ノート晒し 3ページ目
そしてとうとう今日キレてしまったのだ。もう限界だった。そのとたん、あたりの街は恐怖につつまれた。はげしい揺れがマナを襲う。人は恐怖に叫び声をあげ窓ガラスはくだけ散り、天井が落ちてきた。それがすべて同時におこった。そして気がついた時にはマナはがれきの上に立っていた。学校はがれきの山だった。学校だけではない。みわたすかぎり、がれきの山。どこもこことたいして変わりはない。ただ奇跡的にマナは生きのびた。いやちがう。すべてをがれきの山にしてしまった。あの恐ろしい力が上から落ちてくるものを防ぐバリアのようなものをつくり出し、マナの上に落ちてきた物を周りにとばしたのだ。それで私だけ生き残った。他の人を殺したあの力で自分だけ助かった。いやちがう。もう一人助かった人物がいる。席がとなりだった山田くんだった。マナがつくったバリアに入っていたらしい。おかげでふるえてはいたものの無傷だった。山田くんはマナのほうを向くと
「ば、化け物―」
と言ってどこかへ逃げていった。
マナはひとり、がれきの上でたたずんでいた。今から何をすればいいのだろうと考えた末、家に帰ることに決めた。親が心配だったためである。街には死体がかなりあった。それを見るたび、私は震え、そして余震があいついだ。生きている人もみかけたが、あまりのありさまに生気がない人が多かった。それに道がとおれないところがかなりあり、いつもなら三十分で余裕につくところを五十分ぐらいたって、やっと家にたどりついた。でもこれが家といえるものかマナにはわからなかった。なぜなら家もがれきの山だったから……。グラッとまた余震がきた。ゆれがなかなかとまらない。
「お母さーん」
がれきと化した家のそばまでは来れたけど、それ以上は進めない。ますますゆれがひどくなり、立っていられない。がれきの山が少しくずれる。こういう時どうしたらいい?
「お母さーん」
もう一度叫んでみる。反応なし。ただ余震でがれきのくずれる音だけが聞こえる。
『落ち着け、落ち着け』と自分に言いきかせてみたけど、こんな時に落ち着ける人なんているだろうか?
「あぁどうか余震よ、止まってください」
もう仕方ない。こういう時は神だのみって、えっ……。本当に止まっちゃった。しかもその前にボンっと大きい音が聞こえたような……。もしかして神様出現!?おそるおそるマナは音のした方向にふり向いた。そこには神様でなく、十名ほどの黒い服をまとった人と青い軍服のようなものを着た男性が一人立っていた。黒い服の人たちがなにやら聞きなれない言葉でつぶやいている。あの人たち……何者?でも余震は止まったし、まっいいか。とにかくお母さんを助けなきゃと思い、マナは立ち上がろうとした。でも立ち上がれない。それどころか手や頭、他いろいろまったく動かせなくなっていたのだ。