ねぇ、俺の威厳はどこにあんの?
はいはいはい!そんなわけでギルのおっさんから許可が出まして騎士さん達に会うこととなりました。
まぁ明日からだけど!やっぱり上からだけど!
どうせなら訓練してる所を見てやって欲しいと言われ喜んで-!ってな!
「あいつらも異世界の神子様に祝福して貰えればやる気倍増だろ」
「……え?」
「……あ?」
おいおい今更何だよって顔で見られても困る。祝福って何。
僕ヤッタコトナイヨ。
……え、なんかあれ?あなたに幸あらんことを…みたいな決まり文句を読み上げるとか?
「……嫌だからって態度じゃねぇな」
「はぁ?」
こっちから頼んどいて嫌がるわけねぇだろ!
俺でやれんならやったるわ!何だ!カンペ出してくれんのか!!よしこい!!
やる気満々な俺に何か察したのかアルフを見やるおっさん。
アルフが出してくれんの?いいぜ、難しい言い回しもそれっぽく適当に読み上げてやろうじゃないか、わはは!
気分は大魔王。
あ、それじゃダメか。
騎士に言うんだから王様か?おぉう勇者死んで…あ、これ違う。
「おいおい、説明してねぇのかよ?」
「するほどの日数がたってると思うの?」
「……へぇ、それでもあの状況で選んだと」
「おい、無視すんな!俺にも説明!!」
人が一生懸命考えてんのにコノヤロォォォ!!となった俺にデュラが優しい風を送ってくれる。あ、落ち着く。じゃねぇよ!このタイミングで癒しいらない!
ぐしゃぐしゃと頭を撫でたらえ、え、って困った声が聞こえたのでよし!
「祝福ってのは浄化だ。魔物に対してだけじゃなく人の癒しになんだよ」
「え、回復魔法とは別なんだろ?……エイト君、エイト君、僕今大事なお話ししてるの。腕に頭をぐりぐりしないで」
僕の腕赤くなっちゃう。
冗談じゃねぇぞ、本気だぞドラゴン。赤くどころか皮剥けるわ。あれ、俺ドラゴン関係に良い思い出ない。
あ、デュラ君回復魔法は良いからこれ引き離しなさい。甘えてても周りをちゃんと警戒してますよ?いや甘えとかじゃねぇよ痛いって言ってんの。誰が護り人としてのフォローを聞きたいって言った。
「魔物を倒してれば嫌でも精神がすり減る。浄化が間に合わなければまた蘇るしな。途方もなく続くのかって考えちまうんだよ」
ようは浄化はそんな人の心も癒すということらしい。それを祝福。本当かよ!
現在神子が足らず浄化が出来ない場所もある。そこに配属になった騎士達と神子がいる騎士達ではまったく違うとのこと。
懸命に倒した魔物が又生まれればそりゃショックだよなぁと呟けばそれだけではないらしい。平民の人たちに浄化…人を対象にした場合は祝福か。それをかけた人とかけなかった人とでは精神的負担が違ったらしい。今までの研究結果でもそれは確実だそうで、じっちゃん達は傷ついて休んでる騎士や平民の人たちに祝福をかけたりしてるんだと。
じょ、浄化すげぇ!疑ってすまん!
ちなみに俺がさっきした浄化…祝福は正解だったということだ。
魔物に対して発動した浄化でもすこーし祝福の効果はあるが最初から人を対象にしてると全然効果が違うとのこと。
まぁ確かに成仏しろよー!なんて思いながら人にはかけないからな。癒やされてー!ってイメージすればそりゃ違うでしょーよ。
うん、てかよくこの状況スルーして真剣な話し出来るなおっさん。
「……で、分かったところで祝福かけてくれんのか?」
答えは勿論決まってる!
え?手をワキワキさせながら言っても説得力ないって?それは俺の所為ではなくエイト君の所為です。
ーーーーー
エイトの頭をグチャグチャにしさらにアルフの頭もグッチャグチャにして満足した俺はいつものように攻撃魔法の練習をした。
ライトニングは本当心臓に良くない。いや、頑張るけども。結界とかの方が精神的にはやりがいがある。ぶっちゃけ三人が強い印象しかないのでライトニングよりもこっち練習した方がいいんじゃないかなっていうね。…僕男の子なのにぃ。…光の剣は出せるけどどうしてそれを振るう力がないのか…。
まぁそれは置いといて一つ俺のお仕事が増えました!祝福です!じっちゃん達はそれこそ新人神子さんの教育だとか書類だとか城下町の診療所に行ったりと忙しい。俺は城下町に行くわけにはいかないので、ならせめて騎士さん達に祝福をかける役目を手伝わしてくれないかと話したら是非とじっちゃんに言ってもらえた。
ってな訳で祝福ををかけて廻ろうと思います。
といっても怪我して治療室のベッドにいる騎士達な。俺の身分的に(俺的には笑がつく)公式に会うまでは顔見られたらいけないとのことで休んでるところを狙うのさ!あれ?悪いことするみたいじゃね?
あ、どうして回復魔法があるのに治療室があるのかって?それは俺も思ったんだけど傷は治せても血は増やせない。……とそういうことらしい。勿論血だけの話しじゃなく精神的なものや色々あるが基本は食事と睡眠で治すんだと。魔法も万能じゃないんだなぁ。
…そういえば俺回復魔法使えねぇわ。
明日聞いてみるか。
今は祝福祭りじゃぁぁぁ!
……とはしゃいだ時期が俺にもありました。
「………クー?」
「いや、あの…本当すいません」
俺は俺を舐めていた。
あれ?これ何回目?反省しないの君?
なんて言わないでほしい。
俺はただ祝福をしたかった。
…あれ?何か文章にするとフラれた彼女の結婚式に未練タラタラで行って何かやらかした感じ?
…はい、彼女いたこともないです。
えーと……怪我人とか病人とかに祝福したらその効果が凄かったっていう。
勿論心の問題だし?目に見える効果ではないんだけど…かけられた人達が飛び起きた。
うん。本当飛び起きた。
さすが騎士様、鍛えてる-!なんて思うわけがない。びびった。んでバレた。念の為にお面付けといたけどバレた。俺起きるなんて想定してなくてすんごいお面付けてたのよ。
どうしてそうなったって?聞いてくれんの優しいなぁ。では現実逃避するついでに少し前に戻ろうか!
ーーーーー
「念の為に仮面をつけておいた方が…」
治療室=元気な人はいないが念の為にとそうレオンに言われた時点では仮面だった。しかも何かカッコイイの。でもさ、想像してみてくれ。
仮面の男が治療室に言って祝福って何それ。俺が病気を疑うわ。
それでも念の為って譲らないレオンにじゃあ皆でお面作ろうって話しになった。
うん、可笑しいよね。仮面からお面になったのも分かんねぇけど手作りってもっと意味分からんよね。
でも俺としては仮面をつけたくなかったんだよ。イケメンなら似合うよ。でもフツメンには似合わないんだよ。分かるかね!?え?俺フツメン…だよね?
まぁいい!取りあえずレオンを納得させるには何か付けてればいいと思って弟に作ってやったお面を思い出して発言した俺が馬鹿だったんだけども!
紙とペンとハサミとゴムみたいなのを用意してもらい皆でお絵かき大会となりました!
「クー様を思って描けば良いのですね」
「懐かしいなぁ」
「……難しい」
三人の出来た作品聞きたい?
「……頑張りはした」
「うん、うん!エイト君頑張った!俺は分かってる!けど却下な!」
エイト君は絵心がなかった。
あぁ、エイト君の絵を一言で表すなら?
黒い団子
です。
なんかね、黒がうねってる。それで目の所穴開けたら埃の妖精かな却下。
続いてアルフ!
「どうかな?結構いいと思うんだけど…」
「結構どころか出来過ぎで怖いわ!これ紙のお面だよね!?」
鬼だった。
あ、うん、ほら、能だっけ?あれに使われてそうな鬼のお面でした。紙だよね?これ紙とペンだけだよね?
「つかお前は俺を何だと思ってる!?」
デュラたん!頼みます!
「はい!僕描くの好きなんです!」
「わほーい」
………黒いうさぎさんでした。
あ、本人の為に言っておくと絵が下手なわけではない。可愛すぎるのだ。ドラゴンだっていうんだけど…あれ?やっぱ下手?
あ、俺とレオンも描いたんだけど俺はエイトのちょい上。レオンはアルフの上のクオリティのドラゴンで本当お面って何?っていうな!
結果デュラのお面をつけました。うん、可愛いすぎだけどすんごいまともにみえたの、この時はな!
最初のレオン君のおすすめを付けとけばよかったよ!兎とか女の子か!!
はい!現実逃避終わり!
アルフが怖いんだよ!鬼のお面外して!お気に入りか!!
あ、全員付けてますお面。
本人作。……エイト……。
デュラは俺と色違いの緑の兎。………緑!?
あ、はい聞いてます!
ーーーーー
「威力抑えるように最初に言ったよね?」
「……ぁぃ」
さて現在俺の部屋です。
あの後騎士達の不穏な言葉を聞いて速攻で連れてかれた。
「……クーの為でもあったんだよ?」
「……え?」
困ったように笑うアルフ。この前とは違いもうその雰囲気は柔らかい。
でも同時にすんごく不安になる。…お面外さないのね。
「騎士達にはね……」
その先を聞いて絶叫した。
そうと分かってればもっと慎重に騎士さん達の前に立ったよぉぉぉ!
あぁ、その原因の不穏な言葉?
「……黒兎の妖精だ」
「!!あぁ、異世界の神子様は黒兎の妖精様だ」
「あぁ、黒兎の妖精様!」
……異世界の神子ってね、あだ名がつくんだって。
いちいち異世界の神子様って言ってらんないから。
んでね、それって騎士達がいつの間にか呼んでるだって。
……そう、俺のあだ名は。
ウサ様
ねぇ、どうしてそこ拾っちゃったの!?




