ノート晒し 8ページ目
マナはひじで後ろのやつに突きをくらわそうと思ったが、軽くよけられた。
「んんんん、んん!(……放せよ、バカ!)」
後ろのやつが急に離れた。マナはそのとたん、ふらつき、地面に倒れた。体は起こすことができたけど、立てない……。でも立てないマナに対してその人は今のところ何もしてこなそうだった。じーと自分の手をみている。その手から煙が出ている。ジーパンに、プリントのついた半そでの男……。ライドたちよりも普通に見えるけど危険だ……。今のうちに逃げなきゃ……。マナはそう思った。でもその時には遅かった。彼は右の親指と人さし指で丸をつくり、それを口にくわえ「ピュー」と吹いた。
すると見た目は普通だけど、目をギラギラさせている人がいっぱい出てきた。そしていつの間にかマナの周りをとりかこんでしまった。もう逃げ道はない……。
「だれかー助けてー!」
と叫んでみたが、だれも来なかった。
「そんなことをしてもだれも来ない」
とその中の一人の男がいうがはやいが、まわりの人が一気に襲いかかってきた。あぁもうダメ……と思ったが、マナの三十センチ前で止まってしまった。どうやらマナに近づけないらしい。
そういえば、さっきも変なことが……。ダメでもともとやってみるか。
『ふっとべ』と念じてみる。するとマナの周りにいた人全員、十メートルほどふっとんだ。本当にふっとんじゃった……。私って本当に魔法が使えるんだ。でも睡眠薬のせいか、うまく立てないし、それに多勢に無勢。勝てるだろうか。というか生きのびられる?
うわ、目がかすむ。でも目の前の人影はもう起きあがってきている。しかもこりずにまたこっちにきてるし……。『ふっとべ』とまた念じる。そしてまたふっとぶが、前よりも距離が短い。それに一人なんかつぶやいていたような……と思っているうちに目の前にいきなりロープが出てきて、ひとりでにマナをきつくしばりあげた。あいつらにも魔法が使えるやつはいるのだ。
その時、横からわき腹をけられた。顔をしかめるマナ。そしてその横をころころと何かが通り過ぎて、マナの少し手前で止まった。それは赤い笛だった。もしかしてこれ……




