表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/23

邪気の祓い方を覚えましょう。

「クー、今日はこれで終わりにしてノンビリしてもいいんだよ?」



アルフの言葉に首を降る。出来るだけ早く力になりたい。それだけ多くの人を助けられる力があるというのなら早く使えるようになりたかった。



「分かった。じゃあ神子の所にいこうか」



アルフに連れられて来たのは城の訓練所の一つだ。

教えてくれるのはおじいちゃん神子。もう現場は無理だから教える方になったそうだ。

神子は基本病気とか寿命で亡くなってる。魔物の所為で亡くなってる人も0ではないが、少ない。どうして分かるかって?訓練所の壁にな、名前が彫ってあんのよ。何か書いてあるなぁって近づいたらね、デュラが丁寧に説明してくれた。ちなみに刻まれてるのは魔物の所為で亡くなった神子だ。



「異世界の神子様の名前がそこに刻まれることは一生ありませんよ」



ただ壁を見ることしか出来ない俺の背に掛かった声。

これまた内容が重い。

そうなのだ。デュラは俺を安心させる為に話してくれたのだが、つまりはそういうことである。今まで異世界の神子が魔物に殺されたことはない。そして神子自体が魔物に殺された人が少ない。その少ないという比較対象はそれ以外の人達。

大事な話しなのは分かる。分かるが君達は俺を動けなくさせたいのかと問いたい。

ゴクリと唾を飲み込んだ俺にいつの間にかそばに来ていたおじいちゃん神子が、ホッホと笑って俺の頭を撫でた。



「私達が言いたいのは安心して私達に守られなさいということですよ」



そしてにっこりと笑ってデュラを見る。



「真実を話すことは大切なことです。ですが、あなた達護り人は異世界の神子の心も守らなくてはならないのですよ」



今度はゴクリとデュラが喉を鳴らして頷いた。それを見た俺はじいちゃんに親指を思わずたててしまった。

すまん。だがじっちゃんの言葉をよく胸に刻み込んでおいてくれたまえ!!



ーーーーー



「ギシャァァァ!!」



檻に入れられて運ばれてきたのは二匹のゴブリンだ。といっても俺がゲームでよく見たやつではない。何というか、もう、とにかく怖い。ゲームのは多少可愛いというかまぁ、初期の方のモンスターというイメージもあるからかもだけど…目の前にいるゴブリンは牙を剥き出しにして今にも俺達を食いちぎろうと手を檻の隙間からのばしている。鋭い爪は当たったらただでは済まないだろう。あってるのは身長ぐらいじゃないかな、うん。



「クー、俺の後ろに。決して前に出るな」



エイトが俺の前で構える。両手がドラゴン形態のものに変わっていた。俺は頷いて、何も出来ないが、というか見てなきゃいけないんだけどいつでも逃げられるよう構える。エイトの前にはデュラが錫杖を構えて待機。檻の近くにアルフとじいちゃんが立つ。

アルフはじいちゃんを見て頷くといつのまに抜いたのか、隙間から剣を突き刺した。ゴブリンはその速さに追いつけなかった。というより見えなかったのだろう。引き抜かれて始めて自身の身に穴が空いていることに気付き、そこに触れた所で…。


消えた。



「……え!?」



同時に黒い煙りというかもや?みたいなのがそこに残る。



「これが邪気です。これをそのままにしておくとまたゴブリンが現れます。強さにより魔物が再度生まれる時間は違いますが、これを浄化しない限り永遠とゴブリンが現れるということです」


「……へぇ」


「また明日見てみるといいでしょう。ゴブリンがまた現れます」



さて、と続けるじいちゃんにアルフは頷きもう一体のゴブリンに剣を突き刺す。同じように黒…邪気が現れた。

じいちゃんが息を大きく吸う。



「異世界の神子様、これが邪気を祓う唯一の方法、浄化です」






「ーーーーー」






「……っ」



それは歌だった。何の歌かは分からないが、とても温かく、泣きそうになる。

歌が始まるとじいちゃんを中心にして地面に光の円が現れた。しかもじいちゃん、少し浮いてる。

円には複雑な紋様が描かれておりそれはじいちゃんの歌に応えるように光を増した。それが徐々に広がり邪気が範囲に入る。

邪気は光り輝いたかと思うと天に登るようにして消えていった。



「これが今の私の限界です」



半径1メートルくらい?少しそれよりも短いかもだが若い頃はこの5倍くらいが射程範囲だったそうだ。

倒しても浄化しないと意味がない為神子と騎士でグループを組んで討伐が基本となる。

それでも神子は足らない為強い魔物を討伐するグループに優先して神子が組み込まれる。

ゴブリン等弱い魔物は基本毎日騎士のみで討伐する。また次の日に現れるが仕方ない。



「では異世界の神子様もやってみましょう」



じいちゃんの言葉に頷くが俺はさっきの歌を歌える気がしない事を伝える。

するとじいちゃんは笑ってそれは関係ないと言った。

基本魔法はイメージだそうだ。炎の球をだしたければそれをイメージして魔力を込める。イメージしやすいように火球よ!と言葉にしているだけでゲームとかの呪文とは違うようだ。ちなみにそのイメージがすごいほど魔力は使うし威力も強いとのこと。

浄化も同じで邪気を綺麗にして天に還すようなイメージをしているらしい。ちなみに神子にはその時頭に歌が流れてそれを口ずさんでいるそうだ。なので人により歌も違うとのこと。

まぁとりあえずやってみなさいと言われました。確かにいくら説明されてもやってみないとこれは理解出来そうにないな!



「天に還すのか…」



確かにじいちゃんの歌は優しくて温かく邪気を包み込んでるようだったなぁ。

小さい子をあやすような感じか?


弟が赤ちゃんだった頃を思い出す。母さんがトイレ入ってて出てこれなかった時に大泣きされて困ったなぁ。母さんもごめん!出れない!ってこっちも必死だったからどうにも出来ないし。抱っこしてとにかく必死にあやしたっけ。



大丈夫。兄ちゃんがいるよ。

そばに、ずっといるよ。だから、泣かないで。



その時頭に歌が流れた。

自然と声がそれを辿る。





「ーーーーー」





それは拙いながらも優しい歌だった。



「これはっ!?」



俺が少し浮かぶと光の円が一気に広がる。



「わ、わっ!?」



俺は浮かんだことに驚いて歌うのをやめてしまった。するとすぐに光りは消え俺の足は地面に着地する。



「………これほどとは…」



皆が目を見開いていた。ちなみに訓練所全部に円は広がってた為残しておいた邪気も消えてしまっていた。



「もう一回ゴブリン連れてきたほうがいいか?」



うん、エイトだけはぶれなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ