ノート晒し 16ページ目
「マナ様、入ります」
と返事も聞かずにイリンダが部屋に入ってきた。
「やはりここにいましたか。姫様、勝手に脱走しないでください。今は勉強の時間だというのに。さぁ戻りましょう」
えっ、マジュってお姫様だったのー!?
「いやだ。帰りたくなんかない」
マジュは今にも泣き出しそうな顔をしている。
「姫様、そんな泣き顔で、この私を騙そうなんて百年早いですよ」
チェッとマジュは舌打ちをすると
「少しぐらいいいじゃない」
と言った。顔がいつの間にか元に戻っている。
「姫様はその少しが非常に長いんです。さぁ帰りますよ」
とイリンダに叱られると、マジュはしかめっつらをすると
「マナ伏せて」
とマナに向かって叫び、イリンダに向けて右手をかざした。マナが伏せた瞬間、耳をつんざくような音をたて、大爆発が部屋の中で起こった。伏せたマナの体に少しがれきが降ってきた。灰色の煙が部屋に充満している。
「あぁ、なんということを……。マナ様大丈夫ですか」
とイリンダはマナを抱き起した。そして少しずつ灰色の煙が晴れていくうちにベランダで人影を発見した。どうやらベランダから外に飛び降りるようだ……ってここ何階か知らないけど、めちゃくちゃ高かったんじゃなかったっけ……とそう気づいてマナとイリンダがベランダにかけよった時にはもうマジュは飛び降りていた。マジュがどんどん小さくなっていく。このままではマジュが地面へぶつかってしまう……。
もうダメだとマナがあきらめかけた時だった。オレンジと黄色の何かがマジュの上で広がった。楕円形で派手なあれは、パラグライダー。っていうかどこにそんなもの持ってたんだ?そしてそのパラグライダーはマジュを乗せて町のほうに飛んでいく。
だが突然空中で止まったかと思うと、どんどんこちらに戻ってきた。でも後ろ向きで戻ってきているようだし、目をこらしてみれば、なんとなく暴れているようでどこか様子がおかしい。隣のイリンダを見ると、マジュのほうをじーと見ている。そしてマジュは何かに後ろから引っ張られるようにしてベランダの前の空中で止まった。
「姫様、あなたという人は……。部屋を爆発させて、しかも脱走までして。いい加減にしてください」
たぶんイリンダの方が爆発しそうだとマナは思った。マジュは後ろから引っ張られてきたので、後ろを向いて話さなくてはならなかった
「お説教はあとで聞くから、さっさとあたしを降ろして。この格好結構つらいんだから」
「わかりました。今すぐ降ろしてあげましょう」