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初討伐式前日の夜

お風呂にも入ってサッパリした俺は牛乳モドキをきちんと腰に手を当てて飲んでいる。

ちなみにエイトが不思議そうに眺めた後マネしてた。

あ、俺達二人とも腰にタオル巻いたまんまですよ勿論。

やっぱこれだよな!と俺が叫んだのを聞いてかデュラが着ていた服を慌てて脱ごうとしたので全力で止めた。そこまでしなくちゃいけないものじゃねーのよ。


そんなこんなで寛いで明日に備えていた俺達に客が訪れる。



「よぉ、明日の説明をしに来た……んだが、随分魅力的な格好してんな」



ギルのおっさんだった。



「ぎゃぁぁぁ!!何で通すんだよレオン!!」


「やっぱこれだよな、と仰ったので」


「それこの格好で過ごすことを宣言したんじゃねーよ!?」



しかもエイトとかとっくに服着てて俺だけタオル一枚だった。だって暑がりなんだものぉぉぉ!でも人来んの分かってたら着ますからぁぁぁ!


アルフ達がいるじゃねぇかと言われればその通りなんだけどもう風呂とかも一緒に何回か入ってるし気にしなかった。確かに牛乳モドキ飲んだ後気持ちの良い気だるさあってそのままソファに寝転んでました。その俺の横でアルフが果物切って口に運んだりと尽くしてくれたもんだからそのまま甘えててレオンが何か言った時に適当に頷いて返し……あ、俺が悪いわ。


とにかく服、服っとレオンに手を伸ばす。



ーーガンッ!!



「………え?」



しかし俺の手は服を掴むことはなかった。いや、正確にはレオンはちゃんと俺に差しだしてくれてたんだけど俺はそれを受け取る余裕がなかった。


ギルのおっさんは先程いた場所より前に移動していて、その前にデュラが立っている。

よく見るとデュラの前に緑の壁……結界が張ってあってそれにギルのおっさんがぶつかったようだ。



「……ほぉ。学んだみたいだな」


「はい、お蔭様で」


「もう少し後に注意すりゃ良かったぜ。勿体ねぇことしたな」



あれ?何だろ?何か寒い気がする。

震えた俺にすかさずレオンが上から服を着せてくれた。あ、すいません、ありがとうございます。……タオルまで取ってくれたのねありがとう泣きたい。あ、パンツね、うん履くから俺の前で壁になってくれる?ん、ありがと。


ちなみにエイトは口を開けてアルフにあーんをしてもらってた。おい、状況を見ろ!



「……で、早く用事を済ませなよ」



俺がギルを指で示す前にアルフさんの冷たい声が響く。

よく見たら炎を俺の周りに浮かべてるしエイトは両手がドラゴン化してる。だからあーんしてもらってたのね……ズボンも掃くのに夢中で状況を見てなかったの俺だけでした。



ーーーーー

「明日は演説っていうかまぁあれだな。一言くれ」


「お前それで明日の説明済むと思ってんのか?」



もっと段取りがあるでしょうよ。開会の言葉から始まって何番目くらいに話してこんな感じになる予定ですみたいなさ。

いやぶっちゃけ俺開会式とか嫌いだけど。校長の話し長くて眠くて半分以上聞いてなかったくらいだし。



「そりゃ難しい話しされて全部覚えてられるかと言われりゃ無理だけどさ……異世界の神子としての立場があるから緊張の意味もあってなるべく状況を知りたいっていうか…」


「お、何だ聞いてくれんのか?姫様達にはそこはいらねぇって言われたからてっきりウサ様もいらねぇかなぁと」


「え……」



絶句する俺に気付かずそれならとギルは近くにあったテーブルに紙を広げた。

アルフに手を引かれて移動し覗き込むとギルが指を差しながら説明してくれる。



「……って感じな」


「俺が最後に話すのかよ……」


「まぁ姫様というかシザーが一番に拘ってたからな。俺達的にはどっちでも良いんで了承した」


「そこは俺に聞いてからにして欲しかった!」



終わり良ければすべて良しっていうじゃん!俺適当でも桃山さんが上手ければ誤魔化せたのに!



「……感じたままに話しゃいいんだよ」



感じ取ってくれたのかデュラを見てから俺の頭を撫でるおっさんを見上げる。

……くそ。格好いいな。



「……それはおっさんだからこそじゃねぇか」


「……そりゃ年寄りって言いてぇのか」


「実力が伴ってるから説得力があるってことだよ!どんだけ傷つきやすいんだギルは!」



俺がおっさんおっさん言ったからですか!すいませんでしたね!でもまだ意識しないとギルって呼べねぇんだよ俺は!

キッと音がしそうなほど睨めば……。



「……本当勘弁しろ」



ギルのおっさんは手で目を覆って天井を仰いでました。

あれぇ?



「直感が良すぎるのも問題だな。……いやむしろ早く決断出来るか。ウサ様俺と結婚してくれ」


「しねぇよ。それよりウサ様やめろ。おっさんに戻すぞ」


「即断るうえにそっちかよ。……それこそ俺の立場考えてくれるか?……こういう人間なんでな。アイツ等の前でポロッと言っちまったら困んだよ」


「……く、卑怯な」


「……そのまま返すぞ」



唸る俺にギルのおっさんはため息で返す。

おい!俺のどこが卑怯なのか言ってみなさい!と言おうとした俺の頭が猛烈な勢いで振られた。



「ばばばばばばっべ、べい、べべべべべいとくくくん!」



エイトが俺の頭をシェイクしている。何、何なの。

っていうか止めてくれるデュラさん!



「……あー……何だ……ドラゴンの…」


「……エルトシャンでいい」


「エルトシャン、ウサ様の頭を撫でるのはもっと優しくな」



ウサ様吐くぞ。と続いた言葉に俺は全力で同意した。

ぼぼぼぼう!ときちんとした言葉にはなってなかったけどな!

つーか撫でようとしたの!?だからデュラたん助けてくれなかったの!?

うん、もう一回俺を守るとは何かって所から話し合おうか。


ーーーーー

「………クー」


「……大丈夫だって……もう謝んなよ……」



エイトに何度も謝られている俺は今レオン君に膝枕されてます。この子本当器用。俺を膝にのせながら頭に冷たいタオルのせたりスッキリドリンク差し出したり。

お蔭様で吐き気治まりましたありがとうございます。


さて、と起き上がろうとしたらアルフが俺を抱き上げた。



「いや可笑しいだろ」


「どこが?」



真顔で返してきました王子様。眩しいよ王子様。


顔覆ってる間に柔らかーい椅子に座らされました。あ、デュラ君ですか?俺が横になってる時から今も涼しい風送ってくれてますよ。エイト君は俺の周りグルグルしてます。俺が目が回るから取りあえず隣り座りなさい。

そして一言いいか。



「……イケメンつらいわぁ」


「それずっと見せられてた俺に言うか?」



……すまんかった。



「……で、続きいいか?」


「ぜひお願い致します」



続いて伝えられたのは式が終わった後の本番のことだった。俺達は過剰戦力なので新人騎士さん達からかなり離れて魔物を倒して欲しいとのことだった。

新人騎士さん達は城下町の門の周辺なので俺達はさらに城から離れることになる。不思議なことに各国の城がある付近の魔物は弱いらしい。逆に離れれば離れるほど強いのでだから村や町に騎士達が討伐に行っている。



「いーよ」


「いいのか!?」


「何その反応。作戦なんだから従うっつーの」



頭悪くてもそのくらい覚えてられるわ!

いや、まぁ地図で見せられても実際外出たらどこか分からないけども……。護り人さん達や、指示に従うから場所とか教えてね。



「……いや、姫さん達には拒否されたっつーか…」


「それはシザーが?……どの点で?」



と思ったらどうやら俺達の前に説明しにいった桃山さん達が拒否したみたいだ。何でだろう?何か抜けてるところでもあったのか?



「いや、姫様がな、怖いんだと」


「……は?」


「だから門の前でって言われたんだがあの姫さんの浄化の範囲は広いからな。ウサ様は調節出来るからまだいいんだが……異世界の神子様の浄化だからな。新人が戦ってる最中に範囲に入らねぇ方がいいのは確かだし、祝福と間違えるとは思わねぇが間違えた場合には命取りになるからって伝えたんだが…」


「が?」



アルフさん怖い。


察したのか何なのかアルフとおっさんだけ俺達から離れて話し始める。

それを見送ってデュラがエイトとは反対側に座って俺を挟むようにすると二人して明日のことについて話し始めた。僕難しくて分かんないんだけど。第三の型って何。第一から分かんねぇよ!



「何とか説得して第12部隊に護衛させるなら離れてもいいってなった」


「……そう。この付近で。シザー達だけでも充分で。なのに第12部隊丸々……しかも護衛にと……そう言ったんだね。……姫を守ることが第一なのは分かるけど人がいれば守れるって訳じゃないんだけど」


「ジュニの奴も怖ぇんだからお前までそんな顔すんなよ」


「頭が痛いよ。クー達がいるから今回は少人数で一掃出来ると思ってたのに……そうすればもっと町や村に……せめて護衛じゃなくて付近を討伐してるのじゃダメなの?」


「……ジュニの奴を見える所に置いとけばいけるかもな」


「うん。ジュニには生贄になってもらおう」


「……まぁその辺は臨機応変ってことで、な」



二人の話しが難しくて離れた二人の声を聞こうとするが所々しか聞こえない。うん、まぁそれでも色々大変なのはよく分かりました。



「俺大丈夫か」


「ウサ様はそのままでいりゃ問題ねぇよ」



丁度戻ってきたようでおっさんが後ろから俺の頭を撫でる。エイトが何か切なそうにみえたので後で撫でて良いことを伝えると嬉しそうに頷いた。リベンジは優しくお願いします。



「あぁ、終わった後祝福頼む。……辛いだろうが」


「は?え、そりゃもちろんするよ」


「ありがとな」



困ったように笑うおっさんにこっちが困る。確かに疲れてるだろうけど、新人騎士さん達もなんだ!祝福まで頑張るさ!



「……と明日のことについてはいいとして。クライブのことなんだけど……」



実は明日の説明をしてくれるなんて思ってなかったからあとで時間空いてたらおっさんを呼んでもらおうと思ってたんだよな。

直接クライブ呼ぶのも違ったら悪いし。



「クライブ?」



あれ?やっぱり俺の見間違いか?



「や、えーと……元気ないように見えたからさ」


「……は?」


「う……ごめん。俺付き合い短いから気のせいかもとは思ったんだけど。おっさ……ギルなら何か知ってるかなって……気のせいだったならいいんだ」


「……あー……緊張してんだよ、アイツも」


「あ、そっか。それならいいんだ」



そっか、そうだよな。クライブでも緊張すんだ。何か安心した。

ふぅ、とため息をつく俺に隣りからのびてきた手が俺の手を包む。



「クーは俺達が守るから安心して浄化して欲しい」


「おう!頼むな」



うん、それに3人の強さ知ってるし!俺が実戦を知る為だってアルフも言ってたし!気楽……とは言えねぇけど精一杯頑張ろう!


そうは言っても眠れない……と続けたかったところだが俺はまったくそんなこともなくがっつり眠れました。

あ、はい。昔からテスト勉強で徹夜!って決めてもあ、無理だわ、寝よ。ってタイプでした。

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