信じ難い現実
今、ぼくは葬式に参列している
正確には、ぼくの葬式を呆気にとられながら見ている
確か、街中で突然胸が苦しくなり、意識を失って・・・
どうやらそのまま死んだらしい
「・・・やっぱり太り過ぎがまずかったのかなぁ ダイエットしとけばよかった」
なんて考えていると、突然周りの景色が変わった
周りに無数のろうそくが並び、灯がともる部屋だった
「あ、成仏したのかな・・・ 結構未練とかあるのにな・・・ で、これからどうしたらいいんだろ?」
とか、思いながら足元を見ると・・・
白髪で上品そうなおじいさんがなぜか土下座していた
「申し訳ない 許してくれ」
「・・・えーっと、どういうことでしょう?」
「君の死は、こちらの不手際によるもので本来なら死ぬことはなかったのだ」
「はい?」
「実は、このロウソクは「命の灯」というものでな・・・ 他人の灯と間違えて君の灯を消してしまった のだ」
「・・・ふっ、ふざけんなぁ!今すぐ生き返らせろ!!」
ぼくは老人の襟首をつかんで引き起こし詰め寄る
「すまんが・・・それは出来んのじゃ・・・」
「・・・どうして?」
「あの世界の君の身体は火葬されて無くなってしまった 体がなくては生き返らせることは出来んの だ・・・」
「・・・そういえば、どうしてこんなに謝罪が遅いんだ?」
「・・・実はミスについ先ほど気づいたのじゃ」
ぼくは、全身の力が抜け襟元を放しうずくまると、涙がとまらなくなった
「ぼくだって、まだやりたい事が沢山あったのに・・・ 彼女だって欲しかった 旅もしてみたかった
どうしてくれるんだ!このくそじじい!」
「本当に申し訳ない・・・」
「ちくしょぉおおおお」
「そこでひとつ提案があるのじゃが・・・」
「・・・ナニ?」
「君を前の世界で生き返らせることは出来んが、他の世界でなら蘇生できるのじゃがどうだろう?」
「・・・ほんと?」
「ただ、一つだけ問題があってな・・・」
「問題?」
「あの世界は神のいない世界でな 剣と魔法の世界なんじゃよ・・・」
「ふーん」
「でな、文明は中世で止まっておる 魔獣もおるし治安も非常に悪い」
「えーっ?またすぐ死にそうなんだけど・・・」
「・・・うむ、そうじゃろうなぁ」
「あまりひどい生活もしたくないな・・・」
「そこでだ、君の身の回りの世話と護衛にこの娘をつけよう」
いつのまにか老人の横に巫女姿の少女が立っている
小柄だが腰まで伸びたきれいな銀髪、赤い瞳、整った顔立ちの女の子だ
「生活も前の世界以上のものを保証しよう これでどうじゃ?」
「うーん・・・ それならいいけど・・・」
「よし!きまりじゃな 新たな人生に幸多きことを さらばじゃ」
「ちょっ、ちょっとまだ、聞きたいことが・・・」
「詳しいことや疑問は「ホムラ」に聞くといい」
「ホムラって誰だよ?」
「その娘じゃよ では達者でな」
「おい!こらジイさ・・・」
そして視界がブラックアウトした
こうして、ぼくスガ=マサキ24歳の異世界生活は始まった