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誰か俺に癒しのみを提供してくださいませんか。

んー……もう、朝かな?……いつもはレオンが起こしてくれるからな……。たまには……自分……で……。


浮上する意識。まだ早い時間なのかと思いながらものびをする。

そしてゆっくりと目を……。



「起きましたか、クー様。おはようございます。どこか痛いところなどはないですか?」



目を開けたらイケメンがキラキラした笑顔で俺に挨拶してくれました。



「ふふっ……護り人の日は護衛ですぐ傍にいますが、こうやって横になったまま挨拶するのは新鮮ですね」



うん、そう。デュラの言う通り同じベッドで、隣で一緒に横になってて、つまりは至近距離で俺はあのキラキラしたオーラを浴びたわけです。……うん。



「ぎゃぁあぁぁあぁぁぁ!?」


「クー様!?どこか痛いのですか!?」


「いやぁぁぁ!やめてぇぇぇ!服めくらないでぇぇぇ!怪我してないしてないからぁぁぁ!」



がっと起きたかと思ったらのしかかられ掴まれめくられる洋服。男らしい!って違うわ!そして穴が開くほど俺の体を見るなぁぁ!

ぽっこりしてるわけじゃないけど!ないと思いたいけど君達に比べたらぷにぷになの!繊細なお年頃なの!やめて!俺の中の何かが減る!削られる!抉られる!


申し訳ないが加減なんて出来ない。感情のままにボカボカとデュラを叩くがびくともしない。

確かめるようにお腹を撫でる小さな、しかし所々固い手は真剣で。ひゃっと悲鳴を上げてしまう。



「クー様!?」


「頼むから何も言うなぁぁ!!」



本気で泣きが入ってきたところで影が近づく。



「……まざりたい」


「お前本当空気読め!!」



ーーーーー

「……ぐすっ」


「あ、あああの、本当に申し訳ありません!」


「……いーよ。デュラは」


「!?」


「当たり前だろうが!自分だけ何でみたいな顔すんな!!デュラは俺のこと心配したからだけどお前は違うだろうが!」


「クー様、紅茶はいかがですか?」


「あ、はい。いただきます」



現在俺はレオン君(8才)の後ろに隠れながら二人と話しております。レオン君のが小さいから隠れられてないけどな!気分は大切!


レオンは器用に後ろにいる俺に紅茶を出してくれました。ついでに温かいタオルを手渡してくれて優しさに鼻水まで出てきた。

そもそもどうしてデュラが俺と一緒に寝ていたのか。

その理由は昨日にある。

俺は何とか祝福をかけ終えたのだがもうその時点で限界だった。肉体的にもだが何よりも精神的につらかったのだ。最後の方なんて根性だけでやってたようなもんよ!

んで終わったと同時にアルフに抱き抱えられ風呂に入ってそのままベッド。夕飯?レオンにベッド上でスープを何とか飲ましてもらったよ……。んでそこからはアルフは状況を聞いてくるとそのまま部屋を離れた。

エイトはそのまま俺の護衛。そしてデュラも部屋に戻って休むってなったんだけどそれを俺は受け入れられなかった。


怖くて一人で寝られなかったのだ。

デュラの腕を掴み一緒に寝て欲しいと頼んだ。デュラは最初戸惑っていたがエイトは護衛でアルフはいない。選択肢は一つしかなく、デュラは頷くとベッドに入ってくれ、震える俺を抱き締めて寝てくれた。


……そうなんですよね。

あの時は震えるばかりで気付かなかったけど抱き締めて寝てくれたんだよねぇぇぇ!!

安心して寝ちゃったしね、俺!!そりゃあ至近距離にいるよね!その上心配してくれたのにごめん、デュラ!



「本当にどこも痛むところはないんですね?」


「……ない、です。ごめん、デュラ。ありがとう」



顔を覗き込もうとしてくるのをレオンを盾に避け、でもきちんと伝える。

恥ずかしいのは変わらないんだよ!

紅茶を飲んで少し落ち着いた後ちらちら見てくるエイトに仕方なく頷くとアルフとご飯の待つ部屋へと向かった。

時々思う。エイト君や、君犬じゃないよね、ドラゴンだよね?

あ、尻尾で床抉られたドラゴンだわ。



ーーーーー

「第12部隊は再編成することになったよ」


「え!?大丈夫なのかよ!?」


「毎年のことだからね」


「はい?」



朝ごはんを食べながら聞くと毎年第12部隊は組み直すのだそうだ。

……というのも第12部隊は平民から騎士に志願した人達がまとまっているらしい。だから第12部隊だけ人数が多い。

やはり知り合いだと絆もあるし連携も取りやすくなる為生存率を上げる為にもまとめるのだそうだ。貴族と平民の差別というか偏見はやはりあるし、組み直すのも一部隊のが効率が良いからとのこと。……最初から決まってたってことだ。


貴族の子供は、それこそ今回の戦闘が初めてじゃない。親が、兄弟が戦っている所を見せている。そして大半が騎士になる前から実践を積んでいる。

しかし平民は違う。守りたい思いや憧れ、もしくは給金からも志願する者は多い。そして実践で初めて思い知らされる。思いだけではどうにもらないこと。憧れるだけではなれないこと。命をかけるからこそのその待遇であることを。



「彼等には守られる義務がある。だからこそ、自分で選ばなければならない」



その当然の権利を捨てる覚悟を。



アルフの言葉に俺は頷くことも出来なかった。



ーーーーー

「今日は初代異世界の神子の手紙を見に行こうか」


「お、そうだった!」



初実践もしたしなと笑って返すがよく分かってます。今日は休んで良いってことだって。

気を遣ってもらって申し訳ない。でも、3人が俺の護り人で本当によかった!もちろんレオンもな!


皆で初代様の手紙が保管された場所まで移動する。

手紙はガラスみたいなものの中に入って保管されていた。

王様が何か呪文を唱えるとそのガラスみたいなのは消えて手紙を渡される。

えぇ、王様の部屋が保管場所でしたよ!分かってたら気軽に行こうなんて言わなかったわ!



「……えーとじゃあ読ませてもらいます」



気を取り直して手紙を読もうとするとソファをすすめられる。ありがたく座らせてもらい手紙をひろげるが皆は立ったままで手紙には近付かない。



「一緒に読まないのか?」


「中身を知れる……知ってるのは代々異世界の神子だけだよ」


「えっ」


「それが決まりだ」


「えぇ!?」



そんなすごいこと書いてあんの!?と手紙が怖くなったが読まないことには進まない。

息を整えてから読み始めた。



ーーーーー

初めまして、異世界の神子様。私は篠崎 時子と言います。もしかして私と同じ世界の同じ国から来た人もいるのかしら?

名前でもしかしたら分かる人もいるだろうけど残念ね、あなたには私の名前を知ることは出来ても私は出来ない。故郷の話しをしてみたかったわ。

……話がそれたわね、ごめんなさい。

懐かしんでることから分かった人もいるかしら。最初の召喚の時には元の世界との心の繋がりを絶っていなかったの。だから私はそれを絶つことを召喚の条件に入れたのよ。

……あなたに前の世界を懐かしんで心を壊して欲しくなかったから。

どうしてそこかって?……私は初代だけど、最初の異世界の神子じゃないからよ。……最初の異世界の神子はね、私の娘だったの。記録に残されることはなかったけれど。

それを知った時にはどんな因果よって言いたくなったわ。


知っての通り、召喚はそのままでは死んでしまう者を条件に召喚しているの。私も私の娘もそれに当てはまってこちらに来たってこと。私はそれを知った時嬉しかったわ。娘はこっちで幸せに暮らしたんだって思ったから。でも違った。娘は確かに命は助かった。第二の人生を歩むはずだった。でも置いてきた私に心を壊され自殺してしまったの。私はそれを知って泣いたわ。

同時にこちらの人にどうしてって怒りをぶつけたわ。


この世界の人達は勿論娘に尽くしてくれたの。異世界の神子は何よりも尊い存在だから彼等は何よりも娘を大事にしてくれた。

……私に読まれることはないと思いながらも綴られた遺書にそう書いてあったわ。私にも、この世界の人達にも申し訳ないって何度も謝ってた。


きちんとこちらの人達は娘に尽くしてくれた、ましてや第二の人生を歩む機会まで与えてくれた。感謝はしても恨んではいけないって分かってる。けどね、理解はしても納得は出来なかった。

……幸せに暮らしてたならよかったの。でも娘は一人になった私と、あと自分が背負った責任に耐えられなかった。

そして私も娘を探して、探して絶望の中で生きてきたことを許すことは出来なかった。

はっきりと死んだと分かれば違ったのかもしれない。でもいきなりいなくなって事故に巻き込まれたのかも分からない。ただただ娘を探す日々は言葉には出来ない。


……だから私は家族がいないことも条件に入れたの。残された家族が私と同じ思いをしない為に。そして同時にあなたの心と故郷の繋がりを絶った。……ごめんなさい。

その点はこの世界の人達じゃなく私を恨んでね。

けど、私も恨むだけじゃなくこちらの世界の人達も助けたいと思えたのも本当だから。……本当、心って複雑なのよ。


この他にもなるべく若い子にっていう条件もつけたわ。世界を浄化してまわるのに若さは必須よ。なるべく先がある子をと思ったのもあるわ。勿論赤ちゃんではいけないけれど。


私が足した条件は以上よ。少しずつこちらの世界になれるようにとか教育と言えるものではないけれど気付いたことは伝えたわ。あと心に寄り添って欲しいからそれが出来る子をそばに置いて欲しいとも。私の娘の時には寄りそうっていうよりも徹底して何からも守られていたみたいだったから……。


これからも異世界の神子達が補っていってくれることを祈るわ。次の異世界の神子とその神子と関わっていた人達を不幸にしないように。

色々言ったけれど、あなたとこの世界の人達が元気に生きていけますように。



「…………重い」


「え?」


「いや、何でもない。あともう一枚あるから……」



アルフが心配そうに見てくるが元気に返せない。だってこれ重い。想像と違うものが書かれてる。いやそうですよね!この大変さがあるから今の俺達があるんだけどもね!もっとこう戦闘の心得的なね!


泣きそうになりながらも次のページへと移る。



あとはこの世界の魔法について。この手紙を読んでるってことはこの世界で一度でも戦かったことがあるってことよね。その結果戦うことをやめることを決めたのなら私はそれも立派な決断だと思うわ。何度でも言うけれど、あなたを大切にしてね。


戦うことを決めた人は少なくとも浄化以外私達はあまり使わない方がいいと私は思うわ。

あなたのいた世界に魔法があったならいいと思う。私と同じでない世界からきたのなら回復魔法だけはおすすめしない。医者とかならいいわよ。身体のつくりを知っているだろうから。

だって想像って何?この世界の魔法はすごく曖昧なんじゃないかと私は思ったのだけれど。火や風、水なら自然災害の凄さは知ることが出来たから想像でも攻撃魔法とかは補えたわ。でも回復魔法は分からない。皮膚を元に戻すだけならいいわよ。すり傷があってそれを塞いでいくのを想像するわ。でも中は?私は身体の中まで正確どころじゃなく曖昧でさえ自信はないわ。

想像だけで発動するってとても怖いことだと私は思うの。だって見た目は治ったように見えても中は?……分かってもらえたなら嬉しいわ。

私が言えることではないのだけれど、どうかこの世界の人達にも救いを。


あ、かっこつけといて何だけど私はこの世界の人達が好きでもやっぱり娘を召喚した人達は許せないのも本当でこの手紙を異世界の神子が読むとこの手紙を保管してる人にこの時私がどんな思いでこの手紙を書いていたか分かるように心情がそのまま伝わってます。助かったけれど恨みたいしでも大切にしてくれたことも分かってるしでもしたことを忘れさられても困るの。複雑な親心を味わえ。


あ、大丈夫よ。そのうちそれも消えるから。じゃああとよろしく。



「最後に色々爆弾残していったぁぁぁぁぁ!!」



その後王様に慌てて駆け寄ったり桃山さんにもすぐこの手紙を読むように伝えたりと大変だった。

初代……ハンパないッス。

聞くと各国の王が同じ物を保管してるから全員がその複雑な親心を味わうと。誘拐したことには変わりないから受けるのは当たり前とされ同時に本当に異世界の神子が召喚されたことの実感をするとのこと。……苦笑いしか出来ねぇよ……。だってもう一人いるからもう一回くるんだぜ。読んでるだけでも俺きたのに本人のって……うぁぁ。


王様に大丈夫かって何度も聞いてその度に頭撫でられて苦笑されて大丈夫だって言われたけど。終いにはケーキ出してくれました。……あれ、俺が慰められてる!?


ちなみに桃山さんはあれから部屋にこもっているとのことだった。でもすぐに読まないとと言う俺に王様が届けに行きました。パシりにするつもりなんてなかったよ!?でもこの手紙は保管者と異世界の神子しか持てないことと……王様じゃないと説得力がないからです悲しい。

でも回復魔法やばいから……。桃山さんもごめんね。


あ、勿論今日も一人でなんて寝れなかったさ!内容重すぎんだよ!



「……何だろう。僕だけ疎外感」


「だから俺は別に護衛はいいって……」


「却下」



ならそんな目で見るなよ!


現在、ベッド。俺の右側にエイト。左側はデュラがいます。

アルフが今日は護衛なので二人が一緒に寝てくれることになった。

恥ずかしいけどね、僕一人だと怖い夢見そうなの。むしろ見る。絶対見る。それだけのものを持ってた初代。キモイって?俺が一番分かっとるわ!


二人は笑いながらも俺の手を握ってくれたことに感謝しながら目をつむる。

うぅぅ……まさかこの年になって添い寝してもらわないと寝れなくなる状況になるとは俺が一番思わなかった……。



ーーーーー

ピーチュルル ズズッ



この世界では当たり前の鳥の鳴き声を聞きながら見慣れた天井を見る。

最初は何すすってんの!?ってなったなぁ、懐かしい。

え、何現実逃避してんだって?

だって頼んだの俺だしね。

……うん。



「スゥスゥ」


「…くぴー」



イケメンが超至近距離に。

あれ?手を繋いでただけだったよね?俺いつ抱き枕になったの?

少しでも動こうものなら当たるよ?何がなんて聞かないで。

あ、誰か近づいてきた!助かっ……



「………楽しそうだねぇ、みんな」


「ちょ、まっ!?……っっ」



アルフの髪の毛が逆立つ。同時に赤い光が身体から溢れてた。あの、だからここは戦闘狂が多すぎやしませんかね。



「朝、だよ」


「……ふぁい」



白馬の王子から魔王にシフトチェンジしたアルフの目覚まし(姿以外本当に声だけ)により全員すぐに起きました。

ちなみに返事が可笑しい理由は飛び起きた左右の二人の動きによって俺は無様にベッドの上を転がってたからだよ!異世界のスプリングってすごいね!


つらくても、二度と、お前らとは、寝ない!

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