響く
男はアルフェリオのけりで十数メートルはじけ飛んでいた
車に刎ねられたみたいだな・・・
さらに殴りかかろうとするアルフェリオをホムラが羽交い絞めにして止める
「ホムラさん そいつ生きてる?」
「たぶん・・・」
小夜を連れて車に戻り、あのAランク冒険者に来てもらう
「つまり、小夜を買おうとしていたのはココの領主で、今でも小夜を狙っていると?」
「はい 命が惜しいならあきらめろと忠告したのですが・・・」
横に座るホムラを見ながら冒険者が答える
「・・・できれば、もう少し早く言ってもらえると良かったんだけど・・・」
「すいません 我々もあなた達がこの町にいるのを知らなくて」
「そうか ありがとう こんな夜分に来てもらって申し訳なかったね」
缶ビールの6本パックを渡す
「いえ どうするつもりですか?」
「とりあえず、話し合いかな あとは向こうの出方次第」
「そうですか・・・」
「まあ、最悪逃げればいいしwww」
「マサキさん 男が連れ去られました」
ホムラが耳打ちする
「ふーん さて、男爵様はどう出るかな?」
次の日の朝 キャンピングカーは領兵の大群に取り囲まれていた
「マサキさん、どうします?蹴散らしてきましょうか?」
ホムラが物騒なことを言い出す
「とりあえず」
「とりあえず?」
「朝ごはんにしよう」
「はい 今日はなめこのお味噌汁と出汁巻卵と納豆です」
ノンビリ食後の緑茶を飲んでいると外が騒がしい
「領主様のお召である Eランク冒険者マサキ他3名は至急登城せよ」
なんか、昔の貴族みたいな恰好(ああ、今は中世か)したやつが外で大声を張り上げている
「うるさいなあ 近所迷惑だからそろそろ行くか・・・」
「・・・迷惑をかけてゴメン」
小夜がうつむいて謝ってくる
「お前が悪いわけじゃないだろ 領主のワガママでお前が謝る必要はない」
「でも・・・」
「ぼく達はこの国の領民じゃない 領主の要求に従う必要はないよ」
「そうですよ 最悪、潰せばいいだけですからw」
「ホムラ様 こわい・・・」
「小夜ちゃん 私もあのおじさん蹴っ飛ばしちゃったからもう無関係じゃないよ」
「アルさん・・・」
「さて行くか ホムラさん、もしぼく達に縄をかけようとしたら暴れていいよ 出来るだけ殺さないようにしてね」
「はい 出来るだけ努力します できるだけ・・・」
ホムラがほほ笑む




