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鬼ぃぃのパンツはいいパンツぅぅ!

「おらぁぁぁ!!」



黒い尻尾が風を切って地面を抉る。黒いドラゴンの腕が振り下ろされ地面がさらに抉られる。黒いドラゴンの脚が蹴り出され地面がやっぱり抉られる。あぁ、やめたげてよぉ!地面君が可哀相だよぉ。の時期はとっくに過ぎました。

それよりも掛け声もキャラ変わってない?エイト君。



「八つ裂きになれ!!」



いくつもの竜巻が向かっていく。あ、当然地面は抉れてむしろその土も石も巻き込まれてる。あれやばいよね。だってまず掛け声八つ裂きだもの。肉体断ち切る気満々だよね?せめて繋げたままにしたげてって思う俺も可笑しくない?

アルフ、目の前がぼやけてきたよ。

僕の可愛いデュラたんどこに行っちゃったのかな?


レオンに持たされた鬼の刺繍のされたハンカチで目元を拭う。あ?これ?今日はアルフが護り人だからって持たされたんだ。朝起きて渡されたもんで愚図ったんだけどもうそういうのさえどうでもよくなったわ。

涙をよく吸収してくれて素敵!と思ったあたり俺も染まってきてるのかなあらやだ鼻水までよく吸収してくれる。


ちなみに俺はいつもの浄化の練習です。昨日と同じく担当の護り人以外の訓練を見ながらだけど。

昨日と変わったのは相手は護り人同士ではなくおっさん。そう、もれなくあの容赦のない掛け声の相手はギルのおっさんだった。


俺が祝福してくれるお礼だそうで毎日は無理だが相手をしてくれるそうだ。

昨日と違くない?エグくない?そう言った俺に何でそんなことをとアルフは心底不思議そうに返した。



「魔物相手に容赦しないよ」



あ、実践形式なんですね。って関心すればいいのかな。それともおっさんは魔物だったんだ!?って、驚けばいいのかな。ショック受ければいいのかな。……昨日会ったばかりだから別にショックじゃねーわ。



「顔に出てんぞ!!泣くぞ?おっさんが泣くと面倒だぞ!?」


「あ、大丈夫です。存在ないものとして扱うんで」


「酷いウサ様「エイトそこだ!!お前の拳をぶち込め!デュラ!!四方から竜巻をやれ!逃げ場を無くすんだ!」


「おっさんは繊細だって言ってんだろ!?」



うるせぇ!俺の傷を抉るお前ぇが悪いんだよぉぉぉ!!

と叫んだ瞬間だった。



「うぉっ!!」



あんだけの攻撃でも軽口叩けるほどのおっさんが、焦った声を出してそこから飛び退く。


おっさんがいたとこには俺の浄化の陣が広がっていた。



「……え?どゆこと?」


「…それ僕たちが聞きたいことだからね、クー」



ってな訳で訓練を中止して皆で話し合いです。

あ、レオン飲み物ありがとな!美味いよコレ!え?あ…そう…これまでの俺の食事みて自分で調合しちゃったの…。俺の好み把握済みなのそうなの。確かによく見なくても俺だけ飲み物の色違うね。この前ぬいぐるみの件でお話ししたばっかりだけどもう一度お話ししようね。

おっと話がそれた。えーっと、俺が驚いたのと同時に消えたが確かにあれは浄化だった。俺を中心に広がるのが普通の浄化なんだけど…。あの時も俺を中心にしっかりと展開されていた。あれから調整ってのが少し分かって二人の闘争心を邪魔しないよう範囲は俺と側にいたアルフだけだ。

なのにさらに追加で離れた所に浄化が発動した。



「クー様があの時考えていたことは何でしょうか?」



デュラが問う。



「おっさんは天に還れ」



俺は即答した。



「素直なのはいいが本人を前に少しはためらうとかしろよな…」



えぇ!?魔物にためらいとか何言ってんですかぁ。

僕はいつでも一生懸命に取り組んでるだけですよぉ。


エイトがその通りだと頷く。あ、ごめん。俺そこまで天然じゃないから無理だわ。素直にごめんなさいしました。

でもあれです。



「思わずカッとなった。後悔はしてない」


「そこはしろよ」



おっさんがいじけても誰も何も拾わない。あ、もれなく俺の言葉を実践しちゃってんのね良きに計らえ。



「クー様、威力は?」



まさかこの言葉を使える日がくるなんて思わなかったが三人が深く頷いてからデュラが俺に問う。

あれ?もしかして俺が許さなかったらおっさん抜きでこのまま進むの?

その想像に震えた俺はレオンに差し出されたぬいぐるみを思わず抱き締めてた。

黒いウサギだった。

おっさんに叩きつけた。



「今ので許す。おっさんから見てどうだった?」


「……理不尽と思うの俺だけか?……まぁいい。お前らの訓練しながら見てたが…そこだけに範囲を絞ったからか普通の浄化よりは強いな。……祝福だったら危ねぇよ」


「魔物には使えませんね」



冷静に分析してくれてるけどつまりは魔物に襲われてる人にさっきの祝福バージョンをかけたら確実に隙を作って死んじゃうって話しです。

僕絶対に戦場で祝福使いません。



「……つーかよ。もう外に出た方が良くねぇか?」



遠くを見つめる俺にかかる言葉。見るとおっさんは真剣な顔だった。



「それはっ」


「力が強すぎだ。あとは実践で覚えてくしかねぇよ」



アルフは俺を庇うようにおっさんから隠すがずいと大剣の持ち手を眼前に突き出されて怯む。



「選ぶのはアルフじゃねぇ」



俺はゴクリと唾を飲み込んだ。エイトとデュラは黙って俺を見てる。

そうだよな、選ぶのは俺だ。


アルフのマントを引っ張る。アルフが苦しそうな顔で見てきたので頬を抓って笑ってやった。

びっくりしてる。

うん、そっちのがいいわ。

頷いてアルフの前に立つ。

前に出る瞬間、アルフも頷いたのでよし!準備万端だ!

俺は気合いを入れて手をのばそうとし、



「そうだよな、ウサ様」



続いた言葉に自然と差し出された黒いウサギを掴んで顔面に叩きつけてた。


うん。トラウマってのは簡単に乗り越えらんねぇよ。

あとレオン君、何匹縫ったのかな?真剣な顔してるのにおっさんはちゃんとぬいぐるみ抱えてたからこれまた別の物だよね。


ーーーーー

取りあえず新人騎士さん達と一緒に俺も外に出ることになった。明後日だ。どちらにしろその初討伐式の時に新人騎士さん達に祝福をかけて欲しいとのことだったのでそのまま一緒に外に行くってことだな!

それは良い。それは良いけど俺回復魔法使えません。

って言ったらそういえばそうでしたね…ってデュラが遠い目してた。

うん…まぁ明後日までに習得出来るとは思ってないけどな!


とまぁ先の予定は決まりましたが今日は午後から部隊長達に会いに行きます。ちなみに前にライトニングやっちまった時に会ってんだよな恥ずかしいぃぃぃ!顔まともに見れなかったよ俺は…。


あ、騎士団には12の隊がある。そのトップがおっさ……ギルだな。ちなみに数字の順に強いわけではないそうだ。今王都を守ってるのは9から12の部隊でそれ以外は各地へ魔物を倒す為に散っているとのこと。


………で、今俺は9から12の部隊長の前にいるわけですが…。



「あれ?あの兄ちゃん達って…」



そう、午前中訓練してる時に入り口にいる人達がそこにいた。

やらかした時もすごく心配してくれたなぁ。それから通る度に挨拶してんだけど。へへっ、何か知り合いがいるって嬉しいよな。


おっさ……ギルが説明してる後ろから二人に手を振る。するとギョッとした顔で返された。


あれぇ?



「キュウ、トオ。………お前らウサ様と知り合いみたいだな」



まさかのネーミングに驚けばいいのか黒いオーラを放つギルにビビればいいのか分からん。

そしてその二人を睨むジューイとジュニという方々。名前が部隊の数字と直結してて大変覚えやすいですが怖いです。あ、それぞれの隊長がその名を継ぐの。安心した。

え?毎回二人が勝って俺が訓練する場所の入り口にいた?普通は隊長がする仕事じゃなくて勝った部隊の隊員騎士が順番にこなすはず?



「ほぉ……毎日挨拶も交わしてたと…」



いやそのあのと笑う二人。

ギルとジューイさん、ジュニさんにしばかれてボロボロになりました。


やめたげてよぉ!って本当に叫んだけどアルフに抱えられ移動しながらあらゆる角度でそのしばかれ具合の解説をされた。

違う。そうじゃない。俺は訓練見たいって言ったけどリンチ見たいとは言ってないかんなぁぁぁ!


ちなみにそこで俺の回復魔法覚醒!とはならなかった。普通傷ついた人がいたら癒せるとかじゃないんか!

祝福しか出来ない俺にウサ様……悔いはありません。と笑って意識を失った彼等に俺は半泣きだったが、デュラも誰も彼等を癒すことはなかった。



「え?ちょっと厳しい方なだけだよ?」



おい、王子にもこんな訓練してんのか!てかちょっと!?

責任者を呼べ!



おっさんだった!



今日の一番の功労者は鬼のハンカチでした。

すごぉい、俺の水という水全部吸収したよこの子!


ハンカチの鬼にこの子言ってる辺りもう俺も疲れてるな。うん、寝よう。


ちなみに俺の洋服の背中には黒いウサギが刺繍されていたのだが俺がそれに気付いたのは一日の終わりである風呂の前。

そしてなんとパンツには鬼の刺繍がされていた。

思わず叫んだ後レオンのテクニックに翻弄されながら風呂に入りました。

そうですね!鬼のパンツ強いよね!って納得するかおらぁぁ!

黒いウサギのぬいぐるみはボロボロになりました。

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