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絶賛戦闘中。あ、俺も俺も!!

そこには真っ黒な球体が浮かんでいた。直径1メートルといったところだろうか。まるでそこだけ景色が切り取られているようにも見えるし、塗りつぶされているようにも見える。はっきりと言うなら怖い。


俺、昔からお化け屋敷とかダメだったんだよな。暗闇の中に何かがいるのもダメならグォォォ!っていきなり襲いかかってくるのもダメ。友達と行った時にもずっと友達のズボン掴んで歩いてたなぁ。友達は止めろ!パンツ!見えちゃう!俺のパンツ!ってずっと叫んでたけど知るか。こっちは必死なんだよ。あ、ちなみにサッカー部だったからかサッカーボール柄だったなぁ。……ここは森とはいえ時間的にまだ暗くもなければお化け的な魔物もいないけど。ついでに言うなら野郎のパンツを思い出したくなかった。あ、今日の俺のパンツさんですか?デュラが護り人だからか緑のウサギさんですけど何か?


さて、現実逃避もここまでだ。俺は核から5メートル程離れた所にいた。浄化中に魔物が現れても対処できて、かつ離れすぎてもいないくらいの位地。目を閉じて大きく深呼吸。


そして目を開けた。



「ーーーー♪」



俺を中心にではなく核を中心に陣を展開する。ギルのおっさんで発見したこの方法は魔力はともかく俺の場合体力が節約出来ることがこの前の見学の時に試させてもらって分かってる。精神力はよく分かりません。まぁデュラ達の邪魔にもならねぇしな。あ、もちろん全力の舞いの方はやらない。威力は強いけどあれはまだ俺に扱えるものじゃない。あの少しの時間で核が浄化出来るならいいけど出来なかったら終わりだ。休み休みでも確実に浄化出来なきゃダメだ。



(でもなんか気持ち悪い)



邪気が陣の中にあるとモヤモヤすんだけど核はモヤモヤどころかすっげぇ気持ち悪い。グニャグニャというかグチョグチョというか……何か突き破ろうとしてるみたいな。何を突き破るんだよと言われれば全く分かんねぇけど。


……まぁとにかく今は集中だよなと意味もなく目に力を込めた時だった。



「……来ます」


「へ?」



デュラが俺の前で錫杖を横に構えて結界を張る。アルフは剣を構えエイトは角を出し腕と足をドラゴン化していた。ついでに尻尾がズルンと出てきて地面を抉る。



「クー様は何があってもそのまま浄化に集中していて下さい」


「ふぉっ……ぁ、へい!!」



へいって何だよと思うがそれどころじゃない。核から黒い塊が出てきたかと思ったらボコボコと膨らんで先ほど倒したのと同じトロールが3体現れた。しかも3体とも俺を見てヨダレを垂らす。絶対気のせいじゃない!俺だけを見た!集中というか思いが弱くなったからか浄化の陣の光りが弱まる。



「ひっ!」


「クー様!」


「ふぁい!」



デュラが錫杖を地面にさし俺へと向きを変える。

思わず後ずさっていた俺の前まで来るとそっと両頬を包んだ。緑色の髪よりも深い翠の瞳に俺が映る。



「何があっても貴方を守ります。どうか貴方の護り人を信じて下さい」



デュラはニコリと笑って錫杖の方へと戻る。地面から引き抜かれた錫杖はシャンシャンと綺麗な音を奏でながらさらに結界の色を濃くした。



「僕等の神子様には指一本触れさせない!」



(……っっぅぉぁああああ!?!?!?)



心の中でしか叫ばなかった俺を褒めて欲しい。何あのイケメン。あれで俺より年下だぞ年下!!これでときめかない奴いんのかよ連れて来い!あぁもうくっそ!びびったのが情けねぇ!信じるって言っただろ俺!これで男を見せなきゃいつ見せんだよ!!



「ーーーー♪」



消えかけていた陣が再度光りだす。それと同時に俺とデュラ以外が動き出した。


アルフが脚に付けているポーチから青い液体の入ったビンを取り出してキャップを外すとそのまま飲む。確か魔力を回復する薬だ。そして空になったビンをトロールへと投げた。



(えぇぇぇ!?)



バリィィンと割れるのと同時にトロールの雄叫び。



「そういうことだから……」


(どういうことでしょぉぉぉぉ!?)


「僕等の神子の為に潔く邪気になりなよ」


(あ、そういうことぉぉぉ!!知らなきゃよかったぁぁ!)



何なの!?本当コイツ等何なの!?トロール煽ってでもイケメンで何なの!?トロールは怒りで少し赤くなってるけど俺は羞恥で赤くなるよ!?



「クー」


(ん?)



そして今度は戦闘準備万端のエイトが俺を呼ぶ。



「俺等の、神子」


(……ふひっ……っああぁぁぁぁもぉぉ!?!?!?)



この状況ではにかんで何言ってんのぉぉぉ!?


もういい!お前ら見てると俺が男を見せられなくなる。それじゃダメなんだよ!俺も男の子なんだよ!!フツメンだけど惚れさせてやらぁぁぁ!!


うん、まぁ今やることは浄化しかないけどな。



「ーーーー♪」



魔力をさらにそそぐようなイメージをする。といっても舞うほどじゃない。たっぷり花に水をあげるような感じ。……小学生の時花当番で学校の花壇の花に水をやりすぎて女子に怒られたな。今はやりすぎた方が良いと……何だろう。俺って本当女の子の前で良いところ見せられてねぇな。……でも、なら……せめて野郎同士では良いところを見せなきゃってことだろ!


エイトが容赦なくトロールを殴る。それを受けたトロールの体は拳以上にへこみ、またそれと一緒に悲鳴何だろうが俺には雄叫びに聞こえるそれをあげていた。トロールが反撃の為にその拳を繰り出せば衝撃波というものだろうか。風と土が俺を囲む結界へとぶつかる音がする。



(エイト!?当たった!?)



舞い上がる土埃が晴れるとぶつかって吹き飛ばされたのではと思ったエイトがその拳に張り付いていた。



(受け止めたのか!?)



トロールも驚いたのだろう、変な声を出していた。振り払おうとするも凄まじい握力で掴んでいるのかその腕をつたって行きドラゴンの尻尾でトロールの顎部分をパンチ。



(うわぁ……)



トロールの体の構造は知らないがそのまま後ろへと倒れてしまい身動きもない。気絶したのかと思ったらエイトが飛び腹部へと拳を連打しはじめた。速くて拳は見えないけどトロールのお腹やばい。すんごい揺れてるし押し込まれてるというよりは抉れているように見える。それによって拳が叩き込まれていることが分かるくらいだ。そうしてトロールはいつの間にか邪気になっていた。



(当たり前だけど容赦ねぇ)



一方アルフはひたすらトロールの攻撃をよけていた。そして俺にはよく分からない言葉を口ずさみながら剣へと魔力を流している。アルフの魔力って綺麗な赤なんだよな。赤い光が揺れながら剣全体を包んで徐々にその剣自体の色が濃い赤へと変わっていく。そうしてさっきみたいな色になった瞬間、トロールは真っ二つになってすぐ邪気になった。


そして問題の俺の前へと迫っているトロールさん。もうサービスしまくっちゃうぜと言わんばかりに拳を振り下ろしてくる。ドォン、ドォンと結界にぶつかる度に音が響くがヒビも入らないしむしろトロールの拳が弾き返されているように見える。



「巨体故に小さな傷を大したことがないと判断する。……それが敗因です」


(……え?……い、今……近くからすっごく低くて冷たい声がした気が……?)



後ろ姿だが確実に俺を守るようにして前に立つMy天使のデュラさんじゃないですよね……ね?



「消えなさい」


(ひっ……!?)



結界から風が放たれる。よく見るとトロールの体は血だらけだった。小さな傷がいくつもいくつもつけられそこから大量の血が流れている。トロールはしばらくして痙攣した後邪気へと変わった。



(デュラだけは絶対に怒らせないようにしよう)



俺が新たな決意をした瞬間だった。



(あ、クる)



唐突に感じたのは何かが弾ける感覚。



パァァァァン!!



黒い球体にヒビが入りそこから光が溢れたと思ったら弾けて光が回りに飛び散った。

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