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初討伐式前日

おはようございます。

さて、顔を洗って着替えますか。

レオンは残念そうだったが丁重にお断りした。ふふん、もうされるがままの俺じゃないぜ!…あ、うん。今までもそう思ってたのにされてるのには触れない方向でお願いします。

まぁ護衛の関係もあって二人の前でなのは変わらないけどな。


レオンから洋服を受け取る。ふと後ろにある鏡を見て、あってはならないものに思わず叫んだ。



「くまさんパンツぅぅ!?」



お前何言ってんだって思うだろ?俺は思った。だって俺が履いてるパンツにくまさんが刺繍されてんだぜ。もう一度言う。俺のお尻にくまさんがいるんだぜ。

な、目を疑うだろ?

つか何なの?まだこのネタ引っ張るの?


パンツに対して叫んだ俺に何を勘違いしたのか。レオンはすいませんと違うパンツを差し出してきた。思わず受け取ってしまう。んで拡げる。



「何でミカンなんだよ!!普通イチゴパンツって違うだろぉぉぉ!!」



略してミカパンを思わず投げ返してしまった。あ、やばいと思ったけどもう遅い。



ーーガギィン!?

ーーガンッ!?



「………は?」



お知らせします。

ミカパンは現在壁にめり込んでます。



「え、待って。待って。ちょっと落ち着こう」


「申し訳ありません、クー様。クー様のお叱りを受けなければならないのについ反射で…。もう一度お願いします」



ねぇ、待ってレオン君。俺まだこの状況整理出来てないの。ねぇ、何アルフと話してんの。アルフはきちんと俺のお叱りを受けられているのに自分はまだまだ?ううん、違う。俺は謝罪を聞きたいんじゃないよ。いや、もちろんレオン君にも突っ込みたいことはあるよ?


まずさ、暗殺者って小さいナイフじゃないの?確か初めて会った時は小さくはなかったけどナイフだったよね。けどレオン君が今つけてるのそれかぎ爪ですよね?君見た目に反してゴッツい武器ね。僕ビックリ。え?これが普段使ってる方?聞きたくなかった!

あ、ちなみにガギィンってのね、そのかぎ爪でミカパンを弾いた音なの。

うん、可笑しいよね。

かぎ爪だったらミカパンは普通裂かれちゃうよね。

なのに弾かれました。

ものすごい勢いで。

えぇ、えぇ、ガンッってのはその弾かれたミカパンが壁にめり込んだ音なんです。


あぁ…壁にめり込んだミカパンがレオン君に救出されました。その際に壁の破片がパラパラと床に落ちてる夢じゃなかった。

そして俺の手に戻るミカパン。



「ねぇ、パンツの定義って何?」



真剣な顔でミカパンを投げつけられるのを待つレオン君にさっそく俺は身を任せました。



ーーーーー

「そうか。これもクーの世界にはないんだね。これはね、護符っていうんだよ。レオンの魔力を糸にして縫ってるんだ。そうすると服の耐久力が上がるんだよ。鎧じゃ重さでその分遅くなるからね」


「まさかのネタじゃなくちゃんとした理由からだった!?」



ご機嫌なレオン君に着替えさせてもらった俺。寝てる間に汗をかいているからと拭いてもらった後だったので実はくまパン一丁であのやり取りしてた羞恥プレイか。


魔力の糸で刺繍するとその服の強度はミスリルというこの世界ではかなりの強度を持つ鉱石を使った鎧と同じ強度にすることが可能らしい。なので重さのことからも現在では鎧ではなくこちらを使っているとのこと。あ、はい。ひ弱な僕は頭が上がりませんありがとうございます。


何でもレオンのように魔力を糸にして刺繍出来る人は少ないらしい。魔力の質によるそうだ。んでもって当然その技術により強度は違う。レオンはかなり優秀だそうで…かなりの金を払っても手に入れたい人がたくさんいるらしい。ちなみに普通洋服のみで下着には刺繍しないとのこと。……俺の全身コーディネートはいくらなんですかいいです聞こえないです。



「くまパンとミカパンのくせに…」


「え?何?」


「いえ、何でもないです。……でもどうせならこういう時にドラゴンとかさぁ」


「こちらですか?」


「あるんじゃん!男の子はですね、ミカパンより…も…」



さっと差し出されたそれは立派なドラゴンが刺繍されていた。しかしその場所が……俺の可愛い息子…やかましぃ!


おっほん!

俺のドラゴンの上にドラゴンってややこしいんだよ!何でよりにも寄ってこれは前に刺繍しちゃってんの!

えぇそうですね!履いたらそのドラゴンの刺繍の偉大さに俺のドラゴンが……涙出てきた。



「……クー様気に入りませんか?」


「…うん、俺くまパンとミカパン好きだよ」



俺の中の何かがこれはスルーしなくちゃいけないよとすげぇ叫んでた。


……そういえば昨日風呂の後パンツには何もないのを確認してたはずなんだけど……うん。俺は何も見てない。



ーーーーー

「ご馳走さまでした!」



……あれぇ?まだ朝飯なんだぁ。可笑しいな、僕もう一日の終わりくらいの疲労なんですけど。何があったのかな、あぁきっと夢見が悪かったんだ。



「クー様?何かあったんですか?疲れているようですが…」



デュラが隣から心配そうに顔を覗き込んでくる。あぁ……癒しだ。俺は何でもないと返すが悲しそうなままなので優しい風を頼むと嬉しそうに魔法を唱えてくれた。

……うん、今日も頑張ろう。

拳に力を込めて突き上げると何故か慌てたようにデュラも同じポーズをとった。

やべぇ、本当にこの子癒やされる。今日の護り人は君に決めた!あ、うんもとから決まってたけど。



「困ったことがあったら俺に言うんだよ」


「え?え?いえ、それならクー様が僕に…」


「ほら、たくさんお食べ。あーん」


「え?あ、そ、う……あーん…」



しばらく癒しタイムは続いた。



「今日は午前中に第9部隊と第10部隊の祝福と見学。午後は第11部隊と第12部隊の祝福と見学になるよ」



一息ついて今日の予定の確認だ。明日は初討伐式なのでその前に新人君以外の騎士さん達に会いに行く。



「ちなみにヒメカはその逆の予定だよ」



そうそう、桃山さんも祝福と見学するんだ!当然明日の初討伐式に彼女も出る。今日会えるかなって思ったんだけど、午前と午後がそれぞれ逆の予定なので無理だろう。うん、いくら顔合わせだっていったって祝福一緒にしても意味がないからってアルフが言ってたし。それぞれ午前、午後の訓練の癒しになればいいな。……これからまったく会えないわけじゃないんだしと言い聞かせ移動する為に立ち上がった。



ーーーーー

一番最初に来たのは第9部隊だ。ちなみに隊長さんはそれぞれ新人さんの訓練の方に行っている為いない。

見知った顔がいないのは不安だがぶっちゃけ入口で待っていた人を見たらそんなの吹っ飛んだ。



「ウサ様、今日は我が部隊へ来て頂きありがとうございます」



もう俺のあだ名とかどうでもよかった。噛んではいないがすごく緊張しているのが分かるのだ。だって瞬きしてないぜお兄さん。

ついでに素人の俺でも分かるような気みたいの出してるよ。だって背中からズモモモモって効果音見える。ついでに中からも見えるやだ怖い。



「ウサ様は皆さんのいつもの姿を見ることを望んでいます。……緊張するなと言う方が難しいとは思いますがそれも訓練と考えてください」



中に入って並んでた皆さんに声をかけたデュラは格好よかった。デュラのウサ様にはピクリと眉が動いたが俺なんてその後に、そ、そうでございますよ。って言うことしか出来なかったからな!

うん!俺のことはいいから訓練始めてください!



「はぁ!」


「やぁ!」


「離れろ!…炎よ!!」



訓練が始まった。

それぞれ二人組になってやるのかと思ったら違った。何人かのグループで組んで魔物の幻影と戦う。デュラが最初は武器の持ち方や使い方もあるので試合することもあるが基本は出された魔物の幻影とチームで戦って訓練すると教えてくれた。……というのも確かに強い魔物程知能は高いがほとんど人型ではない為、人で対戦しても訓練にならないとのこと。といっても0ではない為まったくしない訳ではない。実際ある程度の実力者と戦うなら魔物の幻影よりその人と戦った方が経験にはなるそうだ。それこそ強い魔物と戦ってる人達なのでそもそも対人用の戦い方では勝てないからだそうだ。



「でも何よりも大事なことは一人で戦わないことです。連携して倒せば死ぬ確率がずっと下がる。それぞれが自分の役割をきちんと理解し人数以上の力を引き出すことが大切なんですよ」



はい、デュラ先生。真剣な顔で頷いたがデュラは…え?としばらく固まってた。

ちなみに俺はその横で騎士さん達が倒すまで手に汗握って観戦してました。倒した時にはよっしゃあ!と叫んじゃったよ。

その後拍手までしてたのでエイトに祝福だと言われて始めてここに来た理由を思い出した。慌ててそのグループに祝福をかけました。



「格好良かったです!」



ちなみにそのまんまの気持ちでかけた。

その後やたらと気合の入った声が周りからも聞こえてきて俺も一緒になって叫んでました恥ずかしいぃぃぃ!

俺は戦ってないのにぃぃぃ!


それからしばらく見て、少しの休憩の時に俺は浄化の練習をさせてもらった。あんなに頑張っているのを見せてもらったので俺の力も見てもらいたかったからだ。一緒に頑張りますって言ったら皆俺から顔そらしてた。

……そうですよね、フツメンよりも可愛い女の子に言ってもらいたいですよね…。午後に可愛い女の子くるから我慢……あれ?俺の午後のスケジュール詰んでね?



ーーーーー

不安が消えないまま第10部隊へ移動したんだけど、そこで問題が起きた。さっきと同じように見学して祝福をかけてたんだけど突然入口が騒がしくなった。デュラが俺をその背に庇う。アルフも戻ってきていたのでエイトと一緒にその前で構えてた。



「あ~!やっと見つけたアルフ様!エルトシャン様!デュラ君!」


「……ヒメカ?」


「兄上、姫、ですよ」



現れたのはピンクの髪をなびかせた桃山さんとシザー、リン、クライブだった。クライブ何か元気ない?


どうやら桃山さんのあだ名は姫のようだ似合うねって…俺は?あなたのクー君はここですよ、桃山さん!嘘です!でも夢見させてくれたっていいじゃない!



「…えぇと…桃山さんは何でここに…」



会えたことに嬉しいと感じる前に既に俺が眼中にないことを知って落ちこむ。…取りあえず俺もここにいますよっとアピールする為に無難なことを聞いてみる。

いや、実際桃山さんの予定ではこちらは午後だし。間違えた……という訳でもないっぽい?…アルフ達を探していたようだし。



「え?あ、井上君も久しぶりだね。もちろんきちんと祝福はかけてきたよ。早く終わったからこっちに来たんだ。皆に会えると思って」



なるほど。その会いたいに俺はいないと泣いていいかな。


すっとレオン君が現れ俺にハンカチを差しだしてくれた。今日は緑のウサギさんだぁ。


落ち着いたところでアルフを見るがアルフは前を見たままだ。

ねぇ、祝福かけるだけで終わりなの?もしかして俺はさっき邪魔してただけ?

時間を決められていたのでてっきりその時間はその部隊を見学してて良いのかと思ってたんだけど違っていたのなら迷惑だ。

でもギルも部隊長達もしっかりと見てやって欲しいって言ってくれたんだけどなぁ…。


しょんぼりとしたのに気付いたらしい。エイトが隣に来て黒い物体を手渡してくれた。



「………え……と?」



闇魔法だろう。俺の手の上で何かうねってますけどこれはあれだよね、慰めてくれてんだよね。

鳴きもしないでひたすら黒い何かが動いてるだけなんですけど。いや鳴いたら鳴いたでたぶん俺が泣くけど。



「姫は優秀だもん。祝福をかけるのもあっという間だよ」



そんな俺の心を置いてけぼりにして進む会話。ごめんアルフとデュラ。後ろで俺は黒い物体を見てるしか出来ない。



「リンったら褒めすぎだよ!私は出来ることをしただけで…」



おぉう!前を見たいのに手元が気になるぅ!前見ようとすると物凄い勢いでうねるんですけど。目ついてんの?



「そう……それで僕達に何の用かな?」



前はシリアスっぽいのに俺だけコメディになってるんですけど!ねぇ、誰か俺がこのクロスケ君に困ってんのに気づいて!



「…え?だから皆に会いたくて…」


「…僕達に会う為だけにさっさと祝福をしてきたってことだよね。騎士達の訓練する姿を見ることもなく、激励することもなく」


「兄上!!姫に失礼です!」


「私はそんなつもりじゃ…」


「なら余計に早く戻った方が良いよ。騎士に誤解されたままじゃ姫が可哀想だ」



やばい撫でたらなんか指に頭?を擦りつけてくる。……可愛いかも。



「ならアルフ様達と一緒に…」


「……クーはまだ第10部隊の見学の時間だから」



ねぇ、見て見て!クロスケ君俺がつつくと横にウネウネする!やだ癒やされる!

……あれ?そもそも何の話し…を…



ひぃぃぃ!



桃山さんがすごい顔で俺のことを睨んでらっしゃる!

そ、そうですよね何か真剣な話しをしてる時にクロスケで遊んでる場合じゃないですよね!

ほら、エイト君!クロスケを戻し……って増えてるぅ!?



「クー」


「ひゃいっ」


「?…クーは第10部隊の見学と祝福まだするよね?」


「え?そりゃするよ。まだ皆と会って話してないし」


「…そういうことだから」



アルフが満足そうな笑みで頷き桃山さん達に返す。シザーとリンが何か言ってるのは分かるけど残念ながらアルフに返事をすると同時に増えたクロスケ達がエイトから俺に飛び移り耳元で遊んでる所為でまったく聞こえなかった。何これ耳栓になんの。ちょっと待って大切な話しならどうしてくれんだ!



「クー様、続けましょう」



はっと気付いた時には桃山さん達はいなかった。ついでにクロスケ達も綺麗にいなくなってて俺が遊ばれて……遊んでたのはばれていないようだ。

エイトの頬を横に一回のばしてから見学と祝福に戻った。


グスッ。せっかく女の子に久しぶりに会えたのに俺はクロスケと戯れてたなんて…桃山さんには嫌われちゃったぽいしなぁ。今度会った時にはきちんとやってるって話せるよう頑張ろう、うん。


ーーーーー

さて、午後です。

第11部隊に来たのですが何これ。物凄く雰囲気暗い。いや、まぁ歓迎はしてくれたよ?ようこそって言ってもらえたし。でも何て言えばいいんだろう。言うこと言ったし好きにしてみたいな?

第9部隊と第10部隊はそれぞれ訓練してる時にデュラが解説してくれたのもあるけど皆真剣に取り組んでて…いや、第11部隊も取り組んでるんだけど俺達がいない者みたいな。



「…ギルが想像してた通りになったね」


「…え?」


「クー様が先程と同じようにしてくだされば大丈夫ということです。さぁ行きますよ」


「お、おぉ」



デュラに手を引かれ魔物の幻影と戦ってる人達の見学をする。さっき勉強してきただけあってどうしてその魔法を使うのかとか分かるからデュラ先生にそのことを伝えると嬉しそうに頷かれた。

魔物を倒した後にはそれぞれ使ってる武器とかここがかっこよかったとかの話しをしたんだけど皆呆然としてから慌てて礼をとられた。あの、すいません、俺そんな大層なこと言えてないですごめんなさい。

最後にはちゃんと祝福もしたよ!

そんなこんなで第11部隊の見学と祝福も終わり第12部隊へと移動した。



「何だ、姫様じゃないのか」


「姫様は可愛かったのにな」



入ってそうそうに言われちゃったけど。



「おい!ウサ様に失…っ」


「異世界の神子様を侮辱することがどんなことなのか身を持って知りなさい」


「デュラ君竜巻引っ込めてぇぇぇ!」



ついでに俺の護り人もやっちゃったけど。



「……しゅ、しゅいませんでした…」


「僕に謝られても意味がありません。…貴方達が助かったのはウサ様の慈悲ですから」



現在俺は後ろからデュラ君を抱きとめております。だってこの子物理的に葬り去ろうとしたからね!

いや、この世界の異世界の神子様の位置が頂点なのは身を持って知ってるけどあれくらいでさぁ!



「そんなことほざく人間がいざという時ウサ様の盾になるとは思えないからね。先に摘んでおいた方が安心だよ」



アルフも何言っちゃってんのぉぉ!!

俺は一人しかいねぇんだよ!エイト!アルフ抑えろ!って頷いたのにアルフの前に来て口の前でバッテンてお前いくつだよ!可愛いなちくしょぉ!



「貴方達の仕事は異世界の神子様を最優先として民の生活を守ることではないのですか?」



俺達最優先発言なければ俺も感動出来たのに!

デュラたんお願い!いつもの可愛いデュラたんに戻って!ついでに錫杖の先の風魔法も消してくれると嬉しいなぁ!



「も、もうしわけありません…」



…ゴツイ男達が青ざめてるんだぜ。もう、許したげようよ…。



「デュラ」


「はい」


「俺は見学と祝福に来たんだ」


「はい」


「だからきちんと俺にそれを見せてくれる人達には祝福したい」


「……はい」



まぁ、俺も俺を馬鹿にする人達に優しく出来る人間じゃねぇよ。しかも知らないうちから見下す奴等なんざ知らん。

ぶっちゃけデュラが庇ってくれたことが嬉しかったから嫌な思いしなくて済んだんだし。


俺に嫌味言った奴等と周りで一緒にクスクス笑ってた連中以外の人達の訓練を見学して祝福をした。

ちなみにそいつらは周りから冷たーい視線をくらってたし、俺の祝福を受けた人達を見て青ざめてたからざまぁみろって感じだ。

こんなんでも異世界の神子様ですからね!

中々の祝福なんですよ!


明日の本番も頑張るぜ!

ちなみに後で俺が後ろから抱き止めてたことに気付いたデュラがびっくりしてそいつらに竜巻放っちゃったんだけどきちんと相殺しました。……あいつらがもらしてからデュラが。

何気に許してなかったんだね。

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