午前中は浄化の練習をしましょう。
デュラがオロオロと俺とアルフの顔を見やる。
俺はニッコリ笑って両手でバツを作ってやった。
あの後、俺は羞恥心を捨て……られはしなかったがかなり我慢して説明した。
俺の世界では基本自分で出来ることは自分でやると。といってもこちらの常識やらなんやらは分からず、かといって否定する気もないが、とにかく、風呂では、自分で、体を洗うことを強調して伝えた。
ちなみに初日は護り人の皆とも一緒に入ったから何もなかったようだ。
そういえばデュラが世話やこうとしてくれてたなぁ。…と思ったが俺はスルーし背中だけお互いに洗いっこしただけだったし。俺の家は結構お風呂屋さんに行くことも多かった為皆と入ることに抵抗はない。まぁやたらと3人が構ってこようとした時は恥ずかしかったけど。
……まぁ分かってはいるんだよ。
あんな汗でベトベトで、土で汚れてたらそのままに出来ないってことは。むしろ当然の対応だよ。その為の執事さんだし。
……これで侍女さんだったら俺寝込んでたわ。
うん、レオン君で本当良かったわぁ。
けどな、やっぱり恥ずかしいもんは恥ずかしい。起きたんだからそこでやめてほしかった。ってことも伝えたらレオンは泣きそうな顔で謝ってきた。あ、そんな表情出来るのね…じゃねーよ。大丈夫、大丈夫!そんなので俺の執事辞めたりさせないから落ち着きなさい!
ってなやりとりがありました。
俺が回想から戻ると何故かショックを受けているデュラ君。おい、だから何故そんな顔をするのかね!?俺は君に何もしてないでしょーよ!
ちなみにアルフを何度見てもダメだぜ。あれは治させない。つか青アザぐらいになれば分かるけど少し赤いだけじゃんか!
鍛えてるだけあって俺の動きに反射で避けようとしたくらいだ。俺が名前を呼んだから留まったけど、俺はどれだけ鍛えれば青アザを作ってやれるのかね?ん?
「あ、あああの!?今日はどうしますか?」
だから何でデュラが怯えんだよ。少しショックを受けながらも話し合う。
ーーーーー
何をするといってもぶっちゃけまだ選択肢は少ない。まだ三日目だしな。浄化は最優先。なので毎日午前中は浄化です。
ってなわけで訓練所到着。
あ、アルフは寝てます。寝れば頬も治るんじゃないですかね!?ちきしょー!!
「ーーーーー♪」
とりあえず私怨は置いといて、今日は回数ではなく長く歌うことに専念する。昨日までは浮くことに慣れる為と回数だったけど別に長く歌っても魔力も体力も精神も使うんだよな!!
ってなわけで歌ったままです。ちなみに最初は祈りポーズだったので浮いて驚いてバランス崩したんだ。二回目からは基本スタイル?ただ直立してます。
……そういえば人により浄化にかかる時間は違うって言ってたけどそれって浄化の強さなんかね??
ふと気になったので浄化をやめ着地をしっかり決める。ふふん、もう転ばないぜ。
満足してそばにいたじいちゃんに尋ねる。
「じいちゃん」
「どうしました、クー様」
「浄化の力の調節って出来るのかな?」
毎回異世界の神子様は……ってことで名前を希望しきちんと返してくれたことに頷いて疑問を口にする。(様づけなしは断固拒否された)
「浄化の力の調節……ですか?」
「あれ?分かりにくいか?えぇと……ほら、例えば魔物がいて火球だすじゃん。それとたき火の為の火球って威力が違うだろ?」
魔物は倒す為にぶつけるから威力が必要だが、たき火は違う。同じ火をだしたらそもそも薪が木っ端みじんだ。
「なるほど。……しかし 申し訳ないのですが私はそのような意識をしたことがありません。範囲ばかりを気にしていました」
「そっか。たくさん浄化できるし、遠くからなら怪我もしないもんな」
ふむ。意識はしてないってことはもとの魔力量で浄化にかかる時間は決まってたんかね。
「じゃあ少し意識してやってみるよ」
変わるかは分からないけどもし変えられるなら強い魔物の浄化時間も早くなるかもしれないもんな。
「ーーーーー♪」
さらに深く深く眠らせるイメージ。
大丈夫。
俺も一緒にいるよ。
ほら。
抱きしめてあげる。
あったかいだろ。
だから、
大丈夫だよ。
自然と手が、足が動く。
歌に合わせて、緩やかに。
俺は円の中で舞ってた。
「……………かはっ!」
しかしそれは少しの間だけだった。声が続かなかったのだ。
「クー!?」
「「クー様!?」」
慌てて皆がかけよってくる。大丈夫だと、擦れた声で返した。
「これ魔力もだけど体力めちゃくちゃ使うわ」
いつもの倍疲れる。ますます体力つけなきゃなぁ。……精神力はどうすれば強くなんの?
この後は休憩になった。
うーん、しばらくはもう少し弱めをイメージして練習かね。今後の課題だな。